岩手山のお膝元にあり、盛岡市に接する八幡平市の玄関口『西根地区』
この地区では八幡平市特有の豊かな土壌と良質な水を使い、様々な野菜が作られてきました。
そんな岩手県内でも有数な野菜の名産地、西根で特に力を入れているのが『ほうれん草』です。
その味は日本一とも称され、多くの人々に認められ、最高位の賞を受賞するほど……。
今回はそんな至高のほうれん草をご紹介していきます。
冷涼な気候と人々の熱意が作り上げた最高のほうれん草
岩手は北国のため、昔から稲作にはあまり向かい土地ではありました。
同じ北国である秋田は米どころとして知られていますが、その隣である岩手が秋田ほどお米で有名になれなかった点としては『夏場においても涼しいから……』というのが挙げられます。
毎年、太平洋側から吹きつける『やませ』や度重なるその年の冷害もあり、米だけの収入では暮らしていけない人は必ずいたといいます。
ただ、農家の人達の努力というのは凄まじいもので、なんとかその自然の力を生かせないものかと数々の農作物の品種改良や開拓を行ってきました。
西根のほうれん草もその一つ……昭和40年代後半頃から農業改良普及所や農協が連携し、夏場温度の高い地域では栽培が困難なほうれんそうをこの地域の涼しい気候を生かし、簡易ビニールハウスを利用した『雨よけ栽培』として着手したのが始まりです。
元々、ほうれん草は冷え込むと軟らかくなり、味が良くなるという特徴の他に種まきから約1か月で収穫できるというスピードの早さもあることから着手しやすかったのでしょう。
事実、 昭和55年に起きた大規模な冷害ではこのほうれん草が不作で減少した稲作の収入を補ったことで農家の生命線を繋ぎました。
さらに同時期に東北自動車道が開通し、首都圏への流通ルートも出来上がった結果……栽培の拡大へと至ることができました。
そうして生産者、関係者が一致団結し、ほうれん草のブランドが市場にも浸透。
ほうれん草産地として高い評価を受け……ついに昭和63年度第27回農林水産祭において、最高位の『天皇杯』を受賞するに至りました。
現在では西根といえばほうれん草、というイメージが根付き……道の駅『にしね』ではほうれん草をふんだんに使用したグルメなども生まれ、ますます発展していったという歴史があります。
レポート
見た目
それではさっそく見ていきましょう!
まずは買ったばかりのこちらから……

いや~、綺麗な緑色をしていますね! 新鮮そのもの!
ほうれん草自体は八幡平市近郊の産直やスーパーでも販売されていますが、やはり道の駅『にしね』が豊富にあります。
普通のほうれん草だけではなく、朝一番で収穫した『朝採りほうれん草』や寒い時期に販売される『寒締めほうれん草』、『ちぢみほうれん草』など様々なものがあります。
個人的には『ちぢみほうれん草』が旨味がしっかりしていて美味しいのですが、今回は基本の味を確かめてみたいので、通常のほうれん草を購入です。
匂い
匂いに関してはあまりしない印象でした。
というより、ほうれん草の匂いというのはあまりまじまじと嗅いだことはないのですが、普通のほうれん草というのはやはり青臭いものなのか?
しかし、西根のほうれん草は青臭さもなく無臭。
料理に適した食材といえるでしょう。
味
ほうれん草には色々な料理がありますが、やはり素の味を感じるには生……といきたいところですが、ほうれん草は灰汁が強いので生で食べるのは推奨しません。
やはり下茹でしてから食べるのが一番でしょう。
よく「茹でると栄養素が流れ出る」といわれ、昨今では茹でずに調理する傾向にありますが……。
生のほうれん草には『シュウ酸ナトリウム』が含まれています。
これが尿中のカルシウムと結びついて世界一の痛みといわれる『尿路結石』が出来上がるんですね。
ただ、下茹でをすることで水溶性のシュウ酸ナトリウムは溶けだし、このリスクを減らすことができます。
それに茹で時間を短くすれば栄養素も流れ出ません。
お湯に塩を加えて茹でた後、流水で冷やすことで綺麗な緑色も保つことができます。

無論、必ず塩を入れて茹でなければいけないというわけではないので、塩分が気になる方はお湯だけでも大丈夫です。
というわけで、ほうれん草が茹で上がったのでさっそく実食といきましょう!
気になる素の味は……程よい甘さが口の中に広がる、というのが第一印象です。
甘さは野菜本来の甘味というか、体に優しいというのを舌で感じることができます。
お菓子とかの材料にしても相殺しないというか……灰汁の強い野菜にしては口当たりも軽いのでついつい食べ過ぎてしまいそうです。
続いては少し味変。

醤油を付けて味わってみましょう。
お供は減塩しょうゆの『いわて健民』……さてさて、お味は?
……あれ? なんというか味が消えた?
先ほどのほうれん草の甘味があまり感じない……どうやら醤油の塩味で相殺されたようです。
確かに味変にはなりましたが……どっちかというとかけずに食べたほうが美味しい。
なんでもかんでも調味料を使えば美味しいというわけではないんですね。勉強になりました。
用途&感想
ほうれん草本来の甘味が強いお浸しにするよりもそのまま食べたほうが美味しく感じられました。
特に今回使った醤油は減塩のものなので、塩味が強い普通の醤油ではしょっぱさが勝ってしまうのでしょう。
用途としては調味料……特に味の強いものとは併用せずに胡麻和えやシチュー、ポタージュなどの材料にするのが良いかもしれません。
ただ、カボチャのようにお菓子類とは相性が良いかもしれないので蒸しパンなどにすると旨味を引き出せると思います。
商品アフィリ
ほうれん草の旬は冬ですが、道の駅『にしね』では通年でほうれん草を取り扱っています。
一番はやはり現地の産直、道の駅での購入が新鮮かつ安価で手に入るのでオススメです。
残念ながら通信販売などは行っていないようですが、八幡平市には直売所もありますので八幡平観光の際はぜひとも購入してみてください。
おわりに
現代人はとりわけ野菜不足となる傾向があり、特に下処理が必要となる食材においてはなかなか手が出しづらい傾向にあります。
ほうれん草もその一つで「茹でるのが面倒」という理由で敬遠されがちです。
ただ手間をかけるものというのはそれ相応の美味しさや栄養、価格が安いというメリットもあります。
皆さんもたまには手間暇をかけて、自然の甘味を堪能してみてはいかがでしょうか?
体と舌が喜ぶこと間違いなしですよ!


