夏はうに、秋は鮭、冬は毛ガニ……三陸沿岸の宮古の海は春夏秋冬、旬のもので溢れています。
そんな宮古市の春のものといわれたら、多くの人が答えるのが『ワカメ』です。
それもただのワカメではなく『早採りワカメ』といわれる代物。
ただの海藻と侮るなかれ、一度食べてしまったら春=ワカメ、というフレーズが自然と頭に残ってしまうでしょう。
今回は多くの人々が魅了されるそんなワカメをご紹介します。
極寒の荒波が鍛え上げたワカメ
三陸の中北部……宮古市田老の沖合では親潮(寒流)の荒波にもまれて育つワカメがあります。
ブランド名は『真崎わかめ』とも呼ばれていますが、3~4月頃になると宮古市の魚菜市場の様々なお店で『宮古のワカメ』として販売されています。
このワカメは世界でも希少な北方型ワカメに分類され、南の海で育ったワカメと違い、茎が長く、葉も肉厚で、切れ込みも大きいのが特徴です。
田老産のものは天然わかめだけを親として使い、採取は旨みが凝縮する3月から4月に限定……さらに、わかめに日光が当たらない夜に行っています。
三陸のワカメは、肉厚で、緑が濃く、独特の歯ごたえと風味があり、他で味わうことはできません。
大きな葉はサラダや刺身としてはもちろん、芽の部分であるめかぶ……茎の部分まで余すことなく食すことができる完全な食材といえます。
レポート
見た目
それではさっそく見ていきましょう。

こちらは私が宮古の魚菜市場で購入したワカメ。

ビッグサイズ(肉の食品トレーで例えるならファミリーサイズ)の食品トレーに入って販売されており、値段はなんと150円。
この物価高に破格の安さです。
ワカメは通常、乾燥や塩蔵といった様々な方法で保存されますが、ワカメ本来の味を知るのはやはり『生』に限ります。
一般には『新ワカメ』『生ワカメ』または『生食用』と書いているものがそれにあたります。
生ワカメは保存されたワカメとは一味も二味も違い、緑というよりもやや黒に近い色合いをしています。
匂い
保存されたワカメでは味わえないのが香りです。
無論、乾燥ワカメや塩蔵ワカメにも若干の匂いはありますが、生ワカメの場合だとダイレクトに潮の香りが鼻腔を突きます。
良い表現では海の香り、といいますが、人によっては磯臭いとも感じられます。
生臭いとは少し違うのですが、こちらは人それぞれの好みによりますね。
味
それでは実際に食べてみましょう。
新鮮な生ワカメの味わい方としては熱湯にくぐらせて、ポン酢やつゆで食す『ワカメしゃぶしゃぶ』が一番美味しく味わえます。
一般的に知られる豚肉のしゃぶしゃぶと違うのは沸騰した熱湯だけ準備すればすぐ食べられるところです。
ただし、すぐ食べられるからといってそのままお湯にくぐらせて食べるのはいけません。
魚同様、ちゃんとした下処理が必要です。
まず、茎ごと手に入れた場合はメカブ部分と茎部分に汚れがたまっているので、水をボウルにはって軽くもみ洗いします。
部位によっては砂泥のような汚れのこびりつきもあったりするので、目に見えるものは必ず落としておきましょう。
その後は真水の流水にて細かい汚れを落としていきます。
下処理の工程は台所でもできますが、狭い場合はお風呂場で行ったほうが楽です。
洗い流したら葉、茎、めかぶのパーツを切り分けましょう。
包丁でも良いですが、調理バサミを使うとより楽です。
こうして分けたら、葉の部分をしゃぶしゃぶとして使いましょう。
その他のパーツは刻んで食べるも良し、和えたりするのも良しです。
そうして、沸騰した熱湯にワカメをくぐらせると……

このように皆さんが良く知る鮮やかな緑色のワカメとなります。
味噌汁に入れたワカメとは違い、さっと湯にくぐらせたワカメは歯ごたえと海藻ならではの旨味があり、とても美味しいです。
この食感と風味が癖になってハマる人が続出するんです。
ここに生姜などの薬味を付け加えることで様々な味変を行うことができます。
用途&感想
ワカメは健康にも良く、ミネラル、ビタミンが豊富なため便秘の解消や肌のツヤといった美容に効果がてきめんです。
けれども、そんな生ワカメにも弱点があります。
それは賞味期限……ワカメを手に入れてから2日が限度といって良いでしょう。
それ以上経つとたちまち腐ったり、溶けたりして食べられなくなるので注意が必要です。(私もこれで最初の頃、ワカメを無駄にしてしまいました)
食べきれなかったワカメはお湯でくぐらせた後、水気をよく切り、天日干しをしてから冷凍庫に保存するようにしましょう。
乾燥や塩を使った塩蔵でももちろん可能……ただし、水気が残っていると悪くなってしまうのでよく切りましょう。
ちなみにワカメを生(黒の状態)で食べてみたいと思う方もいるでしょうが、これはやめた方が良いです。
私も過去に「湯通ししたら生じゃない!」と思って、そのまま水洗いして少し食べたことがありますが、あまりにも強い潮の香りと一味違ったヌルヌル食感でたまらず吐き出してしまいました。
その後に急激な腹痛と吐き気に襲われ、散々な目に……。
調べるとその原因は「腸内ビブリオ」という食中毒菌。
この菌は海水、または海産物に生息する菌で、塩分を好み、約塩分濃度3%のところで良く繁殖すると言われています。
つまり、海から揚げたてのものは魚も貝も海藻も全てこの菌が付着しているといっても過言じゃないのです。
しかも、その菌が付着したワカメなどをまな板に置き、そのまな板を生野菜などを切るのに使ったら、その野菜にも腸内ビブリオが繁殖してしまうという悪循環に陥ってしまいます。
そうなると、わずかな数から短時間で瞬く間に増殖し腹痛、下痢、吐き気、発熱や嘔吐、激しい頭痛などの症状に襲われます。
まさに先ほどの私の状態となるわけです。
予防としてはまず、手洗い……そして保管は冷蔵庫。調理は加熱の三段階です。
腸内ビブリオは海水に生息する菌なので、真水の流水で洗うことによってほとんど取ることができ、4℃以下の場所では繁殖力を弱める……つまり冷蔵庫の中に入れると繁殖スピードを抑えられるからです。
そうして、調理は食中毒菌に鉄則の加熱。
ここで「じゃあ、サッと湯通ししただけじゃダメなんじゃないの?」と心配される方もいると思いますが、熱湯に付けるだけで腸内ビブリオは死滅してしまいます。
その目安がワカメが黒から緑色に変わった時なのです。
逆にぬるま湯に生ワカメを付けてもなかなか色が変わりません。
食べ頃を教えてくれるとはワカメは良い食材ですね。
ですから、生ワカメを食べる際は洗う、冷蔵する、色が変わるまで加熱する……は厳守してください。
商品アフィリ
生ワカメは3~5月頃になると岩手の各スーパーで販売されますが、やはり値段が安く新鮮なものは宮古市の魚菜市場に限ります。
こちらはぜひとも現地に赴いて購入してほしいです。
そんな生ワカメは通信販売……主にAmazonでも購入することができます。
湯通しはされていたり、塩蔵や乾燥ワカメが主なので、やはり色変わりの生ワカメは現地でしか味わえないといえるでしょう。
おわりに
宮古の春を告げる『生ワカメ』……量も多く、値段も安く美味しいのは庶民の味方といえる代物です。
この他、宮古市では春夏秋冬……鮭まつりや毛ガニまつりといった旬の海産物を美味しく食べられるイベントが各季節で行われています。
皆さんも三陸の美味しい海の幸を食べにぜひ沿岸地域へ遊びにいらしてください!