ひょっこりひょうたんじ~ま。
このフレーズ、皆さんは聞いたことあるでしょうか?
これは昔、NHK総合テレビで放送されていた人形劇番組『ひょっこりひょうたん島』の主題歌です。
個性豊かな人形たちがミュージカル形式で数々の笑いと風刺、冒険の物語を繰り広げ人気を博したこの人形劇。
実はこの島のモデルとされた場所が岩手県にあります。
今回はそんな岩手のひょうたん島についてご紹介していきます。
震災から復興した大槌のシンボル
概要
岩手のひょうたん島は大槌湾の沖合にあり、陸地と島へは長い防波堤によって繋がっています。
周囲約200mほどの小島で、大小2つの丘が連なった『ひょうたんの形』をしているのが特徴で、江戸時代には『珊瑚島』……その後、元文3(1738)年の巡検の際に命じて盛岡藩主である南部利視(としみ)公が『蓬莱島』と名付け、正式名称となりました。
『ひょうたん島』とは地元で親しまれ、呼ばれている名前のようです。
『ひょっこりひょうたん島』のモデルとされていますが、実はモデルとされている島は他にもあり……
・東京都伊豆諸島八丈島
・瀬戸内海の広島県尾道市と愛媛県今治市にまたがる瓢箪島
・グアム島のオンワードホテル前にある無人島のアルパット島
・山形県川西町上小松にある天神森古墳
……など、様々な場所が対象となっています。
とはいえ、大槌町の蓬莱島がその一つであることは間違いなく……今でも時報では『ひょっこりひょうたん島』の曲が使われ、港内に流れます。
また、島には弁天神社があり弁才天像が祀られており、古くから豊漁と航行安全の守り神として敬われてきました。
昭和28(1953)年には灯台も設置され、付近を航行する船にとって欠かせない存在となりましたが、東日本大震災の津波により灯台が破壊……しかし、奇跡的に弁才天像を祀るお堂は流失を免れております。
その後、灯台は再建され、島は復興のシンボルとして、平成25(2013)年の8月に大槌町指定文化財(名勝)に指定されました。
御祭神・御利益
祀られている神様については以下の表に簡単にまとめてみました。
御祭神 | 御利益 |
弁才天〔べんざいてん〕 | 漁民の守護神 対象:豊漁、航行安全 |
一般に弁才天というと音楽や芸術、知恵や美、財運を司るとされていますが、蓬莱島に祀られている弁才天は少し他とは違うようです。
その理由として祀られている弁才天像は高さ約50cmで8本の腕を持つ八臂(やっぴ)の像とのことで、どちらかというと奈良県の東大寺にある弁才天や滋賀県の竹生島にある弁才天と同じ部類にあたります。
この両者の弁才天の特徴としては女神としての側面ではなく、仏教の守護神としての側面を持ち、戦闘神であるということです。
つまり、悪や邪を退けて守ることに特化しているといえます。
蓬莱島の弁才天にまつわる言い伝えでは近くの浜に流れ着いたものを祀ったとのことです。
東日本大震災では流出は免れましたが、顔が傷つき、衣服が破れ、神社の鳥居は崩壊……それらとともに修復、再建されました。
この状況を見ると災厄を退け、傷つき、汚れながらも復活と再建を遂げるほうに御利益がありそうです。
余談ですが、この蓬莱島……上から見ると『ハートの形』になっているとのことで愛に関する方にも効果はありそうです。
しかし、一方でカップルが弁才天にお参りすると嫉妬されてしまう……とか。
どちらを信じるかは……あなた次第です。
アクセス
『蓬莱島』へは『三陸沿岸道路(高速道路)』を利用するのがオススメです。
ルートとしては『三陸沿岸道路』を走り、『大槌IC』で下りた後……十字路を左に曲がり、大槌川に沿って大槌湾方面(県道26号線)に行きます。
そのまま真っ直ぐに進み『県道231号線』に切り替わってもひたすら奥まで進んで行くと左へ曲がる道が見えます。
左へ曲がったらすぐに右に曲がり、その後すぐに現れる防波堤への道(右)へ入ると蓬莱島のある『赤浜』へ到着できます。
これといった駐車場はありませんが、湾内は広いので邪魔にならない場所に駐車しましょう。
探勝レポート
それではさっそく探勝といきましょう!
今回は防波堤近くに車を駐車しスタートです。
港内は停泊している船や漁具も少なく比較的停めやすい空間です。
駐車線はないためどこに停めても良さそうですが、なるべく邪魔にならず何が起きてもすぐに動ける場所に停めたほうがオススメです。
遠くの方には目的の『蓬莱島』こと『ひょうたん島』が見えます。
それでは島に向かっていざ出発!
こうして見るとかなり遠くに見えます。
防波堤の長さは約340m……この防波堤も東日本大震災の時に一度破壊されたとのこと。
この防波堤を破壊するとは……改めて自然の力、津波の恐ろしさが分かります。
そして、不思議なことに同じ海のはずなのに防波堤を隔てて右と左で波の動きが違うようです。
どうやら長い防波堤のため、外洋(左側)は波のうねりがあるままですが、内洋(右側)は波の力が遮断され凪のようになるとのこと……この現象は天候によって変化が生じるようです。
はっきりと見えた際はラッキーですね。
もっと分かるようにそれぞれを見比べて見ましょう。
こうして見ると内洋が穏やかですね。
大槌は釣りのスポットとしても有名で秋や冬になるとアイナメなどを狙った『ロックフィッシュ』が盛んになります。
確かにこれほどフィールド違うと様々な魚種が潜んでいそうです。
そんな欲望満載の目で周囲を見ながら歩いているといつの間にか近くまで来ていました。
それでは、いよいよ島へ上陸です!
蓬莱島にある白い岩石は、約1億2,000万年前に冷えて固まったマグマからなる花崗岩で出来ており、大槌湾の入口付近はこの花崗岩が分布しています。
一方、蓬莱島から西側一帯は、付加体というおよそ2億数千万年前に海底に堆積し、その後プレート運動にともない大陸側にこすりつけられた岩からできており、それぞれ違いがあります。
また、この蓬莱島は三陸ジオパーク『蓬莱島ジオサイト』として登録されています。
それでは『弁天神社』にお参りしましょう。
こちらが弁才天像が祀られている本殿……残念ながら鍵がかかっており、中には入れませんでしたが、この中に津波を退けた弁才天がいると思うとなんだか緊張しますね。
意外にも社周辺は緑が豊かとなっており、津波で海に浸かったとは思えないほど植物が生えています。
神社から見るとどこか南の海にあるかのような穏やかさがあります。
神社とは反対の岩場には特徴的な赤い灯台があります。
前の灯台は東日本大震災で根元から倒壊。
その後、釜石海上保安部と大槌町が協力し、大槌町在住者からデザインを募集……応募のあった266作品から選ばれたデザインが二代目の灯台となっています。
灯火部分は水平線から登る太陽を表し、大槌の未来を明るくしたいという願い込められ……本体は砂時計をイメージし、時が経てば必ず復興できるいう強い意志を表現されているそうです。
ちなみに高さは再建前より4mほど高くなっています。
灯台の近くにはなにやらオットセイの像と碑のようなものが……。
これは『オットセイの供養塔』
赤浜には昔、オットセイの国際調査基地(昭和26(1951)年)があり、突棒船という調査船で日米加合同で調査を行っていたとのことで、これはその際に調査捕獲したオットセイの供養塔とのことです。
供養塔自体は昭和27(1952)年に建立されていますが、供養塔の球体の塔頭は東日本大震災津波により流出しています。
供養塔からも広大な海を眺めることができます。
近くには小魚の群れが泳いでおり、豊かさを象徴しています。
この島で釣りをする人はいるんでしょうか?
しかし、漁船が頻繁に通るため堤防で竿を出した方が良さそうですね。
おわりに
『ひょうたん島』のモデルとなった島は通り名とは裏腹に津波を退け、漁民達を守る強力な弁才天様が祀られていました。
海水に浸かってしまった場合、植物も枯れてしまう筈ですが島の環境で強くなっているのか無事ということにも驚きを隠せません。
皆さんも蓬莱島を訪れ、弁才天様から守護と再起の御利益を頂いてみてはいかがでしょうか?