町ぶら

悠久の時を経て受け継がれる蒼前詣【滝沢市・盛岡市‖チャグチャグ馬コ】

 6月……東北地方も初夏へと差し掛かり、気温もどんどん上がる日が多くなってきました。

 岩手では6月になると初夏の風物詩『チャグチャグ馬コ』が二つの市をまたいで盛大に行われます。

 馬産地として名を轟かせた岩手名物ともいえるチャグチャグ馬コ……今回はそんなチャグチャグ馬コについて詳しくご紹介していきます!

チャグチャグ馬コとは?

チャグチャグ馬コの概要

 チャグチャグ馬コとは、岩手の滝沢市と盛岡市において毎年6月の第2土曜日に行われる初夏のお祭りです。

 滝沢市にある鬼越蒼前神社から盛岡市の盛岡八幡宮まで、豪華絢爛な馬具装束を身に纏った馬達約100頭ほどが、14キロにもおよぶ道のりを練り歩きます。

チャグチャグ馬コ 田園風景

 歩くたびに馬に付けられたたくさんの鈴が「チャグチャグ」と鳴る音が名前の由来となっています。

 チャグチャグ馬コは昭和53年に文化庁から「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選ばれ、さらに平成8年には環境省の「残したい日本の音風景100選」に選ばれています。

チャグチャグ馬コの歴史

 チャグチャグ馬コの謂われは、和賀郡沢内村の百姓が馬を五月の節句でも休まずに働かせたために馬が怒って逃げ出し、山伏峠を越えて滝沢村の鬼越あたりで死んでしまったので、哀れに思った百姓がこの地を馬神として祭ったのが始まりとされています。

 ただし、チャグチャグ馬コの起源は農民による馬体安全祈願の“蒼前詣”が発祥といわれています。

チャグチャグ馬コ 鬼越蒼前神社
鬼越蒼前神社に参拝する馬コ

 『蒼前』の由来は諸説ありますが、大昔に東北地方に住んでいた病馬の治療や農耕技術の巧みな馬の育成者の名前とされており、チャグチャグ馬コのスタート地点でもある滝沢市の鬼越蒼前神社には農業の神・馬の守り神として男子騎馬像の蒼前様が祀られています。

 蒼前神社の縁日は旧暦の端午の節句(5/5)になっており、元々のチャグチャグ馬コもこの時に行われていました。

 そして、蒼前詣が浸透して近郊からたくさんの馬が集まるようになると、飼い主には馬具などに趣向を凝らす者も現れ始めました。

 やがて寛政の頃になると盛岡を治める南部家から譲り受けた『小荷駄装束』(小荷駄とは戦国時代の頃や江戸の参勤交代の頃、行列の後ろについていた輸送用の馬隊のことで、この頃の装束は軍人駄馬具でした)を着けて参加する馬も現れ、大流行しました。

チャグチャグ馬コ 馬コ装束

 これが現在のチャグチャグ馬コ装束の原型です。

 ただし、この頃はあくまで鬼越蒼前神社内での行事でした。

 次第に蒼前詣の帰りに盛岡の八幡宮へ詣でるようになったのが昭和5年頃からで、その際に当時の秩父宮殿下が盛岡に来られ、盛岡八幡宮まで足を伸ばし、神前馬場での馬揃いを目にしたのをきっかけに現在の行列のルートが出来あがりました。

 さらに26年には『チャグチャグ馬コ保存会』が、39年には『チャグチャグ馬コ振興協賛会』が発足されるなどして、伝統行事として保存されるとともに観光事業として全国的に知られるようになってきました。

 そうして、53年に文化庁から『無形民俗文化財』に選ばれたことで現在に至ります。

 ちなみに『チャグチャグ』ぼ語源は装束に着けられた鈴の音が由来ですが、なぜ鈴を付けるようになったかというとそれはオオカミ避けのためだそうです。

チャグチャグ馬コ 馬コ装束

 首に付けられたドーナッツ型の鳴り輪が、広い場所であれば4キロメートル四方に鳴り響き、架けて馬を追うと「チャグチャグローンローン」という音色を響かせるそうです。

 現代ではオオカミ避けならぬクマ避けに一役買ってくれそうですね。

チャグチャグ馬コの時期

 チャグチャグ馬コの時期は元々は蒼前神社の縁日に合わせた旧暦の端午の節句(5/5)でした。

チャグチャグ馬コ 行列

 この時期は田植え前の重労働が続くので、この日だけは馬も人も仕事を休み、神社の境内で1日を過ごすという風習があったようです。

 しかし、時代とともに旧暦の5/5が田植えの最盛期と重なるようになり昭和33年から新暦6/15に変更されました。

 けれども観光事業の関係でもっと多くの人達に見てもらえるように平成13年から6月の第2土曜日に開催を変更され、現在に至ります。

 昔から「馬コの日には雨は降らない」と言い伝えがあり、それを示すかのようにチャグチャグ馬コの日は雨天での中止がなく、ほとんど快晴での開催となっています。

 時代とともに開催日は変わっているのにここだけは変わらない……岩手における不思議です。

チャグチャグ馬コの行進ルート

 チャグチャグ馬コの行進ルートはその年ごとに若干ルートが変わる場合があるようです。

 しかし、どの年でも決まって一定となるルートが存在します。

・鬼越蒼前神社(出発)

・鬼越蒼前神社~滝沢市役所までの小道(田園地帯は撮影スポット)

・材木町商店街

・盛岡駅周辺

・開運橋

・桜山神社前

・中津川および中の橋

・岩手銀行赤レンガ館

・八幡町

・盛岡八幡宮

 このうち、鬼越蒼前神社~滝沢市役所までの小道、中津川河川敷、盛岡八幡宮では撮影時間や撮影スポットが設けられており、ゆっくりと馬コを撮影することが出来ます。

 ただし、大勢の人が見守る中での行列の写真を撮影したい場合は、以上のスポットに前もっていくことで安定して風景写真を撮影することが出来ます。

チャグチャグ馬コ 櫻山神社前
行進ルートの主要撮影ポイントには記者や取材陣が予め場所取りをしている場合がありますので、それを目印に探すと良い撮影ポイントを見つけることが出来ます。

チャグチャグ馬コの歌詞

 チャグチャグ馬コには「チャグチャグ馬コ」という名前がそのままの民謡があります。

 元となったのは和賀郡大迫地方の「一寸きま」といわれています。

 歌詞が短く、唄いやすいうえにフレーズも覚えやすいものばかりなので、岩手民謡を入門にはオススメです!

馬コうれしか お山へ参ろ

金のくつわに 染め手綱

※チャグチャグ馬コが もの言うた じゃじゃもいねから お入(へ)れんせ

去年祭りで 見染めて染めて

今年ゃ背中の 子と踊る



俺らが馬コは 三国一よ

嫁コしゃんと引け 人が見る

※

五月(さつき)柳の 北上川へ

鈴コチャグチャグ 音がひびく

※

(※は繰り返し)

交通ルートおよび駐車場

 ここではチャグチャグ馬コ当日の交通ルートおよび駐車場について紹介します。

 チャグチャグ馬コの日は滝沢市~盛岡市間で大規模な交通規制が行われ、知らずに通ると渋滞に巻き込まれたり、大きく迂回することになります。

 なお、チャグチャグ馬コのルートはその年により若干の変更が行われますが、大きく基準のルートから外れることはないので、ある程度の予測をすることが出来ます。

 そのため、これから紹介するのはたとえ行進ルートが変わったとしても安定して交通規制や渋滞を避けることが出来るルートです。

交通ルート

 チャグチャグ馬コは馬コの行進時間によって交通規制がかかります。

 だいたいはチャグチャグ馬コがその地帯を通る約1時間半ほど前から規制が徐々にかけられ、30分ほど前になると通行止めとなります。

規制地点行進時間規制開始時間
滝沢市市役所周辺9:30~10:30頃8:00~11:00頃
滝沢市~盛岡市境10:30~12:00頃9:00~12:30頃
盛岡駅周辺12:00~12:30頃10:30~13:00頃
盛岡駅~岩手銀行赤レンガ館12:30~13:40頃11:00~14:10頃
八幡町~盛岡八幡宮周辺13:40~14:00頃12:10~14:30頃
 チャグチャグ馬コの行進状況により若干の時間のズレが発生します

 ただし、行進時間の中には馬コや行列に参加している方々の休憩時間も含まれます。

 そのため、天候や気温……または何らかのアクシデントが発生した場合、時間通りの行進にはならないので注意してください。

主要駐車場

 チャグチャグ馬コ当日の駐車場に関しては行進ルート沿い最寄りの駐車場を利用することとなります。

 出発地点である滝沢市鬼越蒼前神社には一般駐車場はありませんのでご注意ください。

 以下では台数を多く止めることが出来る主な駐車場を紹介します。

滝沢市

駐車場名住所
滝沢市役所駐車場滝沢市中鵜飼55
滝沢総合公園体育館駐車場岩手郡滝沢市鵜飼御庭田1-1
ビッグルーフ滝沢滝沢市下鵜飼1-15
 駐車料金はいずれも無料となっています

 以前は鬼越蒼前神社までは無料シャトルバスが出ていましたが、2022年度はコロナ蔓延防止のため、出ていません。

 また、滝沢市役所やビッグルーフ滝沢はチャグチャグ馬コの行進ルート上にありますので、滝沢市からすぐに盛岡市へ行く場合は、少しルートから外れた滝沢総合公園体育館の駐車場に駐車すると、行進が終わった後でもあまり交通規制に掛かることなく盛岡方面へ行くことが出来ます。

・滝沢市役所駐車場

・滝沢総合公園体育館駐車場

・ビッグルーフ滝沢

盛岡市

駐車場名住所台数料金
盛岡市営岩手公園地下駐車場盛岡市内丸1-55約93台30分/150円
マルフジ内丸盛岡市内丸16-25約100台20分/100円
金田一駐車場盛岡市中央通1-7-30約200台30分/100円
岩手酒類卸駐車場盛岡市肴町4-5約65台30分/100円
MOSSパーキング盛岡市大通2-8-14約268台20分/100円
大通喜の字パーキング盛岡市大通1-5-8約47台20分/100円
志家大駐車場盛岡市神明町9-10 志家約600台60分/200円
盛岡駅西口地区駐車場盛岡市盛岡駅西通一丁目1番5号(アイーナの正面)約459台30分/100円
 盛岡は有料駐車場を利用します

 盛岡市の場合、主に利用する駐車場は有料駐車場となります。

 ただし、周辺施設が充実しているためチャグチャグ馬コの後に観光目的や飲食店の利用がしやすいのが特徴です。

 収容台数が多く停めるのに安心な駐車場は

・MOSSパーキング

・志家大駐車場

・盛岡西口地区駐車場

となります。

 チャグチャグ馬コの行進ルートからはほんの少し外れますが、その分周辺施設が充実しておりトイレの利用やコンビニも豊富なので小さいお子さん連れの家族や高齢者、障がい者の方でも安心して準備や利用が出来ます。

おわりに

 チャグチャグ馬コの主な概要と当日の交通ルート、駐車場について紹介しました。

 この他、チャグチャグ馬コ当日はビッグルーフ滝沢や盛岡駅、肴町アーケードなどでさんさ踊りや馬コと触れ合える等、様々な催し物が行われます。

 稀に珍しいことも起きるので、行列からは目が離せません。

チャグチャグ馬コ チャグチャグワンコ
チャグチャグ馬コの行列の中には馬コに混じってワンコも紛れ込んでいます♪

 動物達と共に季節の移り変わりを体感出来るのも自然豊かな岩手ならではなのかもしれません。

 これから暑い日が続きますが、初夏の風物詩と共に本格的に始まる岩手の夏を満喫していきましょう!

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