前回のあらすじ……

旅の舞台を宮崎から豊後の国、大分へと移った私シードル。
小雨の降る中、八幡神社の総本社である宇佐神宮へお参りを果たし……湯の街、別府へとやってきました。
リーズナブルな料金に素晴らしい出湯の数々……極楽なおもてなしを受け、次に目指すは地獄の湯めぐり。
一体、なにが待っているのか……。
別府の地獄へ
4/29日、朝の8時……通勤通学の方々と一緒にバスに乗り、本日行く場所は別府の名所『地獄めぐり』……この地獄の由来は元禄7年(1694年)に貝原益軒が著した『豊国紀行』で随所に使われたことによるもの。
かつては動物すら近づけず、田畑も熱すぎる温泉により、やっかいもの扱いされて誰も手をつけないでいましたが、温泉付き別荘地の開発をきっかけに温泉給湯の源泉として整備され、徐々に人が安全に近づけるようになると、湯治客が地獄を覗き見するようになり、現在の観光地として開発されました。
そんな別府には七つの名前を持つ特徴的な温泉があり、目で楽しむも良し、その身で体感するのも良しとなっています。

沖縄から続いていた風邪はなんとか治った私ですが、まだ喉が完全ではないため……この地獄を巡って禊の意味も込めて治していきたいと思います。

地獄めぐりの順番は観光案内所などに掲載されているオススメコースの順番で廻っていきます。
オススメコースとしては奥の方にある『海地獄』と隣接する『鬼石坊主地獄』から……。
それではいざ、灼熱の地獄へ行ってみましょう!

コバルトブルーの海地獄
まず始めに訪れたのは『海地獄』
ここは約1300年前、鶴見岳の噴火によって誕生したといわれている場所です。

まだ入り口ですが、もう既に至る所から蒸気が発せられています。
近づくだけで熱い……触れればもちろん大やけど必至です。
ただ、この蒸気で作られた蒸し料理は美味しそう……。

至る所から蒸気や湯が流れているため、敷地内は熱気に包まれとても温か。
池に浮かぶ熱帯性の睡蓮は葉が日本のものより大きく、一目でその特徴が分かります。


そんな池を眺めながら奥へと進むと一際大きな湯気を放つ場所が見えてきました。
近づいてみるとコバルトブルーに染まった温泉が……こちらが海地獄です。

ゆっくりと眺めたいところですが、まずは近くにある神社へ挨拶がてらのお参りを。
こちらの神社の手水舎はなんとお湯!
温泉神社らしい趣向ですね。

地獄というより天国のような美しいコバルトブルー。
この青色は、温泉中の成分である硫酸鉄が溶けだしたもの。
色合いは涼しげですが、泉温はなんと98度!
しかも深さは200mもあり、落ちてしまったらまさに地獄。
ボッコッボッコ、と心臓の鼓動のように常時熱湯が湧き上がり、発する湯気だけでも汗が流れる熱気です。

近くにある物産館兼資料館の建物の二階から眺めることもできます。
海地獄の熱泉へ伸びている竿の先には名物の温泉たまごが入っており、一階の物産館で購入することができます。
実際に購入して食べてみましたが、黄身は半熟……白身はしっかりと熱が通り、ふっくらとした食感でとても美味しかったです。
この温泉たまごは他の地獄では購入できず、海地獄だけで購入することができるのでオススメですよ!

海地獄の敷地内にはコバルトブルーの熱泉の他に赤褐色の熱泉もあります。
その名も『血の池地獄』
地獄めぐりの中には他にも血の池地獄はありますが、こちらは小規模のもの……ただし、熱さはひけを取らずに一級品です。

もちろん、こちらも立ち入り禁止。
小さいお子さん連れの方はやけどに注意して見守りましょう。

源泉地帯を外れると敷地内は植物園かのような緑に包まれた様相を呈しています。
ここでは温泉の熱気を利用して様々な植物を育てているそうです。

敷地内をグルっと一周すると足湯を発見!
こちらは誰でも無料で利用できますが、足拭き用のタオルは用意しなければならないので、地獄めぐりをする際は持参するかお土産屋さんで購入しましょう。

足湯自体は他の地獄にもあるので各所で楽しむことができますが、ここは人があまり来ないのでゆっくりと過ごすことができます。
見た感じではぬるそうですが、意外と熱く慣れるまで少し時間が掛かりましたね。

泥湯が湧く鬼石坊主地獄
海地獄を後にし、次に向かうは隣にある『鬼石坊主地獄』
地獄めぐりでは各所に入場料があるため、お得に全部を巡ることができる共通観覧券(大人:2400円、小人:1200円)を始めの所で購入するのがオススメです。
ここは733年(天平5)に編まれた『豊後風土記』にも登場しており、灰色の熱泥が沸騰する様子が坊主頭に似ている事が名前の由来となっています。

敷地内には泥だけでなく岩から蒸気が出ている箇所もありました。
岩と泥の熱湯……これがここの地獄の特徴ですね。
こちらは『鬼の高鼾(おにのたかいびき)』
ここには鬼の伝承があり「むかしむかし鶴見颪(おろし)の寒さに震え上がった鬼たちが石の布団にくるまって高鼾のうたた寝をしてるんだとさ」とのこと……鬼ですら震えあがる寒さとは一体……。

ポコポコと音を立てながら沸騰する様子は、つい見入ってしまうほど不思議な光景。
敷地内には海地獄にもあった足湯はもちろん、地獄では唯一の浸かって入ることができる温泉『鬼石の湯』(別途有料)があります。

最後はお土産や温泉で締めたいという方は敢えて逆のルートで巡るのも良いのかもしれません。
入り口傍には自作で蒸し料理を作ることができる『蒸し場』もあるので、ぜひともご賞味ください。
私は海地獄傍で売っていた温泉饅頭を購入。
小ぶりでしたが、蒸したてを頂き、温泉成分と甘味を同時に堪能することができました。
もちろん、美味しかったですよ!
地獄の街角、かまど地獄
鬼石坊主地獄を後にし、少し市街地方面へ歩くと続いてあるのは『かまど地獄』
釜の上に乗った地獄の鬼が目印です。

この地獄にはさまざまな湯池があり、1丁目~6丁目とそれぞれ区分けされています。
敷地内には熱泥のほか……

小規模の海地獄もあります。
しかし、一カ所でこれほど様々な温泉があるのも珍しいですね。

かまど地獄の名前の由来は氏神の八幡竈門神社の大祭に、地獄の噴気で御供飯を炊いていた事からきているそうです。
龍をかまどの蓋で抑えている鬼が勇ましい……。

ここは地獄の中でも噴気が盛んで、至る所から蒸気が出ています。
そのため、歩くだけでも体がかなりポカポカしてきます。

足湯はもちろんのことですが、かまど地獄では蒸気や湯泉を利用した様々な体験ができます。
こちらは座るだけで地熱により体が温まるベンチ。
温まると表現していますが、実際にはかなり熱いです。
サウナ好きの方なら長く居られるでしょうか?

こちらは飲む温泉『飲泉』のコーナー。
紙コップは1個10円で購入することができます。
80℃の源泉垂れ流しの温泉は飲むだけで代謝や喉、皮膚炎や美肌に効果があるとか……。
ちょうど喉を患っていた私も試飲。
味は温泉特有の酸っぱさ……そして、80℃の熱湯によりますますダメージが!
少なくとも即効性は無いようです。徐々に効いてくるタイプなのでしょう。
あ、ちなみに飲みすぎ注意ですよ。

こちらは温泉の蒸気を直に浴びることができる場所。
温度は100℃……どんどん上がっていきますね。
喉、肌とありましたが、鼻にも効果があるので耳鼻咽頭専門といったところでしょう。
ゆっくりと吸い込んでください、とのことでゆっくり吸い込もうとしましたが、あまりの熱さと蒸気の勢いで何度かせき込んでしまいました。
これほど強力な吸入は呼吸器内科でもそうそう味わうことができないでしょう。
良くなった実感はありませんが、良くなりそうな実感はあります。

砂風呂に見えてしまう泥湯……ここに寝転んで泥を掛けられたらまさに地獄の責め苦でしょう。
岩手では北上の秘湯である夏油温泉に行き、川沿いの50℃近い露天風呂に入ったことがありますが、10秒と持たなかった思い出があります。
常連らしきおじさんがいうには「ここに30秒、1週間通い続けて入ればどんな皮膚病も治るよ」と言ってましたが……まさに納得。
だって強力すぎる熱湯消毒ですもの……そりゃあ菌は滅菌されるでしょう。
ここも入れば、身も心にも巣食った菌を滅することができるでしょうね……命がけですが。

後半に差し掛かると少し白みがかった湯池に到着。
こちらの池は気温や天候によって色を変えるそうです。
本当、色々な温泉がありますね。

奥には本日2回目の血の池地獄。
もう温泉テーマパーク……温泉好きにとっては楽しい場所です。

こちらの地獄では他の地獄とは違い、地獄名物グルメが充実しています。
蒸気や温泉を利用したピータン、肉まん、饅頭、プリン、ソフトクリーム……多種多様にあるので小腹が空いた時は小休憩に良いですね。
私は前半2カ所で食べ過ぎたため、ここでは遠慮しました……。

ワニが見守る鬼山地獄
続いて訪れたのは『鬼山地獄』
針山地獄ではなく鬼山地獄です。

入るとすぐ目の前にあるのは圧倒的な湯量と湯気を放つ透明な熱泉!
今まで訪れた地獄の中でも一段と温度が高いように感じました。
近づくだけでやけどしそうです。

そんな熱泉のすぐそばには誰が彫ったのか分からない石仏が鎮座していました。
ここで直接彫ったのか、はたまた掘ってからここに移動させたのか……どちらにせよ、なぜお湯の近くなのか……執念なんでしょうかね?
心頭滅却すれば火もまた涼し……とはいいますけど、私は無理。

鬼山地獄で湧き出ている湯池はこの1カ所のみ……これだけでは少し物足りないですが、本当の目玉はこれではありません。

ここにも地獄の鬼が佇んでいます。
地獄も半分近く巡ればもはや顔なじみです。

それではそろそろ鬼山地獄の名物を見に行きましょう。
その名物とは……この建物の中に入れば分かります。

建物の中に入るとあちこちにあるのは多種多様なワニの剥製の数々……この鬼山地獄は大正12(1923)年に日本で初めて温泉熱を利用してワニの飼育を開始した場所。
今でも約70頭ほどのワニが飼育されています。
鬼山ならぬワニ山地獄というわけです。

剥製の中には絶滅危惧種に指定されているガビアルの標本など貴重なものもあります。

こちらは世界一の大鰐、初代『イチロウ』のはく製……かなり大きいですね。
こんなのに嚙みつかれたら……生きては帰れません。

湯池から少し離れた場所で飼育されているワニ達を見ることができます。
柵はありますが、刺激しないようスマホを落とさないよう……細心の注意を払って観察しましょう。


のんびりしているように見えますが、隙あらばすぐ襲ってきそうな雰囲気。
心なしか目が合っているようにも感じます。

ワニ山ならぬ鬼山地獄を後にし、少し小腹が空いたので近くの商店へ。
ここでは蒸気を使った蒸し料理を食べ歩くことができます。
種類としては卵やとうもろこし、サツマイモなどがありました。
その中で私はサツマイモをチョイス。
温泉の蒸気で蒸したサツマイモは水分を多く含み、ねっとりとして濃厚な甘さ……不思議なことに食べてもお腹に溜まっている気がしません。
いくらでも食べられそうだったので、自身を律して1個に留めました。
なお、店の人のご厚意で塩なども使っていいとのこと……さすがはおもてなしの街。
観光客の食べかすを貰うためか、スズメがやたらと近づいてきましたね。
あんまり野生動物に人間の物を与えるのはよろしくないのですが……ほんの少しあげました。

空は快晴、別府の山もはっきり映るほど良好です。

白濁に染まる白池地獄
小腹を満たし、そのまま坂を下った先にあるのは『白池地獄』
なんだか屋敷のような入り口です。

中に入ると目の前に広がるのは広大な白緑色の湯池。
こちらの熱泉は今までの地獄と違って湯気も少なく、勢いよく湧き出ているわけでもなく静かです。

敷地内は郷土美術館も併設されている落ち着いた雰囲気の和風庭園となっており、のんびり散策することができます。
紅葉の時期であればなおさら美しいでしょうね。


白池地獄は噴出した無色透明の温泉が、池の底面に落ちる際に温度と圧力が低下することにより、自然と蒼白い色合いになることからその名がつけられました。
つまり温度や天気などによって色が変わる温泉……この色を見ることができたのも幸運ということですね。

他の地獄とは違って静かですが、やはり噴気は点在しているので油断はしないようにしましょう。

こちらの白池地獄では鬼山地獄同様、温泉を利用して熱帯魚を飼育しています。
どの魚も大きい……。これは温泉の力によるものでしょうか?

中には古代に生きた巨大魚『ピラルク』もいます。
ただでさえ、大きい魚体がますます大きくなり圧巻の存在感を放ちます。

白池地獄は上から眺めることができる展望場所があり、そこは恋愛のパワースポットとして知られています。
それはなぜか……実は横から見るとハート型になっているんですよ。
美しい地獄の中に現れる愛の形……それを見れば二人の気持ちはアツアツなこと間違いなし!
温泉だけに……。

白池地獄を後にし、残る地獄はあと二つですが……その場所までは歩いて30~40分とかなり遠い所。
スムーズに行きたい場合はバスやタクシーを利用することをオススメします。
私は訪れた地の記憶を五体に刻み込むため、もちろん歩きで……。
澄み渡る青空の下、別府の街から昇る白煙の蒸気が温泉街らしい風景を作り出していますね。

赤褐色の血の池地獄
別府の景色を眺めながら次なる地獄『血の池地獄』へと到着。
入り口からしておどろおどろしい……。

入り口を入ってすぐの所には血の池の手湯がありました。
こちらはぬるめなのでお子さんでも安心して手を洗うことができます。
ただし、ハンカチなどで手を拭いてしまうと赤い色素が付いてしまうので、注意が必要です。

受付兼売店を通り過ぎて抜けると、そこには広大な血の池地獄が!
とはいえ、血の池地獄は本日で3回目……広いですが、見慣れてくると感動も薄まってしまいます。
血の池地獄は、奈良時代に編纂された書『豊後国風土記』に『赤湯泉』の名で記された、1300年以上前から存在する日本最古の天然地獄。
特徴的な赤い熱泥は地下の高温、高圧下で自然に化学反応を起こし生じた酸化鉄、酸化マグネシウム等を含んだもの……それが地層から噴出、堆積するため池一面が赤く染まるように見えるのです。

傍には薬師如来を祀っている祠が……血の池地獄の熱泥は冷却、乾燥、粉末をすることにより昔から『血の池軟膏』として使われていました。
しもやけ、やけど、ひびわれ、水虫等……各種皮膚病に効果があり、価格は1500円ほど。
ここでしか購入することができないものです。

そんな軟膏売り場の近くには血の池地獄を一望できる展望台へと続く道があります。
湯気がない中で見るとなんだかトマトスープみたいですね。

敷地内には休憩できる場所のほか、広大な足湯も完備されています。
売店も広いので、お土産購入にもオススメ。
品々は血の池地獄らしく赤い物が多々……少し目がしばしばしますね。


熱湯舞い上がる龍巻地獄
血の池地獄を後にし、いよいよ最後の地獄となる『龍巻地獄』へ。
しばらく『りゅうかん』と呼んでいましたが、正しくは『たつまき』だそうです。恥ずかしい……。『るろうに剣心』の観すぎですね。

龍巻地獄は広大な敷地を有する他の地獄とは違い、源泉は1カ所のみ。
その源泉が噴き上がる『間欠泉』が見所の地獄となっています。
売店を出てすぐのところにあるので、どんな人でも気軽に立ち寄れるのが良い所。

平時では湯気もないただの水溜まりですが、ある時間になると……

このように勢いよくお湯が噴き上がります。
まさに龍が天にでも昇るかのような勢いです!
これが本当の龍巻閃ならぬ龍巻泉!
こちらの間欠泉は天然記念物に指定されており、世界でも間欠泉は数多くあれど30~40分間隔と短い周期で噴き上がるのはここだけだそう。
ちなみに間欠泉が噴きそうになると入り口近くにある赤いランプが点滅し、知らせてくれます。

間欠泉には屋根がついていますが、この屋根がなければ約30mほどの高さまで噴き上がるそうです。
しかもこの勢いがすぐに収まるわけではなく約10分ほど続きます。
そおのため、噴き上がる瞬間まで観覧席には人が溢れていますが、ほどなくしていなくなるため、あとから来ても大丈夫です。

間欠泉を最後まで見届け、その後は敷地内を散策。
間欠泉の場所は売店のすぐ近くですが、観覧席の裏手は広大な植物園が広がっているので散歩をするのに最適です。

敷地内にはヤシの木らしき温暖な地域に生える植物や鮮やかなツツジが咲き誇っていました。
いやはや、桃源郷とはまさにここのこと。

鮮やかなツツジを眺めながらふと思ってしまいます。
「今年は桜を見なかったな……」と
特にピンクの花を見るたびにそんな想いが蘇ってくるんですよね。
そういえば、鹿児島の時も同じことを考えていました……自分の行動に悔いはありませんが、時折思い返してしまいます。

とはいえ、そんな桜に引けを取らないほどこの花々は美しい!
地獄には湯が湧き、極楽には花が咲く…………別府には地獄、極楽が存在していました。

龍巻地獄では龍巻農園で採れた柑橘類の生絞りドリンクやソフトクリームが味わえます。
私はせっかくなので大分名物のかぼすドリンクをチョイス。
違和感ある喉にかぼすの酸味と刺激が沁みる!
地獄のような刺激ですが、味は極楽……そして飲みながら、別府地獄めぐりスタンプを押します。
これで七大地獄は全てコンプリート!
記念にとっておきたかったですが、これを投書箱に入れると記念品が当たるかも……とのことで、投函。
とても有意義な地獄観光でした。

別府の街を見下ろす
地獄めぐりを終え、ちょうどやってきた市街地行きのバスに乗り込み、さぁどうしようか……と思案します。
時刻は以外にもお昼の12時ちょっと過ぎ……意外と早く巡り終え、珍しく時間が余ってしまいました。
とりあえず、別府駅行きのバスに乗ったものの……このまま帰ってまた温泉に浸かるのは勿体ない。
そう思っていた最中……私の目の前の前日、宿泊室から見えた『別府タワー』が見えてきました。
少し気になっていたこともあり、バスを下車。このタワーを上がってみましょう。

別府タワーは『別府温泉観光産業大博覧会』の目玉施設として建設が構想され、当時の地元財界人らが設立した『別府観光開発』が2億8000万を投じて建造。昭和32年5月に完成しました。
設計者はいずれも鉄骨構造の電波塔・観光塔の設計を多数手がけ、東京タワーや通天閣なども着手した『塔博士』こと早稲田大学名誉教授の内藤多仲氏。
2007年には国の『登録有形文化財』に指定され、今なお発展しているタワーです。

料金は展望台のみで大人800円、中高生600円、小学生以下が400円。
2階のアートテラスや5階テラスは別料金となっています。
私は展望台のみを利用。
展望台から見る別府の街は……いやぁ~、かなりの圧巻!
これは夜景はさぞ綺麗でしょうね。

美しい砂浜と青い海と空……人々が営みを送る街が見事な調和を果たして美しい。

豊後水道の海……向こう岸にも街が見えます。
あちらの方角は……愛媛でしょうか?
もしそうなら、目と鼻の先に四国があるということですね。

360°の大パノラマ……湯の街というより湯の都でしょう。
別名では『泉都』と呼ばれているそうです。お洒落な名前だ……でも、この景色を見れば納得。

タワー内部にも楽しめる部分があります。
私が気に入ったのがこの回廊。なんだか銀河のようで見ているだけで癒されます。

海と山とお湯と街が共存する地、別府……蒸した料理も美味しいし、人も優しいし、私個人としてはかなり気に入った場所になりました。

湯の街散策
別府タワーを下り、近隣を少し散策します。
海岸線はなだらか……海は穏やか……こういう落ち着いた雰囲気は忙しい現代に必要です。


海沿い近くには公園や駐車場もあり、ゆっくりと過ごすにはちょうどいい場所です。
身を温泉で癒し、心をこういった場所で癒す……色々と疲れたら別府に来ることにしましょうか。

別府駅へと戻ってきました。
別府駅でもお湯が湧いており、手湯として楽しむことができます。
そして、一際目立つ謎のおじさんの像……この人は別府観光の生みの親と言われている『油屋熊八』氏。
米相場で巨万の富を得たり、失敗して全財産を無くし、アメリカへ渡ったり、別府でホテルを経営し、一流のホテルへ成長させたり、ひょうきんな行動とは裏腹にかなり破天荒な人生を歩んだ人。
「生きてるだけで丸儲け」が口癖で別府観光に力を注ぎ、その行動力は「山は富士、海は瀬戸内、湯は別府」のキャッチフレーズを考案して、その言葉を刻んだ標柱を富士山山頂付近をはじめ全国各地に建てて回るほどだそうで……なんというか、この人の人生を見ていると本当に生きているだけで十分なんだなぁ、と思えてきます。
全財産が無くなろうが、旅をして戻ってこようが……行動力は全てを超越する! ということですね。

ホテルへ戻り、温泉に浸かっていると神戸からフェリーでツーリングに来ているという人と出会い、情報交換をしました。
ツーリングを主にする方々は神戸から別府行きのフェリーにバイクを積み、別府から阿蘇山を経由して九州を旅するのが主なのだそうです。
確かに、車やバイクを使えば海岸線の迂回路よりも山を突っ切れるのでかなりの時短になります。
なんせ1、2時間もあれば大分から熊本まで行けるのですから……バイクも良いなぁ。
その後、お風呂から上がって互いの旅の無事を祈り、別れ……こういう一期一会の出会いも異郷の地ならではですね。

色が変わる別府タワーを眺め、この日は就寝。
さて、明日からはいったいどこへ行きましょうか……。