前回のあらすじ……

沖縄最後の思い出として『おきなわワールド』を訪れた私シードル。
玉泉洞を見学し、フルーツを堪能し、ハブを学び……帰りは五体と心に刻むようにして歩いて、沖縄という土地そのものを満喫。
しかし、出航前夜に喉の違和感を覚え一抹の不安が過る……。
果たして、出航はどうなってしまうのか?
バッドコンディションの中、那覇港へ
4/22日、朝6時……5日間お世話になった『CABIN&HOTEL ReTIME』さんを後にし、フェリーが出航する那覇港へと向かいます。
この日の天気は曇りとイマイチ……ついでにいうと私の体調もイマイチ。
本格的な喉の痛みと鼻水……間違いなく風邪を引いてしまったようです。
恐れていたことが現実になってしまった……しかも、沖縄を出航する日にこの滞在中で一番のバッドコンディション。
幸い、熱はなく鼻水と喉の痛みくらいなので、2日ぐらいはなんとかなりそうですが……これから先は海の上、果たして大丈夫だろうか?
……まぁ、果たそうが大丈夫じゃなかろうが、遠い地でその日暮らしの今の身では『行く』の一択しかないんですけどね。
ただ、酔い止めと風邪薬の服用は効力が倍になって、副作用の恐れがあるためどちらか一つしか選べません。
吐き気を我慢するか、風邪を我慢するか……究極の二択。
とはいえ、どっちを選んでも悪化する結末は変わらないので酔い止めを服用。
物が食べられれば、体力はなんとか維持できますからね。

早朝の街は人が少なく、空気も澄んでいて気持ちが良いものです。
近くの工場の壁グラは沖縄らしい爽やかな絵……私は嫌いじゃないですね。

歩いて5分ほどでフェリーが出航する那覇港へ到着。
早朝にも関わらず、中には多くの人々が……早めの行動はやはり大事です。

今回乗船するのはフェリー『波之上』……こちらは行きに利用した『あけぼの』同様、マルエーフェリーさん所有の船です。
外観などは似ていますが、内装と客室の種類が少しだけ変わっています。
チケットもシンプルですね……これは船の違いか、はたまた出航場所の違いか…。

乗船するまでの間、待合所で待機していましたがその際、とある簡単な質問と軽い荷物チェックをされました。
その内容は『紅芋や空心菜、植物の苗木を所持していないか?』というもの。
「えっ? 国内なのにそういうことあるの?」
私も初めは驚きましたが、これには理由があり…沖縄には九州以北の本土には存在しない植物に被害を与える特別な病害虫がいるため、それらの被害を食い止めるため、とのことでした。
これは法律で規制されており、もし持ち出す場合は事前に許可を得てから消毒などの必要な措置を行わなければならないとのことでした。
ただし、紅芋タルトなどの加工したものに関してはOKとのこと……いや~勉強になります。

タメになることを知ると同時に、船の乗船時間となったので乗り込んだ後に荷物を置き、展望デッキへ……。
船内には千と千尋の神隠しの歌『いつも何度でも』のメロディーが流れています。
やめてくれ……泣いてしまう……。
潤む目に力を込めて最後の那覇の街、港を目に焼き付けます。

天気はあいにくの曇りですが、これはこれで良いでしょう。
涼しいですし、なにより天気が最高なら帰りたくなくなり、もう一泊してしまいそうなので……。

海風を浴び、船内には戻らずひたすら那覇の街を眺めます。
傍から見たらボーっと眺めている変な人に見えるでしょう。
それでも構いません。
最後の最後まで、自分が納得するまで……後悔ないようにやりたいんですから。
沖縄に別れを告げる
あとどれくらいで出航か……そう思っていると、ついに船出を告げる汽笛と煙が!
船底から泡沫が湧き上がり、白波とともに接岸していた船は徐々に岸から離れていきます。
堤防には係の方が手を振ってお見送りをしてくれています。
やめてくれ……私の涙腺はもう崩壊間近だ……。こういう泣けるのは苦手なんだよ……。
手を振る係の人達はかなり遠くに見えてしまってもまだ堤防にいらっしゃる……大抵こういうのは見送ってしばらくしたらすぐ戻るのが定番なのに……。
やはり島の人は温かいですね。
こういう人の温かさを感じることができるのも、飛行機とはまた違った船の魅力。

徐々に離れていく那覇港……涙こそは流さない者の感動によるものか、風邪によるものか、鼻水が止まりません。
花粉症ということにしておきましょう。周囲に花なんて全く無いですが……。

神域のような岩礁を見ると、訪れた波上宮を思い出します。
そういえば、この船の名前も字こそ違えど波上……もしかしたら、あの神社が由来なのか?
単純な時は海の上を走る船だから『波之上』か、と思っていましたが……知見が広がると色々な想像ができて楽しいですね。

那覇の街もみるみる離れていきます。
思えば、この那覇は歩いたり、ゆいレールで巡ったり散々うろついたような気がします。
結構疲れたし、苦労もありましたがそれも良い思い出です。

遠くになり、船の揺れもだんだんと大きくなります。
これ以上、甲板にいるのは危ないでしょう。そろそろ中へ戻ります。
素敵な思い出をありがとう、那覇!

行きはよいよい、帰りは怖い……なんて言いますが、この船旅においては行きは時間の経過が早く感じました。
まぁ、奄美大島と徳之島間以外は2時間ほどで到着できるのですから当たり前ですね。
那覇の余韻を噛み締めている間に船は沖縄北部の本部港へ到着。
……もう少し余韻に浸らせてくれよ。

沖縄南部方面は曇天に覆われ、島があまり見えない状態に……あれは確実に雨が降ってそうですね。
天候を考えれば、この日に出港したのは正解だったのかもしれません。

本部には美しいビーチで有名な『瀬底島』があります。
こちらの島も沖縄旅中でしばしば出ていた『神の島』……今さらだけど、神の島多いな!?

瀬底島と本部を繋ぐ白い橋『瀬底大橋』……近くの浜から撮ると綺麗に映り、インスタ映えのスポットで知られています。
時間が無くて立ち寄れませんでしたが、ここにも寄ってみたかったですね。
いつかの機会……としておきましょう。

荷卸しを終え、いよいよ船は本部港を出発。
これで正真正銘……沖縄そのものと本当にお別れです。
またこの地に来られるだろうか?……もしかすると、もう二度と来られないかもしれない……そんな想いが頭を過るたびに「あぁ、本土に戻りたくないなぁ……」という気持ちが湧き上がってきます。
けれども、自分の中にいるもう一人の何かが「そんなこといつまで思ってもキリがないでしょう! 来られるか、来られないかじゃなくて、またここに来ることを目標に日々を生きれば良い!」と喝を放ちました。
それもそうか、と考え直し……離れ行く本島を眺めます。
思えば行きたい所には行ったし、色々な思い出はできましたが全部をやり切ったわけじゃない……心残りは無いですが、沖縄の全てを巡ったわけじゃない。
生きたヤンバルクイナを見たわけでもないし、豪華なホテルに泊まったわけでもない……それらは次回の楽しみにとっておくとしましょう。
だから、敢えてこう告げます。
ありがとう、沖縄! また、いずれ……!
島々を巡り、本土へ……
沖縄本島に別れを告げると急に疲れが出てきました。
朝も早かったし、風邪気味なのでまぁ仕方ないでしょう。
ただ、客室に戻って他の乗客に移すかもしれないことを考えるとなかなか寝るために戻りづらい……ということで、窓側にあるテーブル席に座ってうたた寝をします。
そんな状態の中、船は与論島の与論港へと到着。

空は暗くてもやはり海は綺麗……これが東シナ海!
太平洋や日本海とはやはり違う……。

与論島を出航し、約2時間後には沖永良部島の和泊港へ。
ここら辺りで空にもようやく青みが……綺麗な空と海はやはり最高!
何枚でも写真で撮りたくなりますね。

海の写真ばかりで船内の写真は無いのか? と疑問に思う方もいると思いますが、今回はありません。
というのもこの『波之上』……船内も『あけぼの』とほぼ変わらないんですよ。
売店の位置も食堂のメニューも……敷いて言うなら『あけぼの』の売店にあった酔い止めが無いことと、自販機のラインナップが少ないことでしょうか?
『あけぼの』には色々目新しい飲み物とか菓子類、カップラーメン等がありましたが、『波之上』はたまたまだったのか、飲み物の種類も少なく、カップラーメン類もありません。(売店にはあります)
乗船前の準備はやはり大事ということですね。

ただ、ほとんど変わらないのは航海中も同じです。
うたた寝したり、船内を散歩したり、海を眺めたり、ボーっと考え事をしたり……見る人によってはつまらないでしょうが、精神衛生上はとても良好です。
スマホもいじることはないので目も疲れませんし、なにより私は鼻をかむので忙しい。
そうこうしている内に船は亀徳港のある徳之島へ到着。
日も暮れに差し掛かり、空は焼け始めてきています。
順調すぎる航海……だって、次の島に行ったらあとは鹿児島港なんですから、体感時間は早いものです。
徳之島を出港後は少し時間はかかりますが、その間に夕食を済ませたり、シャワーを浴びたりなどやることはたくさんあります。
シャワーやトイレといった公共の場は限りある空間にいる時、人の多い時間を避ける……これは今回の旅で学んだことの一端です。
混雑するとトラブルの元ですからね。予防、対処は徹底します。

そんなことをやっている間に船は奄美大島へとやってきました。
前回見た時は早朝で薄暗かったので、明るい内にはっきり見よたのは初めてですね。
本来はこの奄美大島に寄ったら、夜通しかけて航海し朝に鹿児島港へ到着となりますが、時期によればごくまれに『屋久島』へ寄ることもあるそうです。
本当は行って見たかったのですが、あそこはトレッキングが主で標高も意外と高いとのことで断念。
無理は禁物です。

奄美大島を出港後はあとは寝ていれば鹿児島港へ到着するので、寝台列車に近い感じとなります。
私も体調がイマイチなので、早々に床につきました。
これで沖縄の旅は終了……となりますが、せっかく遠くまで来た私はこの後、九州の旅へと移行し、継続することとなります。

九州では一体どうなるのか……この体はどうなってしまうのか?
九州編へ続きます。