小さい頃からずっとある夢を抱いていました。
それは『日本一周全土を巡る旅』に出ること………。
しかし、その夢は出発直後に持病で頓挫し………

準備してきた計画は病院代と療養期間により、縮小せざる負えなくなりました。
さらには急激な寒暖差も相まって、治ってからも体の痛みは増してまともに動けない日々が続くばかり………そうこうしている内に時間は刻一刻と過ぎ去っていき、日本を一周するには遅すぎる時期となってしまいました。
幸いながら、リハビリがてら列車を使った宮城の旅は成功といっても過言ではなかったため………

車での日本一周には見切りを付けて『どうしても行きたい所に行く』という方向へシフトチェンジ。
その中でも日本一周旅同様に長年の夢であった『沖縄・九州』への旅を決行するに至りました。
実をいうと西日本へは高校生時代の修学旅行で京都まで行ったっきり………そこから西へは行ったことがありません。
そのうえ、持病によって他の方々ができる『飛行機で行く』という交通手段が封じられた状態となっています。

つまり、必然的に陸路と海路を使った手段しかありません。
今回は道中も含めた模様をお伝えします。
結論からいうと………飛行機を使わなくても北国から沖縄へはちゃんと行けますよ!
夢への旅立ち
4/14、朝の6時頃………家族の協力の元、車で最寄り駅である『矢幅駅』まで送ってもらいました。

旅の期間が未定のため車をいつまでも駅の駐車場に置いておくわけにはいかない、という判断からです。
この矢幅駅から新幹線の出る『盛岡駅』に行き、7時11分発の新幹線に乗って『東京駅』へと向かいます。

ここから辺りの時間帯は前回の宮城の旅と一緒。乗る新幹線も一緒なので特に困ることはありません。
しかし、平日にも関わらず指定席特急券は相も変わらず満席状態………朝ごはんを席で食べようとしても隣の方が気になり、そこそこで終らせました。

今回の行程としては7時頃に『はやぶさ4号』に乗車して盛岡を出て、10時近い頃に東京駅に到着。そこから『のぞみ65号』に乗り換えて、13時42分に広島に到着し、さらに鹿児島中央駅行きの『さくら555号』に乗り換えて、16時30分頃に鹿児島へ到着する予定です。

JR東日本、JR西日本、JR九州と3つの管轄区域を乗り継いで向かうことで一日で日本の端から端まで行くことが出来るんですね。
今の時代は本当にすごい! そして、感謝ですね!(飛行機なら日帰りできる、というハナシはこの際、目を瞑ってください)
ただ、東京から広島へ乗り換えるのはともかく………広島から鹿児島行きへ乗り換える時間はわずか3分ほどととてもシビア。
少しでも迷って乗り遅れたりしたらアウトです。(鹿児島から沖縄へ行くフェリーが18時発のため、一本でも乗り遅れたら間に合いません)
そのため、前もってチケット取り寄せサイトで購入しました。
フェリーの予約も事前予約のため、強制的に後戻りはできない状態。
新幹線のチケットで片道59,620円、乗船の片道で16,350円………合計で75,970円。
一つでもミスればそれがパーになるわけですから、無駄に緊張します。
けれども、これも旅の醍醐味。
それに道中は綺麗な富士山や浜名湖も見ることが出来たので、それはそれで良しでした。


ただ、合計約9時間………しかも出発時の岩手は激しい雨と寒さでしたが、東京では晴れ、鹿児島では曇りで暖かかったため気圧と寒暖差も激しく、強烈な偏頭痛に襲われました。

こんな状態で果たして大丈夫なのか?
とにもかくにも、なんとか無事に鹿児島へ到着。

杞憂していた広島での乗り換えも同じホームだったため、3分どころか10秒ほどしかかかりませんでした。ありがたい。
沖縄行きのフェリーの出航は18時のため、16時30分頃に着いてから時間はまだ1時間半ほどある………と余裕をこきたいところですが、初めての土地、初めてのフェリーのため、万全を期すために出港地である『鹿児島親港』へタクシーで向かいます。
結果からお伝えすると………この判断は正解でした。
夕方近くもあって、道路は少々混雑気味………さらには出航手続きも混雑しており、自身の手続きが終わった頃は17時半頃となかなかギリギリでした。
フェリーに乗船する際は余裕をもって手続きをしたほうが良さそうです。
今回、私がお世話になるのはマルエーフェリーさんの『あけぼの』………マルエーフェリーさんは一日おきに『あけぼの』と『波之上』というフェリーが行き来しています。

月によっては鹿児島の方の行事やメンテナンスによって運休となる場合もありますが、基本はどちらかが運行している状態です。

船室は個室のある特等や二段ベッドが四つ完備された1等、見知らぬ方々と雑魚寝をする形の2等の等級があります。
ただし、特等や1等は部屋数が少なく、すぐ埋まりやすいため人の目があまり気にならない方は値段も安い2等がオススメです。

そうしていよいよ、人生初でもあるフェリーへ乗船です!
フェリーに乗り、荷物を置いた後はすぐさま一度は行って見たかった甲板へ………。

フェリーの甲板は思ったよりも高く、海風も強かったため少々怖かったですが、それでも夕暮れに染まる鹿児島の街は美しかったです。
来た時は曇天だった鹿児島の空もいつの間にか青空が見え始め、鹿児島の象徴ともいえる桜島も姿を見せてくれました。

初めて見ましたが、思ったよりも大きい………。
いざ、出航!
色々な光景に感動し、打ちひしがれる中………突如として汽笛がなり、黒い煙が!

どうやら、いつの間にか出航の時間となっていたようです。
白波を起こしながら徐々に港から離れていく『あけぼの』………いよいよ、本土から離れて沖縄へ出発です!


船に乗る前は「もし洋上で気胸が起こったらどうしよう……」「急変が起こったら助からないのでは?」という不安が少なからずあり、かかりつけ医にも念入りに確認するほどの心配をしていましたが………いざ、船が動き出すと「これから沖縄への旅が始まるのだ!」というワクワク感が止まらず、持病の不安など無くなっていました。

意外と人間とはそういうものかもしれません。
この時も「鹿児島だけど海の色は三陸と違って、明るさのある青だなぁ~」と呑気に思っていたほどです。
やがて、鹿児島の街も桜島も見えなくなって辺り一面が海となった頃にようやく船内へ戻りました。


そうして、今度は船内の探検です。
やはり、いくつになっても目新しいものがあれば、探りたくなるのが人間の性。
せっかくだからと隅から隅まで探索しました。
まず一階の出入り口付近にあるフロントのインフォメーション。

何かあった時や不明な時はここに来ればまず安心です。
ただし、出航してからしばらく経つと誰もいなくなります。
というのも海の上………洋上に出ると意外と船が揺れて場所や状況によっては立っていられないほどになるんですね。
ですから、停泊中は誰かかしらはいますが、出航中はほぼ無人となります。
カウンターには船酔いなどで具合が悪くなった時用にエチケット袋があります。
そんなインフォメーションの隣には旅には欠かせない売店が隣接。

販売されているのはアイスや菓子類、ツマミや少々の雑誌………変わったもので御朱印ならぬ御船印まで販売されていました。
御城印といい、朱印の種類もここ数年でだいぶ増えたものです。
そして、エントランスにはフェリーの航路と途中立ち寄る島々の上り下りの発着時刻が記載された地図もありました。

こうして見るとどれも魅力ある島々の数々………今回は沖縄本島のみですが、年をとって時間とお金に余裕が出来たら、行って見たいものです。
この他、一階には特定の時間に開かれる食堂やアイス、ジュース、アルコールをはじめとした自販機(タバコはありませんよ)……その自販機の傍には甲板と海を眺めることができるテーブル席などがあります。
二階の場合は海を眺めることができるテーブル席が中央階段を隔てて左右にあり、その一カ所にはテレビもあります。
もっとも、洋上では地上の電波は届かないので地上波デジタル放送ではなく衛星放送のBSなどになります。
私の時はアメリカの野球中継やドキュメンタリーなどでしたね。
一応、字幕はありますが人によっては退屈するかもしれません。
これらのほか二階は客室をはじめ、トイレやシャワールームなどプライバシーに関わる場所なので割愛とさせていただきます。
それでは、今度は改めて甲板に出てみましょう。
甲板へ出る扉は二階は船の左右どちらにもありますが、一階は売店のある場所の反対側………自販機がある場所のみとなります。

一階の甲板の床は木板となっており、味のあるものになっています。こういうのは個人的に好きですね~!

一応、船内へと繋がる出入口は一カ所のみですが、二階の甲板の通路を経由して反対側へ行くことも可能。
傍には救命のための浮き輪もあるため、万が一海に落ちた時でも安心………ですが、正直海原は広くフェリーの推進力も意外と速いため、誰もいない中もし落ちてしまったらと思うとゾッとします。

よく漂流した話でなかなか遭難者を見つけられない、といったことをよく聞きますが、実際に船に乗って目の当たりにするとその意味がよく分かりました。
続いては二階の甲板です。

二階は一階と違い、船の後方でグルっと通路があり、反対側へ行くことができます。
こちらでは唯一、荷下ろしに使用する台座のクレーンを見ることができます。

停泊した時はここから台座を下ろし、荷物を運び出すのに使うわけです。
ここから見る白波の尾はとても綺麗ですね。いつまでもぼーっと見ていられます。

甲板の展望テラスは一階、二階、三階(屋上)の造りになっています。
それでは今度は三階へ行って見ましょう。
三階は出発時に鹿児島の街を眺めた所となります。

こちらは通路はなく、広場のようになっており何もありません。

遮るものがなく、清々しい限り! と言いたいところですが、実際のところはその遮るものがないため、風がとても強い強い………嫌な気分が吹っ飛ぶどころか体ごと吹っ飛びそうな勢いです。
海の上というのはただでさえ風が強いので、海面から高い位置にあるこの場所は航海中はほとんど強風にさらされます。
危ない、というわけではありませんが体を支えるのがやっと………私自身もここに来たのは停泊中と島が見えた時だけでした。
少なくとも何か被り物をしている人は来るのを控えたほうがいいでしょう。
確実に飛ばされます。
さて、そんな甲板も暗くなったり海が荒れたりすると安全上出ることができなくなります。
出航したこの日は、夜になる寸前ということもあって長居をすることはできませんでした。
この後は食堂で夕食を摂り、あとはシャワーを浴びて寝るだけです。
洋上ゆえ電波も圏外………スマホをいじることができない以上、寝て過ごすしかありません。
スマホ依存と隔絶し、豊かな海と美しい島々の光景を期待し、この日は床に就いたのでした。