前回のあらすじ………

幾度の新幹線の乗り換えを経て、無事に沖縄行きのフェリーに乗り込むことができた私シードル。
船の旅は快適そのものでしょうか?
引き続き旅の様子(まだ沖縄道中ですが…)をご覧ください。
自然の宝庫の島、奄美大島
4/15日、朝の5時……薄暗い船内の客室の中、アナウンスにより起床。
内容によるとどうやら船は『名瀬港』に到着したようです。
マルエーフェリーの鹿児島発沖縄行の航路は18時に出港後は翌日の朝5時より道中の各島々に立ち寄りながら、沖縄の那覇港を目指します。
名瀬港と聞くとあまり馴染みが無いかもしれませんが『奄美大島』といえば、多くの方々が「あぁ」と分かると思います。
色々と有名なものはありますが固有種である『アマミノクロウサギ』は特に有名ですよね。
そんなわけで、初停泊地である名瀬港を見ようと甲板に出たわけですが……

山も海もまだ黒く、空も暗い!
まぁ、朝の5時という早朝ですから仕方がありませんね。
とはいえ、街の明かりは案外賑やかで港自体もかなり大きいです。

失礼ながら、離島というと過疎の中の過疎……というイメージがあり『Dr.コトー診療所』のような場所かと思っていたのですが、背の高い建物もあり、想像よりもずっと都会っぽいと感じました。

恐らく、島の裏側や港から離れた場所はまた違うのでしょうけど、それでも発展しているように見えました。
これも初めての体験、新たな認識の獲得といえるでしょう。
那覇港まで行くにフェリーが立ち寄る港はこの名瀬港を含めて5港……停泊時間は約30分ほど(名瀬港は50分ほど)で、その間に乗船客や荷物、コンテナの積み下ろしを行います。
朝早くから働く作業員の方々には脱帽です。
そうして、出航する頃になると空もだいぶ明るくなり、島の全容もはっきりとしてきました。


思っていた以上に大きい……。
それもその筈で、名瀬港のある奄美大島は沖縄までにある島々(奄美群島)の中でも一番の島面積と人口を有する島。
サーフィンに適した波も多く、サーファー達にも人気のほか貴重な動植物などもあり観光などに力も入れている栄えた離島なのです。

そんな奄美大島に別れを告げて船内へ戻るとちょうど朝食の時間で食堂が開かれていました。
そこで朝食を摂ることに……朝食のメニューは明太子定食、焼き魚定食(サバ)、カレーの三種類のみ。
そのためか、食堂が開かれたにも関わらずあまり人はいませんでしたね。
私はせっかくなので、明太子定食を注文。

味については……普通の定食といった感じですが、副菜にあったさつま揚げがかなりカリカリに揚げられており個人的にはとても好きでした。
そんな朝のひと時を過ごしていましたが、途中から船の揺れが激しくなり、船の窓にも波しぶきが当たるほどに……一時の気のせいかとも思いましたが、他の乗客はおろか船員さん達もふらついて転びそうになる始末。
近くにいたご婦人が「今日は特に揺れますね」と船員に話し、頷いている様子から、こんなに揺れるのは珍しいのでしょう。
酔ってしまったのか私自身もなんだか気持ち悪くなり、申し訳ないと思いつつも食事をそこそこに切り上げ、客室に戻り、酔い止めを服用して横に……。
天気は晴れていましたが、荒れる海の洗礼を受けました。

闘牛と黒糖の島、徳之島
ゴロゴロしながらスマホに撮った航路の画像を見て到着時間を改めて確認。
各港の到着予定時刻としては……
・名瀬港(奄美大島)……5:00~5:50
・亀徳港(徳之島)……9:10~9:40
・和泊港(沖永良部島)……11:30~12:00
・与論港(与論島)……13:40~14:10
・本部港(沖縄本島北部)……16:40~17:10
・那覇港(沖縄本島南部)……19:00
となっています。
この内、本部港は沖縄本島の北部に入るので、フェリーを使って1秒でも早く沖縄に上陸したい方は本部港で下船となります。
那覇港まで目指す場合は19時着のため、宿にチェックインして翌日から楽しむか……あるいは国際通りへ出て飲むか、のいずれかになりますね。
いずれにしてもフェリーで行く場合は本格的な沖縄観光は3日目から……2日間は船中で過ごすことになります。
これは鹿児島に住んでいようが、岩手に住んでいようが変わりません。
帰りも同様の日数を要するため、4日間は移動期間が必要となります。
これを踏まえるとのんびりと時間を使うというのは高級なものを買うよりも贅沢なことなのかもしれません。
また、海上では電波が届かないためスマホをいじってYouTubeを視聴したり、SNSを見たりするというのは基本不可。
音楽や動画を取り込んだり、本を持参したりするというのが必須となります。
私は音楽をあまり聞かないので、旅に憧れるきっかけとなった本……椎名誠さんのエッセイ『わしらは怪しい雑魚釣り隊』を持っていきました。
この本はシーナ隊長こと椎名誠さんが友人や仲間たちと結成した『怪しい探検隊』と島や地方で雑魚釣りをしてキャンプや焚火、メシや宴会を楽しむ様子を記したエッセイで、介護の仕事をして休みの無かった頃は、この本を夜勤中に読んで、島への理想を抱いたものです。(とはいえ隊の行く島は東京にほど近い島などですが……)
あとは私の外出のお供……Amazon Kindle
これは電子書籍を保存し、読むことができる端末ですが、アマゾンプライムのKindle アンリミテッドに入っていると一部の書籍が無料でダウンロードし放題の読み放題となる優れものです。
この中に椎名さんの他の書籍をダウンロードし、この旅の移動時間は有意義に過ごそうという魂胆です。
ゴロゴロしながら好きな本を読む……しかも激しい船の揺れも横になることで程よく揺れて、まるでハンモックに揺られているような感覚です。
そのような状態なので、本を読んで数分で睡魔に襲われ夢の中へ……気が付けば、船内放送のアナウンスで再び目を覚ましました。
次なる停泊地は『亀徳港』……徳之島です。

なんだか聞いたことはあるけど、奄美大島より知っている人は少ないと思います。
徳之島で有名なものとしては『闘牛』と『さとうきび』です。
徳之島の闘牛の歴史は藩政時代以前から続き、その歴史は400年以上!
毎年1月の初場所、5月の春場所、10月の秋場所の年3回があり、全島の各場所で行われるほどの熱狂ぶりです。
ちなみに岩手でも久慈市にある平庭高原にて闘牛が行われています。なんだか親近感が湧きますね。
もう一つのさとうきびですが、「沖縄じゃないの?」と思う方もいらっしゃるかと思います。
確かに沖縄にもさとうきびはありますが、熱心に推しているのはむしろ徳之島といえます。
そんな牛とさとうきびの島である徳之島の亀徳港は名瀬港と比較すると少しこじんまりとしています。

建物も山を超えるようなものや大規模なものもなく、ようやく離島に来たのだな、という実感が湧きます。
甲板に出て、のんびり荷下ろしを眺めたり、屋上に出て海風と太陽をめいいっぱい浴びる……神様もオマケしてくれたのか、天気も快晴とまさに最高な状態。
本当にありがたい限りです。
そうこうしている内に荷下ろしは終わり、出航の時間に……一瞬の立ち寄りでしたが、この美しい光景を忘れることはないでしょう。

鍾乳洞の島、沖永良部島
横になり寝た効果もあってか、体調も少し回復し小腹も空いてきたため売店で菓子類と好物のサイダーを購入。
まだ与論島に着いてはいませんが、一足先にヨロンブルーサイダーをいただきます。

いや~、晴れた空に綺麗な海を眺めながら甲板で飲むサイダーは最高ですね!
サイダーのブルーハワイの色と海の色も一緒……やはり南国の海は伊達ではありません。

朝の荒れはどこへやら……海も穏やかで風もとても心地良い。
徳之島以降の港へはだいたい2時間ごとの航海で順次到着する予定です。
天気や海の状態によっては到着時刻にだいぶ差異はありますが、今回はその心配もいらないようです。
海風を飽きるほどに浴びた後は船内のテーブル席につき、港に着くまでの間は持ってきた本を読む……老後もこうありたいものですな。
そうして、本を読み終わる頃には再びアナウンスがあり、まもなく『和泊港』に着くとのこと。
いそいそと甲板に出て、接岸するその様子を眺めます。

この和泊港を有する沖永良部島は知っている人は知っている島。
主に沖縄方面で釣りをする方々はぼちぼちここから降り始めます。

目立った特産品や固有の目立った種というのはあまり知られていませんが、この島は石灰岩によるカルスト地形を呈した鍾乳洞の島。
地下には多数の洞窟があり、そのうちの一つ『昇竜洞』は日本三大鍾乳洞の一角、山口の『秋芳洞』にも劣らぬ規模とのこと。
余談ですが、その三大鍾乳洞の一角には我らが岩手の『龍泉洞』もあります。

しつこいようですが、なんだか親近感が湧きますね(二回目)
さらに補足するならば、この沖永良部島……ハブはおろか陸生の毒蛇が生息していない、とのこと。
毒蛇が苦手な方にはまさにうってつけの島というわけですね。
ちなみに、あくまで『陸生の毒蛇』は……とのことなので、海のサンゴ礁にはエラブウミヘビというハブの約10倍の毒を持っている蛇がちゃっかり棲んでいます。
もっとも、こちらの蛇はハブほど好戦的ではなくおとなしく、あまり人を噛まない蛇とのことですのでご安心ください。
そんなこんなで、この島での荷下ろしもほどなくして終わり……船は再び何事もなく出航しました。

鹿児島最南端の島、与論島
港を出てしばらくすると、船内の食堂昼の部が開かれていました。

本来はここで昼食を摂りたいところですが、今回は敢えてパスします。
というのも、朝からふと思ったのですが、あまり食堂を利用する方がいないんですよね……。
よく見るとみんな自前で持ってきたお弁当や売店のおにぎりや総菜、カップラーメンを食べているような感じでした。
そこで私も見習って売店のおにぎり(わかめ塩おにぎり)を購入し、食べてみることに……するとまぁこれがとても美味しいんですね!
握りたてなのか、ほのかに温かく塩味もほど良く効いていて美味しい!
あっという間に完食です。
余談ですが、沖縄行の食堂は昼でおしまいとなり、夕食については食べることができません。
これは那覇到着時刻と重なり、船内が忙しくなるためですね。
逆に那覇港発鹿児島行きの場合は朝食がなく、昼食と夕食しか食べることができません。
理由はこちらも同様となります。
食堂のメニューに関しては朝は明太子、焼き魚定食、カレーの3種類のみでいずれも700円。
昼食はカレー数種類(唐揚げ、エビフライ付き)に牛丼やうどん類、ラーメンなどが加わって650円~1000円ほど。
夕食は昼食のメニューに加え、とんかつやフライ、ハンバーグなどが付いた定食ものに沖縄そばや鶏飯といった変わり種もあり、ラインナップは豊富。値段は100円~1100円まで様々あります。
時間帯は下り(沖縄行)の場合は夕食17:50~18:40、朝食は6:15~6:45、昼食は11:45~12:15となっています。
興味のある方はぜひ食べてみてください。
食堂はご飯時以外の時間はフリースペースの場となっており、自由に過ごすことができます。
こちらにも衛星放送のみですが、テレビが設置されており見ることが可能……読書ばかりも少し芸が無いのでBSを視聴しながらダラダラと過ごします。
幸せで贅沢な時間………と思うと同時に働き盛りの30代がこんな過ごし方をしていたら、同年代はどう思うんだろう? とふと頭を過りましたが、まぁ関係ないでしょう。
ここは邪魔されない海の上………何もないですが、何にも縛られない自由な空間。

海賊は自由を求めて……なんてワンピースなどでよく聞くフレーズですが、なんとなくわかったような気がします。
そんなこんなで船は次なる島、与論島の『与論港』へ到着。


この島は言わずと知れたサンゴ礁の島。
そして、鹿児島と沖縄の間にある島の中では最後の鹿児島市所属の島であります。つまり鹿児島最南端の島。

私自身、知識が混在していたのですが今まで通ってきた島々である奄美群島と沖縄諸島は別もので、沖縄本島から上のほうにあるのが鹿児島市の奄美群島、沖縄本島から下にある島々が沖縄諸島というらしいですね。
いやはや、勉強になります。
この島では唯一、黒糖焼酎が製造されており銘柄『有泉』はほぼ島で消費され、客人に振舞われているとか。
下戸の私には少々厳しいですな。
そんな与論島は女神『アマミク』と男神『シニグク』が瀬礁に辿り着いたところ、島が浮き上がり造られたという神話があります。
このアマミク、シニグクというのは琉球神話で語られる開闢の神『アマミキヨ』と『シネリキヨ』のことでしょう。
いわば沖縄でいうイザナミ、イザナギのような存在で、沖縄本島のほうでは『アマミチュー』『シネリチュー』ともよばれています。
どうやら、沖縄を含めた奄美群島周辺はこの神々の神話が主となっているようです。
しかし、どの島々も海がとても綺麗ですね。

しみじみとそう思いながらも船は与論島を出航し、いよいよ沖縄本島を目指します。

沖縄北部の地、本部
島から少し離れた時点で沖縄の先端が現れます。

これはテンションが上がりますね!
ここからは洋上でも電波が入ったり、入らなかったりします。

海の上では電波が無く、使えなかったスマホもようやく使えるようになるというわけですね。
実をいうと今までの島々でも、接岸し離れてから約30分ほどはスマホが使用できました。
そりゃ港は陸地なのですから使用できて当然といえば当然です。
どうやら、スマホの電波の有効範囲は港に船が停泊している内湾から少し離れた地点までは有効みたいです。
それを知ることができたため、私はすぐさま今夜の宿を予約。
出発したばかりでは、急に体調不良で中止もあり得るかと思ってしなかったんですよね。
おかげで、何とか沖縄初日に野宿は避けられました。
フェリーには船員は乗船おり、エチケット袋もありますが医務室というものはなく、万が一体調を崩したり、不測の事態が起きた時海上保安庁に連絡して、ヘリや巡視船で来てもらい、近くの島まで搬送するという手筈になっています。
いわゆる、海上の救急車というわけですね。
正直、船での鬼門といえる地点は鹿児島から初めの港がある奄美大島までの間だったので、ここまで来れば取り合えず一安心です。
次の停泊地である本部港近くになると伊江島も姿を見せ「ようやく辿り着いたんだな……」と少し涙腺が緩んでしまいました。

そんな感傷に浸っていると船は本部港へと到着。


言わずもがな、ここは沖縄なので皆さんご存知の通りです。
ただ、本部という地名には馴染みが薄い人もいるかも知れません。
この辺りはダイビングなどで有名で、メジャー観光スポットでは『美ら海水族館』があることで知られています。また、ヤンバルクイナなどが棲む『やんばるの森』などがあるのもこの辺りです。
あまり語ると訪れた時の楽しみが減るのでほどほどにしますが、沖縄の中でも自然が豊富で豊かな地域が本部になります。
沖縄の繁華街や首里城へ行く場合は那覇市が有力ですが、あまりガヤガヤしたくない所には行かず、沖縄の自然を思う存分楽しみたいという場合は本部で過ごすと良いでしょう。
本部では下船する人はいますが、乗る人はあまりいないので荷下ろしが終わり次第、出航となりました。

最終地点、那覇
長かった船旅もようやく最終局面。
あと2時間ほどでいよいよ那覇へと到着です。
自身の抱いた夢が……目標となり、ようやく実現します。
飛行機を使わずとも岩手からここまで来ることができる……その事実をこの身をもって証明できたという自負がふつふつと湧いてきました。
忘れ物はないか、ゴミは無いか……二重、三重に確認し、下船に必要なチケットがあるのも何回も確認し、今か今かと子供のようにソワソワしながら待ちます。
今思えば我ながら幼い子供のようで、大の大人が傍から見れば恥ずかしい行動ですが、そんなことなど気にせず甲板に出て、沖縄を目で追っていたものです。

近年はコスパ、タイパが重視となり飛行機が移動の主流になりました。
飛行機に乗れば日帰りで行けるだけでなく、時と場合によっては飛行機や新幹線を使うよりも安くなるのですから当然ですよね。
そんな状況の中、お金と時間をかけて行くという私のスタイルは非効率といえるかもしれません。
けれども、それによって道中における潮風の香りを感じたり、海の綺麗さに心を打たれたり、島々の美しさを知ることができたのは、この非効率な旅ならではの特権といえるでしょう。
飛行機に乗ってしまえば、風を感じることも海や島々を見ることもできなかったわけですから、それを知ることができたのはこの不自由な体になったことによる怪我の功名ともいえます。
例え、遅くとも効率が悪くともその手段でしか知ることができないものがある………これは非常に良い勉強になりました。
海に沈む夕日を眺めながらそんな思いに耽り、船はいよいよ那覇港へと接岸しました。

初めての沖縄……上陸です!

19時とはいえ那覇市は岩手に比べて比較的明るく感じました。
このまま国際通りへ赴いても良かったのですが、なんせ初めての土地なので油断は禁物……足早に予約したカプセルホテルへと向かいます。

道に迷いながら、ようやくホテルに着いた頃には20時頃……さすがに初日にしては遅いので本日はここまで。
本格的な沖縄巡りは翌日から……一体、なにが待ち受けるのやら。
期待と不安が入り混じる中、私は床に就くのでした。
NEXT……
