日本という国はアジアの中でも特に災害が多い国で有名です。
台風や地震や津波、山火事や土砂崩れ……多種多様な災害が起こり、目にしない年はないとされているほどです。
そんな災害の中でも頻度が特に少なく、発生した際に甚大な被害に見舞われるとされるのが『火山による噴火』です。
有名どころでは桜島や雲仙岳、富士山や浅間山の噴火は特に有名でしょう。
この岩手でも岩手山が1686年と1732年に大きな噴火を起こしており、岩手山の麓では噴火が起こった際のハザードマップが作られているほどです。
岩手山は現在も活動が確認されている活火山で、水蒸気爆発や硫化水素などの有毒な火山性ガスが確認されています。
この日本に住んでいる限り、海でも山でも街でも自然災害から逃げることは不可能といえるかもしれません。
しかし、そんな災害も時には恩恵をもたらし、神秘的な光景を作り上げることがあります。
そこで今回は紅葉時にも楽しめる岩手山が作り上げた特殊な大地をご紹介します。
熔岩が作り上げた黒岩の大地
焼走り熔岩流とは?
焼走り熔岩流とは八幡平市にある岩手山の北東斜面山腹から山麓にかけて広がった約4キロにも及ぶ熔岩流の跡地です。
黒い岩石『含カンラン石シソ輝石普通安山岩』と呼ばれる石に大地が覆われており、真夏では40℃、冬には-20℃にもなる寒暖の極限の大地を作り出しています。
雨が降っても水分が地下に浸透してしまい、いつでも乾燥気味なため植物がなかなか育たず、木々が生えない状況を作り出しています。
それでも、一部のコケ類や松といった植物は生育し、カエルやトンボなどの動物を見ることができます。
その特殊な環境からか焼走り熔岩流は『特別天然記念物』に指定されています。
焼走り溶岩流の歴史
そんな焼走り溶岩流の歴史は近年の研究では1732年(享保17年)頃の噴火によってできたものとされています。
なぜ、そのように詳しく知ることができたかというと従来の山頂部の噴火とは違い、焼走り溶岩流の噴火は岩手山の中腹部に出来た噴火口(寄生火山)から流出したものとされているからです。
この噴火口は現在まで岩手山の東側山腹標高850~1250メートル付近までに複数残っており、登山の際は見ることができるとされています。
アクセス
焼走り熔岩流は駅からタクシーを使った方法と自家用車で行く方法の2通りがあります。
自家用車で焼走り熔岩流を目指すならば国道282号線を北上し『道の駅にしね』を目指します。
そして、すぐ先にある『ファミリーマート西根インター店』さんを左折、道なりに進み、T字路を再び左折、すぐ先にある曲がり角を右折し、そのまま道なりに進むと到着できます。
駅からタクシーを使用する場合は盛岡駅から大更駅までの電車(花輪線)に乗り、大更駅からタクシーを使用して向かいます。
駐車場は焼走りの登山口と出口である『熔岩流展望台』にありますが、広さとトイレもあるという好条件から焼走り登山口の駐車場がオススメです。
焼走り熔岩流近くには先ほど紹介した道の駅にしねのほか、キャンプ場や天文台、温泉などがある『岩手山焼走り国際交流村』などもあり、レジャーとしても楽しめます。
探勝レポート
それではさっそく探勝したいと思います!
今回はセオリーとして焼走り登山口からのスタートです。
登山口入り口には焼走り熔岩流の説明書きがあります。
ここで全部を記載するのは膨大な量になりますので割愛とさせていただきますが、この地は宮沢賢治も訪れたことのある縁の地でもあったようですね。
こちらは焼走り熔岩流の概要が記されています。
自然観察路の距離やおおまかな地図も記載されているので、こちらで確認してから行きましょう。
こちらは注意書き……動植物の採取やペットの進入禁止、ゴミの持ち帰り等、景勝地でおなじみの注意書きがある中『熔岩の持ち出しは法律で禁じられています』と一文が。
焼走り熔岩流の熔岩は大小様々なものがありますが、これらは全て天然記念物なので絶対に持ち帰らないようにしてください。
それではいよいよ焼走り熔岩流へ足を踏み入れます。
階段を上った先、その光景は……
一面、黒い岩に覆われた広大な地が広がっています!
鉄のポールと鎖がより無骨さを際立たせていますね。
辺り一面、広大な熔岩流と青い空が広がっています。
周りに緑はなく、遠くの山がよく映えます。
岩手山側はまだ木々が近くに見えますが、やはり近くには一切の緑はありません。
足元にある熔岩をよく観察してみましょう。
結構、大きいですが見た目ほど重くはなくかなり軽いです。
特徴としては軽石に似ていますが、表面にはいくつもの小さな穴が空いており、ほとんど空洞に近い印象を受けました。
石もゴツゴツしているうえ、ところどころに鋭さがあり、手を切っても不思議じゃありませんでした。
しばらく歩くと熔岩流の中に枯れ木のような植物が……このような環境でも針葉樹系は生きられそうですね。
岩手山側の方では立派な松とコケ類が自生していました。熔岩流が流れた後に生えてきたものでしょうが、それにしても立派に育ったものです。
逆に水はけの良さが良い方に作用したのでしょうか?
この熔岩流を生み出した岩手山本人のご登場です。
遮るような高い木々もないため、雲の影まではっきりと分かります。
この光景と合わせるととても雄大ですが、遮るものがない反面……逆光の影響をモロに受けています(T_T)
少し経ってから再挑戦しましたが、私のカメラの腕ではこれが限界でした……(T_T)
それにしても歩けば歩くほど……これほどの熔岩流が流れたことに言葉を失ってしまいます。
こんな広大な熔岩に追われたら……巻き込まれてもおかしくないですね。
こんなことを言っては不謹慎かもしれませんが、あの世への道といっても不思議じゃありません。
多くの人達はあまりにも途方もない道に途中で引き返してしまいます。
距離としては約4キロと広大なうえ、熔岩だらけの道は非常に歩きにくく、何度も足を取られ転びやすいです。
そのため、サンダルなど素肌が見える履物は足を切りやすく、柔らかいスニーカーなどは足を痛めやすくなります。
焼走り熔岩流を散策する場合はブーツなど固くて丈夫な、出来ればくるぶしまで守ってくれる靴を履くことをオススメします。
焼走り熔岩流の後半地点です。
向こうに見える森へ行けば出口となりますが、出口まで行った場合……今度は道路沿いを登山口まで戻ることになりますので、ほどほどに楽しむ場合は途中で引き返すのが無難です。
焼走り熔岩流では鳥や虫のさえずりもなく、ただただ風を切る音だけが聞こえます。
たまに爆発したかのような音が聞こえるのは近くに自衛隊の演習場所があるのでそのためです。
噴火をする兆候ではないので安心してください。
本当は最後まで行ったのですが、出口付近の写真は撮り忘れてしまいました……申し訳ありません。
出口には展望台と宮沢賢治の詩が刻まれた石碑があります。
おわりに
焼走り熔岩流は大地の雄大さと岩手山の噴火の歴史を知ることだけでなく、自然本来の風の音も楽しむことができます。
また、個人的には熔岩流の歩きづらさと距離の長さから足腰を鍛えるにはうってつけの場所だと感じました。
部活の強化合宿などで国際交流村に泊まるのもアリだと思います。
焼走り熔岩流は基本年中無休で四季を通じて楽しむことができますが、雪の多い冬季などは閉鎖されることがあるようです。
私がオススメする時期としては秋の紅葉シーズンがオススメです。
皆さんもこの秋はカメラを片手に風の音を聞きながら、岩手山と向き合ってみてはいかがでしょうか?