前回のあらすじ……

風邪の静かなる悪化により、行動に制約がかかってしまった私シードル。
加藤清正公が眠る本妙寺を参拝し、街中の自然を堪能しつつも体調管理のため鹿児島のホテルへ行き、早めに横になるのでした。
果たして、宮崎の地へ足を踏み入れることはできるのでしょうか?
念願の桜島を眺め、宮崎へ
4/26日、朝9時……本日は移動メインの予定なので、ゆっくりと遅めに起床。
ホテルの朝食バイキングで鹿児島の伝統料理の数々を堪能させていただきました。
いや~、鹿児島のご飯……本当に美味しいですね!
黒豚にさつま揚げ、鶏飯……どれも美味しかったですが、鶏飯はなかなか胃が受け付けにくい朝にぴったりの一品ですね。岩手に戻ったら試しに作ってみましょう。
そして、さつま揚げも船旅の際の朝食で食べて以降、相変わらず美味しい!
本場はカリカリというよりふっくら重視ですが、味は仙台の笹かまぼこ同様に魚の風味が効いていて味もしっかりしている……私自身、率先して練り物が好きというわけではありませんが、食の嗜好が大きく変わりそうです。
食べるものも食べ、遅くに起きたためか体調もようやく治りました。
長かった……そして、辛かった……。
やはり一週間以上のカプセルホテル、キャビン暮らし(ときどきリクライニング)は体の負担があるようですね。
長旅はちゃんとしたベッドや布団で寝るのが良いでしょう。
そんな回復した私を祝福してくれるかのように、鹿児島の空も晴天!
桜島もようやくちゃんとした姿を見せてくれました。

本当はこの状態で仙厳園に行きたかったですが、ここから先は列車の本数も限られ、行ける時間帯もシビアのため、余計な寄り道はしません。
以前は霧雨に覆われていた霧島付近も綺麗な緑を見せてくれます。
今行けばさぞかし絶景だったろうな……。
この間行った霧島神宮駅を過ぎるとそこから先は深い山の中……晴れていても歩いてこの辺りを回るのは無謀の極みでしたね。

長い時間をかけて、鹿児島に別れを告げ……次なる地、宮崎へ。
ホテルを予約している場所まではまだ先なので宮崎駅で乗り換えです。

次の列車が来るまで駅で待機。
真っ赤に染まった列車が来ては通り過ぎる様子を眺めます。
なんというか……北国の列車と比べるとこちらの地域の列車は派手な色でカッコいいですね。赤とか黄色とか……。
いえ、北国の列車もシンプルな色合いで個人的には好きですよ? 緑とか黒とかシルバーとか……。
ただ、ごくたまにこのような色合いの列車を走らせても良いと思うのです。
もしかすると派手な色が事故防止に役立つかもしれませんし……主に鹿とか、熊とか……。

窓越しですが、宮崎駅周辺を撮影。
ヤシの木でしょうか? すっごい高いですね!
道路も広い!
けれども、高いのがヤシの木ぐらいでビルなどがなくごちゃついてないのがとても好きです。

マンゴーが特産品なだけあって、南国情緒溢れていますね。
鹿児島や熊本とはまた違った雰囲気があります。
そう思いながら眺めていると列車が来たので、乗り込むことに……。

在来線各駅停車の列車に揺られ、のんびり列車旅……いや~、良いですね。
フリー切符最後の3回目を使っているので、実質乗り放題。
ここで「あれ? 九州来て4日目だよね? おかしくない?」と思った人は鋭い!
実は前日の本妙寺に行った際は市電と新幹線が主な移動手段だったので、敢えて使わなかったんですよ。
私が九州旅初日で購入した『旅名人の九州満喫寺社めぐりきっぷ』は期間内なら3回使える便利なフリー切符。
通常のフリー切符と違う点は一度使うと3日間連続使用ではなく、その日の状態に応じて使うか使わないか決めることができるのが特徴です。
もし、これが連続使用の場合だったら前日で切れてしまい、もったいなかったですが期限内3回という融通が利いた仕様のため、安い市電と対象外の新幹線は実費で払い、今回は利用できたというわけです。
ただ、縛りとしては先ほど言った新幹線や特急指定席と併用することができない、という所……通常のフリー切符の場合は指定席券だけ買えば乗車券はフリー切符の対象となるのでお得に乗ることができますが、この切符に関しては指定席特急に乗車する際は乗車券も購入しないと使えないというわけです。
やはりうまく出来ている仕組みですね。
とはいえ、3日とも長距離路線で使用しているため、既に元は取れています。というか、阿蘇山方面に行った時点で十分料金分の働きはしてもらいましたから良しです。
……一つ誤算だったのは各駅停車の長時間乗車は思ったよりもキツイということ。
人は少ないので席に座ることができるのですが、移り行く似たような景色をずっと眺めているのがことのほか辛い……。
特急列車が頻回にある理由……なんとなく分かった気がします。

鹿児島から出発し、列車を乗り継ぐこと約6時間……ようやく私の目的地『延岡駅』へ到着。
非常に長かった……頭がボヤッとして痛いし、なんだか少し気持ち悪い。風邪の悪化というよりこれは十中八九、乗り物酔いでしょう。酔い止め飲んだのに……。
今回はこの地の駅前にある『アパホテル』で2日間の滞在予定ですが、チェックインまで時間があるので、運動と酔い覚ましも兼ねて、とある場所へと行きましょう。

日本一巨大なおだいっさん
延岡駅を出るとすぐの商店街のような所に『今山大師駅前参道』というアーケードが見えます。
そのアーケード街に沿って歩くこと約15分……小高い山(今山)の上にあるのが宮崎における最初の探訪地『今山大師寺』です。

山号は『蓬莱山』……正式名は『蓬莱山今山大師寺』
御本尊は高さ約30㎝の弘法大師空海の木像で真言宗の本山である高野山金剛峯寺から天保10年(1839年)に勧請されました。
地元では『今山大師』『おだいっさん』と呼ばれ、親しまれています。

山の上に立っており、お寺からは延岡の街を一望することができる見晴らしの良いスポットとなっています。
風もほどよく吹いて心地良い!

少し急な階段を上り、境内へ……この頃は急な段差を上がることが多いですね…。
リュックサックに肩掛けカバンも身に付けているのでそこそこ重量があります。
お参りに来たのにまるで拳法の修行でもしに来たかのよう……足腰はもう十分に鍛えられています。

お参りを終え、奥の方へ……。
一際目立つ巨大な弘法大師の像が見えてきました。
ここは元々、蓬莱山善龍寺という別のお寺の奥の院にあたる場所で、その善龍寺の一角に大師庵を築き安置したのが始まりとされています。
巨大な弘法大師像は高さ18mを誇り、日本一!
かなりの迫力があります。
おだいっさんには足元まで近づけるとのことなので早速入ってみましょう。

中に入ると番号の付いた砂袋が敷き詰められています。
この砂はお遍路で有名な四国八十八カ所霊場の砂とされており、この砂袋を踏みしめることでお遍路と同じ御利益を得られるとのことです。
真言宗とお遍路は確かに関わりがありますが、それでも砂袋まであるのはここが初めて。
というのも、お寺の縁起由来によれば天保10年(1839年)にこの地では蔓延する疫病に悩まされており、満石幸蔵という人物が小さい息子と共にお遍路に行った後、高野山にて後の御本尊となる弘法大師の座像を授かり、祀ったところ疫病が止まっていったという逸話があるからです。
以降、今山大師は疫病封じの御利益があると伝えられ……弘法大師の命日である旧暦の3月21日の前後には現在でも続く大規模なお祭りが催されるようになりました。
最近ではまた色々な病が流行り出しているので、病魔退散も込めて砂を踏みしめながら大師像の元へと向かいます。

弘法大師像のある屋上へ辿り着くと、一段と良い景色が出迎えてくれました。
延岡駅では見えなかった遠くにある海まで丸裸に。

山々と街並みもより美しく眺められます。
なんだか一日に一回は見晴らしの良い場所に行っている気がします。

足元から見上げるおだいっさんは大仏かのような迫力満点の御姿。
延岡の地が危機に瀕する際に動き出してもおかしくないですね。
その場合は法力ではなく圧倒的な武力になるかもしれませんが……。

この足をさすれば身体が健康になるとのことなので、一生懸命にさすります。
せめてこの旅の間だけでも持病の気胸が再発しませんように……。

しかし、神社のような鮮やかで荘厳な造りです。
もしかしたら、こちらも神仏習合の影響を受けていたのかもしれません。

そうして、こちらでも御朱印(300円)を頂戴しました。
閉門に近い時間帯にも関わらず、対応していただきありがとうございます。

チキン南蛮発祥の地を探訪
今山大師を後にし、ようやくチェックインの時間帯になったためホテルで受付を済ませた後はぶらりと延岡駅周辺を散策します。
今までは主要都市を中心として泊まっていたため、少し静けさのある雰囲気は久しぶりです。
やはり私は歓楽街のような人の多い賑やかな場所よりも、落ち着いた土地が好きなんだと改めて実感しました。
今山大師で有名な延岡ですが、実はここはあるものの発祥地としても知られています。
それは宮崎名物『チキン南蛮』
チキン南蛮=宮崎全域と思っていましたが、細かい発祥地としてはここ延岡からだったんですね~……私は随所に掲げられている看板を見て、疑問に思って調べるまでは全く知りませんでした。
駅前にあるお店(のべから&コトコトカレーさん)では本場のチキン南蛮をテイクアウトできる所もあるので、食が細かったり、店で食べるのに不安がある人でも安心して堪能することができます。

私が今回、この地を2日間の滞在先として選んだ理由は……数ある悲願の内の一つ『高千穂峡』へ行くためです。
空港や新幹線を利用する方々は主に『熊本空港』周辺でレンタカーを借りて行くのがマストとなっていますが、運が悪いと車が借りられないといった事態に陥ります。
かといって鹿児島からでは距離もあるし、熊本市内からだと慣れない土地で運転に不安が生じてしまう……そこで地図を見ながら考えた結果、物理的な距離からほど近く……各県の主要都市からほどよく離れたこの延岡の地から向かうことに決めました。
目論見通り、レンタカーショップは駅やホテルからほど近い場所にあり、車の種類も選ぶことができるうえ、熊本空港周辺のお店より安く予約することができました。
夕方を知らせる今山大師の鐘の音を聞きながら、予約と夕食をほどほどに済ませた私は来るべき明日に備えて、少し早めに休むのでした。