前回のあらすじ……

体調がようやくちゃんと回復し、自身を労わる大切さを身をもって知った私シードル。
長い列車旅の末、鹿児島から宮崎の地へ無事に到着し、今山大師へ病魔退散を祈願。
このまま順調に念願である『高千穂』の地へ足を踏み入れることができるのか?
神話の里へ
4/27日、朝6時………今山大師の朝の鐘の音とともに起床。
なんというか、鐘の音って大晦日ぐらいしか聞くイメージが無かったので、これも新鮮な体験です。
おかげでスマホのアラームよりも早く目が覚めてしまいました。
テレビを点けて、ニュースを見ると天気は晴れ………今日も良い日になりそうです。

朝のひと時をゆっくり過ごし、レンタカーの予約の時刻になったため駅前にあるレンタカーショップへ。
聞くと、ここから高速道路に乗って無料で高千穂峡まで行けるとのこと………。
ありがたいことです。これは神様に呼ばれているということでしょうか?
高千穂峡探訪
車を走らせ、途中トイレにも寄りながら約1時間ほどで『高千穂峡』の駐車場へ到着。
少し、早めに行ったつもりでしたが、人の数は思ったよりも多く少し離れた駐車場に停めることに……。
ですが、天気は快晴!
この際、行けるなら駐車場などどこでも良いです。

とはいえ、結構離れた駐車場なので峡谷の入り口まで行くのにも時間が掛かってしまいます。
ルートも色々とありましたが、人が多かったので流れるままに付いていきます。
そうして、売店らしき所の傍にある小道からいよいよ峡谷内へと入ります。

峡谷入り口近くにある橋から下を覗き込むとゴツゴツとした岩と深い谷が姿を現しました。
岩の模様などで近くにあるように見えますが、実際は結構深いです。

延々と続く山の緑と底の見えない川がどこか古の雰囲気を漂わせます。

明るい場所であれば岩に生えている苔が鮮やかな緑色を放ちます。
遊歩道はちゃんと整備されており、くぐらない限りは安全です。

高千穂峡は今から約27万年前、14万年前,、12万年前、9万年前の約4度にわたる阿蘇山の火山活動によって噴出した火砕流が冷え固まってできた渓谷。
高さは平均80m、高いところで100mの断崖やV字峡谷が東西約7kmにわたって続いています。

昭和9年(1934年)には『五箇瀬川峡谷(高千穂峡谷)』として名勝、天然記念物に指定……その31年後には祖母傾国定公園の一部に指定されました。
雄大な渓谷はまるでジブリを彷彿とさせるかのようで、有名な『真名井の滝』のほか、数々の絶景スポットを生み出しています。

高千穂峡には『神橋』『高千穂大橋』『神都高千穂大橋』の3つの橋が掛かっており、高千穂峡遊歩道からのみ、それら3つの橋を一度に見ることができます。
画像ですと下から『神橋』『高千穂大橋』『神都高千穂大橋』の順になります。
同じ峡谷内で3つのアーチ橋を同時に見ることができるのは全国的にも珍しいのだとか……。

覆い被さるような巨大な岩と山々はまさに圧巻! 迫力満点の光景です!

手で抉り取ったかのような独特の景観はまさに自然が長い年月をかけて作った芸術といえるでしょう。


遊歩道の中間辺りまで来ると橋が架けられた場所があります。
こちらは『槍飛(やりとび)』と呼ばれる所で高千穂峡を流れる『五ヶ瀬川』の中で最も川幅が狭い場所です。
名前の由来は、城を攻められ逃げ延びる際に人々が槍を投げて向こう岸に渡ったという伝説からで、手前の岩に槍を突いた者は無事飛び渡ることが出来たが、向こう側に突いた者は川の中に転落したという曰くもあります。
ただ、この場所は差し込む陽の光が川面を反射すると美しい光景になり、映えスポットとしても知られています。
私は陽が隠れてしまい上手く撮れず………。

穏やかな日の光と涼しい風が通り、森林浴としても最高ですね。

川近くの岩場は長年の浸食により『柱状節理』という独特の形へと変貌しました。
こうして見ると水晶などの結晶に似ていますね。


遊歩道も後半になると川も随所に底が見え始め、拓けた場所も現れ始めます。


この形状……巨人がこれを洗濯板代わりにしたらさぞかし汚れが取れるに違いない。

ずっと奥まで続く遊歩道………ここまでで30分。
写真撮影の寄り道とはいえ、先はまだ長い。

こちらは『仙人の屏風岩』………切り立った柱状節理の岩々が屏風に見えることから名づけられたようです。
屏風に見えなくもないですが、私的にはテトリスの途中に見えてしまいます。

この注連縄が巻かれた岩は『鬼八の力石』……高千穂に伝わる伝説では高千穂神社の祭神である三毛入野命が高千穂地方で悪行を働いていた『鬼八』を退治し、この地を治めたとされ、その際に鬼八が三毛入野命に投げて力自慢をしたのがこの岩だといわれています。
こんな岩投げられたらたまったもんじゃないですね。
神々のキャッチボールともなれば、硬式以上の球が必要みたいです。

この遊歩道は2022年(令和4年)の台風14号で一部区間が通行止めとなっていましたが、2024年(令和6年に全面開放されたました。
それまでの期間は約1年半………実にタイミングが良い時に来ることができました。

こちらは『七ツヶ池』と呼ばれる甌穴(おうけつ)。
甌穴とは岩の表面に水流などによってくぼみができ、そのくぼみの中に礫などがが入ると渦流によってその礫が回転し、丸みを帯びた円形の穴に拡大してできた穴のことをいいます。
この穴があった場所は元々が川であり、その川が浸食などによって川底が下がることで地表に出てくるもので昔の地形を知る際には重要な手がかりになるとのこと。
点滴岩をも穿つ、とはいいますが、同じ所を回転するだけでもこのような穴になるんですね。
一つだけ共通することとしては「一つのことをやり続ける」……これが大事ということでしょう。

遊歩道も終盤に差し掛かるといよいよ高千穂峡の名所『真名井の滝』が見えてきました!
さすがは『日本の滝百選』に選ばれるだけあって迫力がありますね。
もう高千穂峡に来てから迫力のあるものばかりです。

遊歩道には真名井の滝を見るための滝見台が設置されています。
高さは約17メートル……神話によれば天村雲命〔あめのむらくものみこと〕という神が天孫降臨の際に、この地に水がなかったので水種を移し、これが『天真名井』として湧水へ……やがて滝となり、流れ落ちているといわれています。
真名井の滝はボートを使うことで間近で見ることができますが、こちらのボートは予約制のため今回は乗らず………しかし、こうして見ることはできたので大満足です。

真名井の滝を通り過ぎるとさらに拓けた場所と遊水地のある場所に出ました。
こちらの池は『おのころ池』といい、国生みの神話で知られる神々(伊邪那岐命と伊邪那美命)が創り出した最初の島(おのころ島)が池の中央にあるといわれています。
またこの池にはかつて、桜川神社(淨津の妙見社)という神社があり、鶏はその社に仕える神聖な鳥であったと伝えられており、今では高千穂神社の春祭の際、御神幸のおみこしがこの池を三度まわって禊をする行事が行われています。

草木の緑と空の青を反射する水面は実に美しい景色を作り出しています。

このおのころ池には鯉をはじめ、ニジマスなど淡水を代表する魚が生息しており、透明度の高い水によってその姿をはっきりと見ることができます。

特に巨大なチョウザメが泳ぐエリアもあり、その巨体を間近で見ることができます。
高千穂産キャビア……御利益がありそうです。

至る所から清廉な水が苔や岩場から染み出し、池に注がれています。
さぞ、ミネラルたっぷりの美味しい水でしょう。
ここではニジマスの釣り堀もありましたが、私が訪れた時は水が抜かれ、やっていませんでした。
残念……。

遊水地周辺には石碑や売店、トイレなどがあり、遊歩道を歩いた後は一休みするのにちょうどいい場所です。

お食事処では綺麗な水を使った豆腐やこんにゃくの田楽、イワナやアユの塩焼きなどが販売されており、小腹が空いた時にも役立つお店がわんさか。
中でも『千穂の家』というお食事処は『元祖流しそうめん発祥』だそうで、店内で流しそうめんを楽しむことができます。
私が来た時も店内は大勢のお客さんで賑わっていました。
夏の暑い時期に食べれば、身も心も涼に染まることでしょう。

森と水に囲まれた聖地……まさにマイナスイオンたっぷりの場所です。

売店そばにある御橋からは別の角度で間近に真名井の滝を見ることができます。
私個人としてはこのアングルが気に入っています。

そんな御橋を渡ると現れるのが『高千穂峡淡水魚水族館』
大人になると動物園より水族館に行きたくなるのは一体なぜなんでしょうかね?
とりあえず中に入ってみましょう。

入場料は大人600円。小中学生は300円です。
中にはイワナやヤマメ、鯉といったメジャーな淡水魚の他にドンコやタイリクバラタナゴ……さらには『日本三大怪魚』の内の一匹『アカメ』といった貴重な魚を見ることができます。
こちらのアカメはかなり大きかったですが、病気か怪我か……目が赤ではなく白になっていました。
しかし、それでも貫禄は健在ですね。

こちらは二ホンウナギ……天然ものはかなり貴重となり、年々数を減らしていますね。
頼むから絶滅しないでおくれ……。

様々な淡水魚を見ているとその中で少し違和感を覚える水槽を発見しました。
なんというかボーっと見ると金魚のように見えますが、なんか違う……気になって名前を見るとそこには『ヒブナ』の文字が……………。
じゃじゃっ⁉ まさかこんなところで見ることができるとは!

思わず興奮してかなり魅入ってしまいました。
パッと見ただけでは金魚と間違えてしまいそうなこちらのヒブナは漢字では緋色の鮒と書いて緋鮒といいます。
野生の魚や動物に見られる突然変異種……突然変異種で一般的に知られるのは白ヘビや白鹿といった『アルビノ』ですが、フナの場合は黒い色素が抜けて赤や黄色、オレンジといった色に変わります。
約1700年前に中国で発見され、北海道の春採湖では野生のものが天然記念物に指定されています。
このヒブナを改良したものが今日で人気となっている金魚……つまり金魚のオリジナル個体というわけです。
アルビノ同様、こちらのヒブナも自然界では目立つ色のため天敵から見付けられやすく、野生でお目見えすることはほとんどありません。
そのため、フナやヘラブナがヒブナとなったものは釣り人の間では『幻の魚』と称されています。
ゲームの『川のぬし釣り』では裏ボスである幻のぬしにされたり、アニメの『釣りキチ三平』では池の埋め立てのエピソードの際に三平たちが池の魚をできるだけ釣って救おうとした時にヒブナが釣れ、ヒブナの生息地として池が保護され、埋め立てを免れた………等々、その幻の魚に恥じない活躍を見せています。
昨今、山や川、池などが開発で潰されており……そのたびに法律だ、中国だ、行政だ、と争いが勃発していますが、岩国の白ヘビや白神山地に棲む絶滅危惧種のクマゲラ、オオワシのように希少な生き物が見つかれば、その開発はすぐに中止され、保護区域にすることができます。
これはいくら大金を注ぎ込んで土地を購入し、法律で土地の所有権を持っていたとしても優先される事項………なぜなら、絶滅危惧種や希少な動植物の保護は一地域、一国だけではなく世界規模に関わることだからです。
もし、それを無視して我欲に走り、殺めてしまったとしたら……周囲のバッシングのみならず世界規模の制裁を負うことになるでしょう。
それほどまでに強い影響を持つ生き物に出会えたことは幸運といわざる負えません。
いや~、実に良いものを見ることができました。
高千穂峡………神々の聖地と称されるパワースポットなだけあって、素晴らしい場所ですね。

五ヶ瀬川の雄大な流れも景色と相まって最高です。
なんだか、岩手の猊鼻渓を彷彿とさせます。
少しばかり地元が恋しくなってきました。

戻る際、真名井の滝と反対方向………峡谷入り口の方にも迫力ある滝が見えます。
残念ながら山道は立ち入り禁止のため近くに行ってみることができませんでしたが、二つの滝から作られる五ヶ瀬川をはじめとした高千穂峡を堪能することができたので一片の悔いもなし!

道の駅『高千穂』で一休み
高千穂峡での探訪を終え、近くにある『道の駅 高千穂』でしばし休憩。
この道の駅では高千穂峡の軽い紹介や物産館、レストランなどがあり、休むにはうってつけの場所。
駐車場は少し狭いですが、第二駐車場もあるので停められないという事態にはなりません。
また道の駅周囲には神々を模した様々なオブジェがあります。
こちらは天宇受売命〔あめのうずめのみこと〕の像。
さすがは女神様……美人ですね。
天宇受売命はアマテラスが岩戸に隠れてしまった際に裸踊りを踊って、顔を出すように誘った立役者です。
そりゃ、こんな美人が裸で踊れば同性も気になりますよね。

そしてこちらの顔岩はその天宇受売命……なんだかおたふくのように見える丸顔です。
というのもこの顔は神楽で使われる神楽面。
どうりでまん丸なわけです。

そして、こちらは手力雄命〔たぢからおのみこと〕の顔岩。
手力雄命は天照大御神が岩戸に隠れた際に、その岩戸をこじ開け、天照を引っ張り出したもう一柱の立役者。
牙もあって神というか鬼のような形相ですが、こちらも神楽面によるもの………高千穂は『高千穂の夜神楽』という国の重要無形民俗文化財があり、毎年11月中旬から2月上旬にかけて、夜を徹して三十三番もの神楽を舞います。
いつか生で見てみたいものですね。

高千穂神社
道の駅で休憩をした後は、すぐ近くにある『高千穂神社』へ……。
広い駐車場と大きな鳥居が一際目を引きます。
ちなみに高千穂峡の売店のある所から坂を上がる事で行くことができますが、車通りも多く、時間も掛かるので無理はしないほうが良いです。

先ほど、高千穂の夜神楽は毎年11月中旬から2月上旬にかけて行われるといいましたが、実は高千穂神社の神楽殿ではほぼ毎日、観光用の夜神楽が行われています。
無論、全てではなく神楽の中でも『手力雄』・『鈿女』・『戸取』・『御神体』の 四番ですが、これらは三十三番の中でも日本神話の『天岩戸』の項にあたり神楽の中でも重要な部分とされています。
もし、高千穂周辺に泊まる際はぜひともご覧になってください。

高千穂神社の御祭神は高千穂皇神〔たかちほすめがみ〕と十社大明神〔じっしゃだいみょうじん〕
高千穂皇神とは日本神話における日向三代(天饒石国饒石天津日高彦火瓊瓊杵尊〔あめにぎしくににぎしあまつひこほのににぎのみこと〕、彦火火出見尊〔ひこほほでみのみこと〕、鵜鶿草葺不合尊〔うがやふきあえずのみこと〕)とその妃神(木花開姫尊〔このはなさくやひめのみこと〕、豊玉姫尊〔とよたまひめのみこと〕、玉依姫尊〔たまよりひめのみこと〕)の総称。
鹿児島の霧島神宮と同じということになりますが、ただ一柱………神倭磐余彦尊〔かむやまといわれひこのみこと〕こと神武天皇がいない、という点においては異なります。


もう一つあった十社大明神とはその神武天皇の皇兄である三毛入野命〔みけぬのみこと〕とその妻子神9柱(妃神である鵜目姫命〔うのめひめのみこと〕と、両神の子供である御子太郎命〔みこたろうのみこと〕、二郎命〔じろうのみこと〕、三郎命〔さぶろうのみこと〕、畝見命〔うねみのみこと〕、照野命〔てるののみこと〕、大戸命〔おおとのみこと〕、霊社命〔れいしゃのみこと〕、浅良部命〔あさらべのみこと〕)の総称とされています。
三毛入野命は『記紀神話』にて浪穂を踏んで常世国(海の向こうの理想郷または黄泉)に渡ったとされていますが、その後の伝承では高千穂に戻って、当時一帯を荒らしていた鬼神の鬼八を退治し、その地に宮を構えたと伝えられています。
ここで先ほど高千穂峡にあった鬼八の力石に繋がるというわけですね。
ちなみに妻である鵜目姫命は祖母岳明神の娘神で、鬼八に捕らわれていたところを三毛入野命に助け出されたという経緯があります。
なんだかスサノヲの八岐大蛇退治に話が似ていますね。

由緒によれば三毛入野命が神籬(神が天から降りる際に依代となる木や岩)を建てて、祖神である日向三代とその配偶神を祀ったことに始まり、彼の子孫が長らく奉仕して、後に三毛入野命をはじめとする十社大明神を追加で祀り、垂仁天皇の時代に初めて社殿を創建したと伝えられています。

夫婦で祀られていることから御利益としては夫婦和合、縁結びに強い効果があるとのこと。
また、本殿と所蔵品は国の重要文化財に指定されています。
そんな莫大なパワーを頂くためか、境内は多くの人で賑わっており、人混みが苦手な私は参拝と境内を散策し終えた後に人知れず去っていきました。

御朱印(300円)を頂く授与所も人が多く、受付するのも一苦労……巫女さんもかなり忙しそうでした。
対応していただき、ありがとうございます。

槵觸神社
高千穂神社を後にし、続いて訪れたのは少し離れた所にある『槵觸(くしふる)神社』
こちらの鳥居も立派なものです。

高千穂神社が人でごった返していたのに対し、こちらはあまり人がおらず閑静そのもの。
こういう静かな神社を訪れたのは久しぶりな気がします。

槵觸神社の御祭神は高千穂神社でも祀られていたニニギノミコト。
一緒に祀られている神として天児屋根命〔あめのこやねのみこと〕、天太玉命〔あめのふとだまのみこと〕、経津主命〔ふつぬしのみこと〕、武甕槌命〔たけみかづちのみこと〕がいます。
御利益としては諸願成就や歌にまつわるもの、武芸に関するものがあります。

元々は鳥取にある『大山』を御神体とする大神神社同様、槵觸山を御神体としており、長らく社殿の無かった神社でもあります。
その理由としては古くから槵觸山は記紀神話における天孫降臨の地とされ、鹿児島の霧島神宮の旧社である霧島神社とともに有力視されていたからです。
神々の降臨した地に社を築くというのははばかられたのでしょう。
また、古来より高千穂神社が春祭りを行っていたのに対し、槵觸神社は秋祭りを行っていました。
このことからも社殿の無かった当時より天孫と密接な関係があったことは間違いありません。

それを象徴するように、槵觸神社周辺には真名井の滝の元となった『天真名井』や八百万の神々が集まって高天原を遥拝したといわれる『高天原遥拝所』などがあります。
私は時間の関係で立ち寄れませんでしたが、槵觸神社に訪れた際にはぜひとも行って見てください。
それにしてもこの階段は長かった……それに拝殿の拝むスペースが狭く、一つ間違えば階段から転がり落ちるかとビクビクしたのは良い思い出です。

そんな槵觸神社には書置きで御朱印(300円)があります。
ただし、高千穂神社に行けば直書きで対応して下さるとのこと。
お金はお賽銭箱に入れれば大丈夫です。

天照が出た岩戸を祀る神社
天岩戸神社東本宮
槵觸神社の参拝を終え、少し時間をかけて辿り着いたのは『天岩戸神社』
古事記にて弟であるスサノヲの乱暴狼藉に耐えられなくなったアマテラスが隠れたとされる岩戸(洞窟)がある場所です。
天岩戸神社には『東本宮』と『西本宮』という2つの社があります。
初めは西本宮の方へ行こうかと思いましたが、駐車場がいっぱいだったため東本宮からの参拝です。

鳥居をくぐった先には巨大なアメノウズメが………こちらは神楽舞の時を再現したものですね。

参道を歩くたび、周囲が清らかな空気で満ちているのが肌身を通して感じられます。
高千穂とはまた少し違った雰囲気ですが、厳かがあります。

東本宮にて祀られている御祭神は天照皇大神〔あまてらすすめおおみかみ〕
東本宮は天照皇大神が天岩戸から出た後、最初に住んだ場所を祀っているそうです。
その天岩戸はこの神社の裏手……崖下にある河原近くの洞窟と伝えられています。

社殿の裏手の道を進み、森の中を歩きます。
この森は整備された遊歩道以外は立ち入り禁止という『禁足地』なので、少し緊張しながら進みます。
こちらの遊歩道は奥にある『七本杉』まで。
七本杉とは根本が一つなのにそこから7本の杉が生えている大変珍しい御神木。
以前までは崖の崩落防止と保全のためにここまで近づいて見ることはできませんでしたが、遊歩道が整備されたお陰でこうして見ることができるというわけです。
ありがたいですね~。
マナーを守って、これから先も見られるようにしていきたいものです。

七本杉まで行く道中には御神木の杉の根本から湧く御神水の水汲み場がありました。
少しここで休憩し、清らかな空気を吸いながら清らかな水を頂きます。
うーん、実に美味しい水です!

東本宮を参拝した後は『天岩戸橋』を渡り『西本宮』へと向かいます。
少し距離がありますが、この雲一つ無い青空の下ならどんなに遠くても行けそうです。
いや~、清々しい!

西本宮
東本宮から西本宮へはお土産屋さんが連なる商店街のようなところを歩いて約10分ほどで行くことができます。
天候や体力に自信のない方は西本宮前に有料ですが、駐車場もあります。

東本宮の鳥居の近くにはアメノウズメがいましたが、西本宮の鳥居の近くにはアマテラスの像が建っています。
造りは道の駅 高千穂にあったアメノウズメと同一のものなので、きっと作者は同じ方でしょう。
しかし、こちらの像も美人……作者の方とは趣味が合いそうです。

西本宮はアマテラスが隠れた天岩戸を御神体として祀っている神社で、岩戸の手前にある『岩戸川』を挟んで対岸に位置しています。
御神体である天岩戸は拝殿裏の遥拝所から神職の方が同行の下、拝観することができます。
拝観時間は午前9時から午後16時40分までの間、30分おきに『休憩所』にて集合した後、案内されます。
拝観料は無料とのこと(寄付のお気持ち箱はあります)なので、ぜひともご覧になってください。

御祭神は東本宮同様、天照皇大神ですが西本宮では大日霎尊〔おおひるめのみこと〕と称されています。
この大日霎尊とは大神としてのアマテラスの名ではなく、本来の名前として扱われています。
境内には『招霊(おがたま)の木』という御神木があり……この木はアメノウズメが天岩戸の前で神楽を舞った際に使った神楽鈴の起源となった枝のもの。
例年春先に白い小さな花が咲き、秋には赤い堅い実を結びつけるそうです。

境内の至るところでは鶏が放し飼いにされていました。東天紅(とうてんこう)という尾の長い種類のものらしいです。
鶏はアマテラスが岩戸に隠れた際にその鳴き声で朝だと勘違いさせ、岩戸を開くのに一役買った鳥です。
そのため、古来から太陽を呼ぶ力がある鳥と神聖視されたようです。
神様に仕える立派な鶏のため、いたずらは厳禁です。

しかし、境内がよく掃き清められており社殿も見ただけで格が違うというのが分かります。
やはり聖地とはこのような場所のことをいうのでしょうね。

天岩戸神社の御朱印(300円)は西本宮にある授与所でいただくことができます。
直書きのものもあるそうですが、書置きのタイプを頂戴しました。
さらにはこの御朱印には天安河原のものも含まれており、一度で二度美味しい気分になりました。
対応していただき、ありがとうございます。

神々の会議が行われた神聖な河原
西本宮から岩戸川を沿って上流へと向かうと天岩戸神話において神々が話し合ったといわれる『天安河原』があります。
天安河原へは遊歩道が整備されており、どなたでも気軽に行くことができます。

鮮やかな緑に包まれた渓流の景観は今でも神々がいるかのような美しい光景を作り出しています。

透き通った淵には魚がいてもおかしくはないですが、この日は一匹もみることができませんでした。
近くに遊漁に関する看板があったのでいるのは間違いないでしょうが……もしかした警戒しているのかもしれません。

緩やかな流れもあれば激しい流れもある……この緩急ある流れが渓流ならではといえるでしょう、高千穂周辺は本当に自然豊かです。

歩いて約10分ほど……ようやく天安河原に到着です。
すごい人だかりのため、列に並んでお参りの順番を待ちます。

近くには無数の石が山のように積まれています。
この石は積み重ねて祈願すると願い事が叶うということで、多くの人達が石を積まれています。

アマテラスが岩戸に籠った際、ここに八百万の神々が集まって話し合いをしていたかと思うとなんだか不思議な気分です。

こちらの社に祀られている御祭神はその八百萬神と思兼神〔おもいかねのかみ〕
思兼神とはアマテラスを岩戸から出す岩戸開きの際にその作戦を考えた神です。
願い事に御利益がありますが、智謀の方に強い効果がありそうです。

こちらの大洞窟は別名『仰慕ヶ窟(ぎょうぼがいわや)』ともいわれているそうで、天岩戸神社西本宮より約500メートルほど川上にあります。
中から見る景色はどこか神秘的なものを感じますね。

元々は社だけあったこの洞窟ですが、いつしか石が積み上がり気が付いた時にはこれほどの規模になっていたのだとか。
実に多くの人々に信仰されているかがよく分かりますね。

天安河原は24時間行くことができるそうですが、夜間は暗く危ないうえ……増水時は通行止めになることもあるそうです。
つまりこうして行くことができたのも幸運によるもの。
ありがたや……。

木々がひしめく天安河原と天岩戸神社周辺を眺めながら、車へ……。
本当に良い体験をさせて頂きました。

こちらが天安河原の御朱印。
良い探訪をありがとうございました。

東洋一のナイアガラへ寄り道
高千穂の地を存分に堪能し、次に向かった場所は少し離れた大分県。
いきなり県外に行ってしまいましたが、車でしか行けないとある場所に行きたかったのです。

それがこちら……『原尻(はらじり)の滝』です。
『東洋のナイアガラ』と称されており『日本の滝百選』でもある『おおいた豊後大野ジオパーク』に認定された絶景です。

近くには吊り橋が架けられており、向こう岸に渡ることでぐるっと一周することができます。
さっそく行って見ましょう!

橋の幅は狭く、ほぼ一方通行となります。
そのうえ、丈夫そうに見えながらも少しのことで揺れる揺れる。
高所恐怖症の方には少し厳しいかもしれません。

ただ、橋の真ん中から臨む原尻の滝はまさに絶景そのもの!
恐怖を乗り越えた先のご褒美ですね。

周囲は田園風景が広がり、その中にポツンと大鳥居があります。
これぞまさに日本のどかな風景。

これほど大規模な滝壺は今までで見たこともありません。
滝壺というより一種の湖ですね。

遊歩道から滝の上流部を間近に見ることができます。
流れがかなり速い……落ちてしまったらあっという間に真っ逆さまですね。

こうして見ると景色に馴染んでいますが、すぐ下は直角の崖……恐ろしい。

上流部にもまた大鳥居が………川の流れの中にある鳥居というのも珍しいですが、涼しげな風景です。

どうやら川はあの水門から流れているようです。
思ったよりも川幅が広く、そして浅い……。

滝に差し掛かる部分にはところどこらに淵があり、魚が泳いでいました。
この魚たちも流れに吞まれたらあっという間に真っ逆さま……命がけです。

上流部の遊歩道は柵がなく景観としては最高ですが、安全面ではやや不安があります。
これは流れのあるところは沈下橋となっており、柵を設置してしまうと洪水時に橋が壊されたり、漂流物が引っかかる恐れがあるからです。
柵を付けないことにより流れによる力を受けない構造になっているんですね。

田んぼの中にぽっかりと空く大穴は自然が作り出した神秘ともいえるでしょう。
膨大な水量は見ていて迫力満点です。

一回りして気付いたのですが、向こう岸には藤の花が咲いていたんですね。
もう少し多く咲けば滝と相まってさらに綺麗になりそうです。

それでは今度は下に降りてみて、滝を近くで見てみましょう。

滝壺周辺はゴロゴロした大小さまざまな石があり、かなり歩きにくいです。
降りる際は歩きやすい靴を履いてきた方が良さそうです。
雨の日とかも滑りやすそうなので注意が必要ですね。

原尻の滝を目の前で……圧倒的な水量から放たれる水しぶきが体を包み込みます。
マイナスイオン過剰摂取ですね。


こうして見るとジュラシックパークに出てくるような場面です。
さすがはジオパーク……岩手の三陸もジオパークとなっていますが、ここまでの規模の滝はさすがにありません。

そんな原尻の滝の近くには不動明王が祀られていました。
滝の近くにはよく祀られていて滝不動とも呼ばれていますね。
安全に訪れることができたことに感謝し、手を合わせます。

原尻の滝のすぐ近くには『道の駅 原尻の滝』があり、休憩にとても便利です。
店内には大分の特産品であるカボスを使った商品が売られていました。
柑橘類が豊富なのも九州地方の魅力の一つですね。

探訪を終えて……
ひとしきり探訪を終えて今回も大満足です。
高千穂は思った以上に素晴らしかったし、原尻の滝まで見ることができたのは幸運でした。
レンタカー返却の時間ギリギリになって延岡市に到着した後は車を返却し、念願達成としてチキン南蛮を持ち帰りで購入。
ホテルに戻ってその味に舌鼓を打ちつつ、この日の夜は更けていくのでした。