宮沢賢治といえば岩手を代表する人物で数々の物語や詩を創作した他、天文や農業をはじめ様々な分野に造詣が深いことでも有名です。
そんな賢治氏は花巻農学校(現在の岩手県立花巻農業高等学校)で教師を務めていたのですが、その学校は現在どこにあるかご存じでしょうか?
それは現在の花巻農業高等学校……ではなく、全く別の場所に存在し、現在は市民の憩いの公園として親しまれています。
今回は意外なその場所の現在についてご紹介していこうと思います。
賢治作品の群像で賑わう公園
概要
花巻文化会館の敷地内にある『ぎんどろ公園』は宮沢賢治が教師をしていた花巻農学校跡につくられた公園です。
ちなみに公園の名前の由来となっている『ぎんどろ』とは、別名『ウラジロハコヤナギ』とも呼ばれるヤナギ科の樹木で特徴として、葉の裏に毛が密生しており、銀白色に見えることからそうよばれているそうですよ。
このぎんどろと賢治氏の関係はというと、彼が愛した木とのことで賢治氏が在職中……農学校がここに新築された際に彼をはじめとした教職員が植えたとうエピソードが伝わっており、今でも元気に繫っています。
そんな賢治氏は教師を務めた4年4カ月のうち、後半の約3年間をここで生徒たちと過ごしました。
現在では賢治作品の『早春』の一節を刻んだ詩碑や『風の又三郎』の石の像群(本郷新第1回野外彫刻賞受賞作品)なども設置されており、春には桜……秋には紅葉、と四季折々で市民を楽しませています。
アクセス
そんな『ぎんどろ公園』は花巻市若葉町の住宅街の中にひっそりとあります。
住宅街の中にありますが、隣には『花巻市文化会館』や『花巻市立図書館』、『花巻市福祉協議会』といった施設があるほか、宮沢賢治の墓所がある『身照寺』もあります。
ルートとして目指すのならば国道4号線から『マルカン』のある花巻商店街を抜け、西へと進み『ぎんどろ公園』よりも『身照寺』を目指した方が分かりやすいでしょう。
車で行くことができますが、住宅街ということもあり、道路幅が若干狭いので注意が必要です。
駐車場としては近隣にある『花巻市文化会館』や『花巻市福祉協議会』の駐車場を利用すると良いでしょう。
ただし、文化会館で吹奏楽の演奏など催しものがある際は駐車場が埋まってしまいますので、そちらも注意しましょう。
道路幅が狭いので路上駐車は厳禁です。
探勝レポート
それではさっそく探勝といきましょう!
今回は『花巻市文化会館』の駐車場に車を停めてスタートです。
『花巻市文化会館』の駐車場は『花巻市立図書館』も隣接されているためか、このようにとても広いのですが、この日は会館で何か催しものがあったらしく、ぎりぎり車を停めることができました。
公園はすぐ隣にあるのでどこからでも入ることができるのですが、今回は正式な入り口となる南面からスタート。
訪れたこの日は春だったためか、桜が咲いており春爛漫な雰囲気が漂っています。
入り口の目の前にはもう一つの駐車スポット『花巻市福祉協議会』の駐車場があります。
こちらもご覧のとおり広いのですが、会館の催しもののためこの日は混雑気味。
ちなみにすぐ近くには宮沢賢治の墓所がある『身照寺』もあるため、お寺に行く際の駐車場所としても便利です。
公園の入り口と会館の間には見事な桜が咲いておりました。
近くの説明書きによるとこの桜はケワイザクラという、花巻農学校ができた当時では珍しい山桜の一種だそうで、賢治氏も絶賛していたとのこと……確かにとても立派です。
近くには宮沢賢治ゆかりの地に立つ案内板もあります。
宮沢賢治ファンの方は聖地巡礼をする際は、この看板を目印にすると良いでしょう。
この案内板あるところに賢治氏の足跡あり、です。
公園内は道も広く作られており、ところどころにベンチも設置されておりウォーキングなどの軽運動をするにはちょうどいい環境です。
遊具はありませんが、こうした広々とした場所と木々があるだけで子供達は自由に遊ぶことができるでしょう。
少し変わった特徴としては碑の数が少しばかり多いことでしょう。
賢治氏の『早春』の一節を刻んだ詩碑、農学校の碑、風の又三郎の碑……そして、農学校の校長先生らしき人の顔が描かれた碑……結構な数があります。
しかし、春の時期に『早春』の詩碑に出会うのは何というか、縁があるように感じます。
さらに公園の中央には一際異彩を放つモニュメントが……これが受賞作品の『風の又三郎』石の像群なのでしょう。
美術館にでも飾られているかのような作品……しかも意外と大きいです。
少し離れた芝生には誰か昼寝をしている人が……と近づいたら、こちらも石像でした。
トランクを枕にして休憩する賢治氏をイメージしたのでしょうか?
遠目から見たら誰か寝ているのか、と正直に驚いてしまいました(笑)
そんな作品を眺めながら奥へと進むと立派な一本のしだれ桜がありました!
花も満開……実に見事です!
真下に行くと雲一つない淡い水色の空を背に桃色の桜がシャワーとなって降り注いでいます。
これほど贅沢で綺麗な景色もないでしょう。
まさに春ならではの光景です。
公園内には他にも水路やトンネル、池など子供達の冒険心をくすぐるものばかりがあります。
幼いころ、こういうところを探検するとワクワクしていたことを思い出します。
惜しむらくは春のためか水路や池に水がほとんどなく枯れていたこと……ここで小魚などがいたらもっと盛り上がりそうですが……現代では水質による健康被害の問題から敢えて抜いているところもあるため、少し残念です。
ですが、時代の移り変わりの中で淘汰されるのは仕方ないかもしれません。
こちらは『花巻市文化会館』……吹奏楽の演奏会などが行われる際、生徒たちは本番に備えて公園で練習を行うそうです。
文学に彫刻に演奏……まさに賢治氏も好きだったものが今なお連綿と繋がっています。
おわりに
桜の花があまりにも見事で肝心のぎんどろの木を見つけるのを忘れてしまいました。
気になっていた方々、誠に申し訳ありません。
公園の名前の由来となったぎんどろは現在も公園内にちゃんと生えていますのでご安心ください。
公園の環境はまさに芸術と自然を愛した宮沢賢治の想いが凝縮された形となっており、彼が理想としていた『イーハトーブ』を縮小して体現していた、といっても過言ではありませんでした。
皆さんもぎんどろの木を探しながら賢治氏の足跡を辿り、その想いを感じとってみてはいかがでしょうか?