前回のあらすじ……

天気が悪いため那覇近郊をぶらついた私シードル。
牧志公設市場では物と金額に驚愕し、かりゆし水族館ではそのアイディアとクォリティに感嘆し、電車の中ではくしゃみと咳を受ける……。
感動と驚き、目新しさを感じる日々の中……沖縄を去る時は刻一刻と近づくのであった……。
最後は沖縄の全てを網羅できる場所へ
4/21日、朝8時……この日は気温も穏やか(慣れ?)なため、前日から予定していた『おきなわワールド』へと向かいます。
今回もバスを使用するため『那覇バスターミナル』へ………。
乗合場の番号を出発時間をきちんと確認します。
電光掲示板だと従来のバス停とは違い、雨風で時刻表がぐちゃぐちゃになる心配もありませんね。
色分けもしていてとても見やすい。
那覇バスターミナルからおきなわワールドまでは約40分ほど……地図ではそれほど遠くないように感じますが、地図上と実際では大きく違うことはこの沖縄に来てから、嫌というほど思い知らされています。
妥当な時間といったところでしょう。

バスに乗り、揺られて向かいおきなわワールドの前に到着。
その近くには『ガンガラーの谷』というものがあり、ここからか? と思いましたが、地元のおじさんに反対側であることを教えて頂きました。
ありがとうございます。
ちなみにこのガンガラーの谷とは、数十万年前まで鍾乳洞だったのが崩壊してできた自然の谷間とガジュマルなどが立ち並ぶ亜熱帯の森で、古代人の住居跡などもある場所です。
ただし、入るためには事前予約が必須だったため私は中に入れませんでした。
もし、沖縄に来ることがあったらぜひとも予約して入ってみてください!

道路を挟んで、いよいよ…おきなわワールドの敷地に入ります。

おきなわワールドは沖縄の伝統芸能やフルーツ、鍾乳洞散策などが楽しめる沖縄の魅力が全部詰まったテーマパーク。
広大な敷地には国内最大規模の大きさを誇る鍾乳洞『玉泉洞』をはじめ、沖縄の伝統工芸や歴史を知ることができる『琉球王国城下町』、ハブに関することを学べる『ハブ博物公園』といった施設があります。

料金は全施設が入館できるフリーパスで大人が1650円、ハブ博物公園抜きで1240円、玉泉洞も抜きで620円となります。
ヘビが苦手な方や鍾乳洞は見なくても良いという方でも対応しているのは、流石ですね。
私はもちろんフリーパスを購入。
沖縄が誇るサンゴの鍾乳洞

それでは早速、玉泉洞を探勝していきましょう!
いつも岩手の時に使っていたこのフレーズ……沖縄に来てから初めて使ったかもしれません。

地底の世界へいざ冒険!

サンゴ礁の海に囲まれ、亜熱帯の島々が連なる沖縄には実は600カ所以上の鍾乳洞が存在していますが、玉泉洞はその中でも最大規模を誇る鍾乳洞。


約30万年の年月をかけて創られており、全長5,000m、鍾乳石100万本以上を擁したその規模は国内最大級で、日本三大鍾乳洞にも引けを取りません。

こちらは『大仏御殿』……石筍がまるで仏様のように見えてしまいます。


細く鋭く、天井から形成されている鍾乳石はまるでサメの歯のよう……地獄にある針山地獄が逆さになったといわれたらすんなり信じてしまいそうです。
もし、大地震などでこれらが一斉に降り注いで来たらと思うと……ゾッとしてしまいます。


洞内には屋根付きの休憩所もあります。
この狭い洞窟で建設するのは相当難しかったでしょうね……。

洞窟恒例のライトアップも……やはり白い鍾乳石は色彩のあるライトと相性ばっちりですね。


洞内には地下水の川が流れており、水の透明度は折り紙つきの綺麗さを誇ります。


ところで、皆さん……沖縄って台風とか大雨とかが多い割には土砂崩れとか河川の氾濫による洪水ってあまり聞きませんよね?
先ほども少し触れましたが、沖縄は鍾乳洞の数が多く……言ってしまえばサンゴ岩から成り立つ島国。
土は少なく、ガジュマルをはじめとした根が丈夫で張りやすく、雨風に強い植物が多いうえに、地下にはこのような鍾乳洞があるため、水はけがとても良いんです。
代わりに水が不足しやすいという点はありますが……水害には非常に強い土地というわけですね。


玉泉洞も本土の鍾乳洞同様に気温が一定に保たれ……夏は涼しく、冬は温かい。
高温多湿で雨が多い日なんかには特に重宝する場所です。


この日は修学旅行に来ているであろう学生の一団と遭遇し、彼らに交じって流れるように先に進んで行きます。

玉泉洞名物ともいえる『青の泉』……段々畑状に溜まっている水が青く照らされていて、とても幻想的な光景を作り出しています。
岩手の龍泉洞もそうですが、なぜ鍾乳洞と青はこれほどまでに合うのだろう?




こちらは『みがわり観音』……これだけ太く丈夫なら身代わりになっても折れたり、壊れたりしないでしょう。


こちらは『銀河街道』……はじめ見た時は「銀河鉄道!?」と驚きましたが、一文字違いでした。
人間というものはなんでもかんでも自分の推しているものに関連付けたい癖が出てしまいますね。

イルミネーションのようなライトの使い方……流石、観光に注力しているだけあって魅せ方が違います。



途中には丘のような場所があり、上がることで辺り一帯を眺めることができます。

洞窟内でも高い場所からの眺めはやはり最高……しかし、画像では薄暗く、周囲が同化しているためかイマイチ迫力が伝わらないですね。



銀河星雲のような水底と連なるつらら石……とても美しい。


こちらにもガジュマルが……地上でも地下でも、やはり沖縄を代表する植物は伊達じゃない!



洞窟にはコウモリや無眼のザトウムシ、トカゲモドキや、国内最大の淡水エビ……さらには1.5m以上に成長するオオウナギなども生息しているそう。
そのため、水がある場所は目を凝らして見ていましたが……この日はどの生き物(野生)にも会えませんでした。

川を眺めながら進んで行くと、一筋の光が……!
どうやら、玉泉洞も終盤のようです。
最終地点には見られなかった人のためなのか、エビやオオウナギのいる水槽が置いてありました。
洞窟の中に水槽ってシュールですね……・
それでも、沖縄が誇る鍾乳洞……堪能させていただきました!

南国フルーツの楽園
玉泉洞を抜け、エスカレーターで地上へ戻り、続いて向かうは『熱帯フルーツ園』
ここにはパイナップルやマンゴー、パパイヤ、パッションフルーツなど比較的知名度のあるものからドラゴンフルーツ、スターフルーツ、ライチ、ケガキやジャボチカバといったマイナーなフルーツも栽培されています。その種類は約50種類!

パイナップルが地面に生えているというのを初めて知りました。
大人になっても知らないことはまだまだたくさんあります。


園内にはフィリピンなどにありそうなアジアンちっくな建物や本物のバナナの木まであります。


見た目は似ているけど名前の違う果物もたくさん……全部に目を通すと訳が分からなくなってきます。

園の奥には売店があり、ここでは珍しいフルーツや加工したものを食べることができます。
私はスターフルーツ、ドラゴンフルーツ、パッションフルーツといったまだ食べたことがないフルーツをチョイスし、実食。
どれもあっさりとした味で瑞々しく美味しかったです。
沖縄の伝統が集結した城下町
フルーツ園を抜けると工房が連なる売店が立ち並びます。
沖縄ならではの『琉球ガラス』『紅型』『やちむん(陶芸)』『機織り』といった伝統工芸品の工房で購入することはもちろん、体験することもできます。

工房地帯に繋がる形で城下町を再現した『琉球王国城下町』エリアに入ります。

古民家の近くには琉球犬「空ちゃん」もいます。
琉球犬とは沖縄県の天然記念物で、日本の在来犬とは異なり、縄文時代の南方型の犬の血統を保っている可能性があるとのこと。

このエリアは琉球王国時代の城下町を再現しており、このような古民家や御嶽、神事に使われた場所などがあります。


エリア内では琉球時代のお茶を楽しんだり、琉球時代ならではの衣装『琉装』で散策することもできます。
伝統衣装に身を包めることができるのはここくらいなのではないでしょうか?

琉球の歴史を再認識した後は、沖縄ならではお酒『ハブ酒』の製造所へ。

中には大量に貯蔵されたお酒……

そして、仕込みに使われている大量のハブが……エキス抽出とはいえ、これだけ大量に使うんですね……。
ちょっと飲むのに躊躇いそうです……。

説明書きには「アルコールで毒は分解される」とあります。
マムシ酒と一緒ですね。
というのも、蛇の毒は大きく分けて出血毒と神経毒の2つがあります。
神経毒はウミヘビやコブラなどが持ち、皮膚に触れただけでも作用する危険なもの。この神経毒はハチなども持っていますね。
一方でマムシやハブの毒は出血毒なので牙から血管に入らなければ作用せず、皮膚に触れた程度では作用しません。逆にいえば噛まれなくても、毒液だけが血管に入れば作用します。
マムシやハブの毒は蛋白質の一種なので極端な話、飲んでも害は無く、酒に浸ければマムシやハブが毒を吐き、その毒がアルコールと結合する事によって薬に変わって、滋養強壮の成分へと変化する……だからお酒になる、ということですね。
島で慣れた人では本当にハブの毒液だけを飲み込むことができる人もいるみたいです。良い子や良い大人は絶対に真似をしちゃいけません!
ひと昔前にいわれていた「毒を口で吸いだす応急処置」もこれで毒の量を減らしてから、病院に行って治療する……というところから来ているようです。
ただ、虫歯や口に傷のある人はやってはいけませんし、今では推奨されていないので……止血して流水で流し、即刻病院に行くのがやはりベターといえるでしょう。
ちなみにここまで聞いて「じゃあヤマカガシでも酒は作れるんじゃないか?」と思った人が少なからず、いるんじゃないかと思います。
確かにヤマカガシの毒は出血毒ですが、こちらはマムシやハブとは少し性質が違うんです。
ざっくり説明するとマムシやハブの毒は血液が固まる作用を阻害して、血が止まらなくなる状態を作ってから、第二の矢として血液中に微小な凝固を敢えて作り、メインの凝固作用の力を消費させ、ますます出血を止まらなくさせるという二撃タイプ。
対してヤマカガシの毒は先ほどの第二の矢である微小な凝固タイプを作ることをメインとした一撃必殺タイプ……この力を強力にした毒で、これによって、メインの凝固因子の力を消費というまどろっこしいやり方からいきなりゼロにしてしまう恐ろしいもの。
ハブやマムシよりヤマカガシが恐ろしいというのはこういうこと……そのため、ヤマカガシの毒を『溶血毒』と呼ぶこともあるそうです。
なんにせよ、変なことをせず、蛇には無闇に近づかない!
噛まれたら傷口を流水で流して即病院!
これだけ覚えましょう。
沖縄のヘビと愉快な仲間たち
ハブ酒製造所を出ると売店や沖縄の伝統芸能『スーパーエイサーショー』そして、動物検証番組でお馴染みの『ハブとマングースのショー』などが行われる会場があります。
私はハブとマングースの対決が見られるのか、とワクワクしていましたが、なんと現在は2000年の動物愛護法の改正により、決闘が出来なくなってしまったとのこと。
その代わりに披露されたのはウミヘビとマングースの水泳対決!(ハブじゃないのか……)
皆さんはどっちが早く泳げると思いますか?
その時の会場はほとんど「マングース!」でしたが……
そんな大衆の期待を裏切り、結果はウミヘビの圧勝!
しかも、ゴールしてから戻ってまだ泳ぐ余裕っぷり……競馬だったら大穴でしたね。(ちなみにマングースは泳ぎ切ったら一目散に陸に上がってました。そりゃそうだよな……)

ショーを観覧した後はいよいよ最後の場所『ハブ博物公園』へ。
道中にはたくさんの亀がいる池など、行く前から爬虫類だらけな予感がします。
施設の前には白蛇である『ボールパイソン』が……今年は巳年、縁起が良いですね。

施設の中に入ってみると入り口には大きな水槽が……中には先ほどマングースに圧勝したウミヘビが大量にいました。

目はありますが、玉はあるのか……と思うほど、穴が空いたかのような黒目です。
温厚な性格で滅多なことでは人を襲ったりせず、離島では『イラブー』とも呼ばれ、燻製や干物にされ、神に捧げられたり、食べられているウミヘビ。
そんな彼らはハブより強力な毒を持つ、いわゆる『怒らせたら怖い』側の生き物です。
クマバチといい、赤髪のシャンクスといい……温厚な方には調子を乗らないようにしましょう。
水槽を叩いて「おれの仲間を怖がらせないでもらおうか?」と覇王色の覇気を放たれたら、たまったもんじゃないですから……。

そんなイラブー様に見られつつ奥へ進んで行くと、そこにはハブの生態に関する数々の展示がありました。
中には大蛇の骨格まで……映画『アナコンダ』は誇張ではなかったのですね。

このハブ博物公園は40年以上前、沖縄のハブ被害を少しでも減らしたいという想いのもと、ハブの研究施設から派生して設立された施設です。

世界的にも注目が高く、各国の毒蛇研究者が集まる国際会議の場にもなったほど……ハブに関する展示にはどこにも負けていません。
中にはギネス級のハブの剥製も……こんな長いの道端にいたら卒倒しそうです。
このハブは沖縄県糸満市で発見されたもので、体長225センチだそう……石垣から這い出てきたところを捕獲されたのだとか。
論文では脊椎骨の構造から「ハブは225.7センチ以上には大きくならない」とされていたそうですが……現物はギリギリ。科学で自然を完全に解明するにはまだ先になりそうですね。


展示資料にはハブの血清の作り方も……研究が発展して被害が最小限になることを願うばかりです。

各島に生息しているハブのホルマリン漬け。
こうして見ると微妙に違いがあるんですね……どれもおっかない顔してますが…。

施設を出るとハブが放し飼いにされている場所に出ました。
這ってはいませんでしたが、奥の方にぎっしりと団子のように固まっています。

屋外にはハブの他、爬虫類族の愉快な仲間たちがいます。
やはり南国と爬虫類ってセットですよね。


もちろん、ハブも間近で見ることができます。
ゲージに入っていますが、やはり得もいえぬ緊張感が走りますね。


色々な種類のハブがいますが、どのハブも頭は三角で似たような柄……どこかで毒蛇は頭が三角と聞いたことがありますが……でも、コブラやブラックマンバはどうなんでしょう?
あれらって、頭が丸っぽいですよね?


こちらは動物園などでお馴染みニシキヘビ。
なんというか、体は大きいですけどハブと雰囲気は違いますね。
ハブが攻撃的ならこちらは防御的な感じです。

ハブだけでなく、その天敵とされるマングースもいました。
ハブ駆除のために輸入されましたが、実際のところはハブを積極的に襲うようなことはせず、むしろ農作物や貴重な動植物を食べるとして、今では害獣扱いされているかわいそうな目に遭っています。
自然界の脅威は自然界で退ける生物的防除の案は賛成ですが、思うようにいかなかったからといって害とするのは身勝手過ぎるというものでしょう。
人間の勝手で……ごめんよ、マングース。

何かの工事をしている傍ではゾウガメがのんびりその様子を眺めています。
外から来た生き物ですが、沖縄の風土と上手くマッチしていますね。

敵を知り、己を知れば百戦危うからず……ハブを知り、自身を知れば咬傷被害に遭うこともないでしょう。
いくつになっても日々勉強……これは大事なことです。

雲は消え、やがて晴れ間に
ハブ博物公園を後にし、ぐるりと園内を散歩します。
雲に覆われていた空はいつの間にか青空が見えていました。
沖縄の空……滞在中は曇ったり、雨が降ったり、綺麗な青空になったり色々な姿を見せてくれました。

飽きるほど見て回り、出口へ………おきなわワールドの入り口を振り返ります。
この構図……場所と建物は違いますが、最初に訪れた美ら海水族館の海洋博公園を思い出します。
朱色の建物と見送るシーサーを背におきなわワールドを後にしました。

悔いなきよう己の身に沖縄の全てを刻み込む
おきなわワールドからバスを使って帰ろうかと思いましたが、次のバスまでは2時間ほどあるとのことで、途中まで歩いていくことにしました。
正直、車で那覇からおきなわワールドまで約40分ほどかかるので歩いて那覇へ戻ったら4~5時間ほどかかります。
そのため、気の済むまで歩くことにしました。

道端にはこちらを見るヤギや鶏……近くにはさとうきび畑が広がり、南国特有の木々。
これぞ沖縄らしい日常風景といったところでしょう。
明日の早朝にはこの地を旅立つ…………そう思うとどこか寂しく感じます。
本格的に働けば、恐らく二度と来ることができない土地。
忘れないように……忘れても、感情や感覚で思い出せるように五感をフルに使って感じながら、歩きます。
見た景色、風の音、潮の香り、味わった味覚、触れた感触……一つ一つを刻むように、焼き付けるように。
私は以前、介護の仕事をしていたので認知症の方と触れ合う機会が多かったのですが、その際に感じたのは『記憶は無くなっても感情やその他の感覚は残っている』ということ。
「この人から嫌な対応(怒られた・ため息を吐かれた)をされた」というのは覚えていなくても、その時に感じた嫌な感情というのは体の奥底に刻み込まれているらしく「この人はなんだか分からないけど、嫌だ!」というのがよくあります。
また、目や聴覚、感覚が衰えてもその他の感覚はまだ残っていることが多いです。特に嗅覚の低下というのは、少ない傾向が見られます。
そのため、香りによって記憶が呼び起こされたり、何気ない動作から懐かしさを感じるという場面は多々あります。
もし万が一、私が認知症になり、五感のいずれかが衰えようとも……体に刻み込んだ沖縄の思い出は一生残ることとなるでしょう。

ひとしきり歩き、熱中症一歩手前まで来たのでバスに乗って那覇へと帰還。
これで熱中症になった際は、いつでも走馬灯に沖縄の景色が走ることでしょう。
最終調整! しかし暗雲が……
残りの時間はお土産屋さんによって買い忘れが無いようにしたり、明日からの船旅で不足が無いように酔い止めや軽食類を購入。
あとは翌日に備えて早く寝るだけ……の筈だったのですが、ここに来て急に喉にいがらっぽさが出現しました。
喉の渇きに似たような感じの軽い痛み……だけど、どれだけ水を飲んでも渇きと痛みは引かない。
熱は無いようでしたが、急遽近くのドラッグストアで葛根湯を購入し、沖縄の夜の余韻に浸る間もなく就寝しました。
はたして、この行動が明日の出航にとって吉と出るか凶と出るか……。
NEXT……
