おばんです、シードルです。
2月26日に出火した大船渡市の山林火災……。
様々な条件が重なり、その規模は被害が甚大な平成以降、日本で最大規模なものへとなってしまいました。
本日、3月5日は岩手県内全体が雨雪の天気となり、この恵みの雨と雪が火災を鎮火してくれることを祈るばかりです。
もはや人の手には余る災禍……自然の力に頼るしか早期に終わらせる方法はないでしょう。
避難に関しては思っていたよりも早くできたことにより、人的な影響は少ないですが、それでも避難所にいる方々はこれからの不安や急な避難生活……また季節に伴う体調の変化と色々と心配が尽きないと思います。
体には十分にお気をつけください。
しかし、今回の火災は色々なものが重なってここまでのものになってしまったと思います。
火災が起きる前から三陸沿岸地域は雨や雪があまり降らず、空気が乾燥している状態でした。
実際に大船渡市以外にも陸前高田市や宮古市でも火災が起きており、いつ起こっても不思議ではない状態だったでしょう。
なんせ、全国的に大寒波に見舞われて災害級の大雪という中、三陸沿岸地域全体は不自然なくらいに気温も高く、晴れていました。内陸に雪が積もっていてもです。
これは土地柄で仕方のないことなのですが、元々沿岸地域はあまり雪が降らない土地です。
理由としては内陸と沿岸の間には『早池峰山』や『五葉山』を含む、広大な『北上山地』があり、ほとんどの雨雲や雪雲がこの山地に阻まれるからです。
それ故にその手前にある『北上川』が流れる盛岡市や花巻市、北上市などは岩手と秋田の境にある『真昼山地』と『北上山地』に挟まれた状態でできた『北上盆地』なので、雪や雨が降りやすくなっています。
そのような条件により沿岸地域は積雪量は少ないですが、夏には太平洋から吹く冷たい風『やませ』の影響で冷涼な気候となっているわけです。
それでも、今年の降雨や降雪は例年に比べて少なかったと思います。
花巻市の『たろし滝』が凍らずに崩れたり、盛岡市の『岩洞湖』の氷上ワカサギ釣りが過去一でもっとも遅く解禁されたことからも分かると思います。
もし、まだ雪や雨が少しでも早く降っていたら山林火災は起きなかったでしょう。
また、沿岸地域特有の環境も重なってしまったことも要因の一つです。
三陸沿岸はリアス式海岸で『三陸ジオパーク』といわれるほど、地層や岩石があります。
並みの植物では育つことができない環境…そんな環境に適して成長することができる木というと……それは『松』です。
岩肌や崖……さらには海からの防風林的役割で植樹された松が海沿いにはたくさんあります。
アウトドア好きの方ならご存知かと思いますが、松は植物の中で油分が多いことで有名。
火おこしでは松の木はもちろん、樹皮や松ぼっくりまで……使うと驚くほど早く点火できます。
また、葉っぱもトゲトゲしており広葉樹のものに比べて面積が少なく、燃え移りやすいです。
そんな材料のある中、海辺ならではの強風が乾燥も加わって火の手が瞬く間に広がったと考えられます。
山では同じく燃えやすい針葉樹の『杉』もあるので、増長しているのでしょう。
実のところ、焚火程度の火が木や草に落ちたり、付いたりしたところですぐに燃え移ったり、瞬く間に広がるということはなかなかありません。
これは私もサバイバルキャンプをした時にその身で体験したことなのですが、苦労して火を起こして薪にくべてもなかなか燃え移らずにすぐに鎮火してしまいます。
これは草や木に含まれる水分量や大気中の湿度により、火の勢いがある程度抑えられるからです。
だから、油を使わずキャンプファイヤーで使うような大きな木に小さな火種を灯しても火が点かなかったり、そこらへんの雑草を山のように積んで火を点けても線香の煙のようなものが上がる程度……熟練のキャンプの達人でもこれらに火を点けろ、といわれても難しいです。
逆に初心者や子供でも簡単に火を起こすことができる条件があります。
それは『乾燥』と『面積の少ない材料』『空気』です。
火種を作るのが上手い人が火おこしが上手いというより、火を増幅させて炎にすることができる人が火おこしが上手いといえるでしょう。
晴れた状態や秋などの乾燥している時に枯草や麻紐をほどいた面積の少ない材料に火を移し、吐息や腕の回転などで空気を送り込む……こうすることによって火が炎となるのです。
あとは熱によって生まれる気流などによって火の勢いは材料がある限り、燃え続けます。
山林火災の消火が難しいのはこのような要因により悪化しやすいというだけでなく、熱によってさらに風が強まること……そこから『火災旋風』というつむじ風が発生して火の手がさらに広がることにあります。
また、市街地や住宅街と違って山中ともなれば消防車の入れる場所が限られ、消火する手段が限られます。
もう雨や雪といった天の力を借りるしか事態を早期に終息させることができないのです。
岩手は明日も雪や雨が降るとのこと……この連日の天の助けによって一日も早く火災が沈静化することを祈りましょう。