自然

姫を捕らえる賊徒の関所【平泉町‖姫待瀧】

 皆さんは『悪路王(あくろおう)』という人物をご存知でしょうか?

 悪路王は鎌倉時代の陸奥国(現在の福島県、宮城県、岩手県、青森県と秋田県の一部)にいたとされる伝説上の人物で、一説には蝦夷の阿弖流為と同一人物……または鬼のモデルともいわれています。

 女、子供をさらい……人々の生活を脅かしていた賊としても知られ、伝承ではあの坂上田村麻呂に討ち取られた、ともされており田村麻呂伝説を彩る敵としても有名です。

 今回はそんな悪路王がさらってきた姫を捕らえたとされている関所のような滝をご紹介します。

大きな淵を携えた滝の関所

概要

 その場所は平泉町にある『毛越寺』から有名なパワースポット『達谷窟毘沙門堂』に行く途中の道路沿いにあります。

 厳密には『髢石(かつらいし)』という名所と『達谷窟毘沙門堂』の間にあります。

 道路沿いにあるにも関わらず、大きな淵と滝を有しており、のどかな小川から急に現れるため、初めて見る方は驚くかもしれません。

 ちなみに『髢石』はこちら▼の記事に詳しく紹介しています。

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昔話

 そんな『姫待瀧』に伝わる話は以下のとおりで、この伝承は『達谷窟毘沙門堂』にある『姫待不動堂』でも知ることができます。

 平安時代の頃、悪路王と呼ばれる人物がこの地域を治めていた。

 悪路王は、京からさらってきた姫君を「籠姫」に閉じ込め花見を楽しんでいた。

 ある時、彼がさらってきた姫君が逃げ出したが、滝のところで悪路王らが待ち伏せていたため、再び捕らえられてしまった。

 その際、悪路王は見せしめに姫君の髪を切り、その髪をかけたのが『髢石』とされている。

 そのため、滝は『姫待滝(ひめまちのたき)』と呼ばれ、のちに不動堂が建てられ、智証大師というお坊さんが、姫待瀧のご本尊としてまつったのが『姫待不動尊』である。(のちに藤原基衡が再建)

 お堂の老朽化が進んだため、1789年、今の境内(『達谷窟毘沙門堂』にある『姫待不動堂』)に移動……現在に至る。

 話の中ではその後、捕らえられたお姫様のその後は記されていませんでしたが、無事に救い出されたのでしょうか?

 この展開は気になり、悪い結末を想像してしまいがちですが、無事に坂上田村麻呂に助け出された、と考えたいところです。

アクセス

 そんな『姫待瀧』は道路沿い……『達谷窟毘沙門堂』の手前にあります。

『毛越寺』から『平泉厳美渓線(県道31号線)』『達谷窟毘沙門堂』方面(一関方面)に向かうと道中にあります

 車を駐車するスペースとしては滝の近くにある橋を渡った際にスペースがあるのでそこを利用するのが良いでしょう。

 ただし、農道に近いので道路を塞がないよう……近隣の方々の迷惑にならないようご注意ください。

 また、スペースといっても若干の土手になっているため、雨あがりのぬかるみや脱輪などには細心の注意を払ってください。

 時間はかかりますが『達谷窟毘沙門堂』の駐車場に停めてから、徒歩で行くと安全です。

探勝レポート

 それではさっそく探勝といきましょう!

 今回は姫待瀧のすぐ近くに車を停め、スタートです。

橋の上から(達谷窟毘沙門堂法目)

 こちらは姫待瀧のすぐ上にある橋の上からの風景。

『達谷窟毘沙門堂』方面はこのように底が見えるほど穏やかな小川が流れておりのどかな雰囲気ですが、橋を隔てると一変……

橋の上から(毛越寺方面)

 いきなり落差がある滝が現れます。

 急にこんな景色が現れたら怖いですよね……私自身、初めてこの光景を目の当たりにした時は言い知れぬ恐怖を覚えました。

 よく冒険物の映画とかで川に流されると滝が急に現れる場面がありますが、こんな感じなんだろうな、と思いました。

 それでは少し下に降りてみましょう。

滝上部

 姫待瀧は転落防止柵や注意喚起の看板などがなく、滝の間近まで近づくことができる珍しい場所です。

 しかし、その反面……落差がある滝ですので、万が一落ちてしまった場合は淵自体も深いので命の危険があります。

 見る場合は安全確認を徹底したうえで、無理しない程度に見学しましょう。

滝上部から橋

 橋が見える部分は川幅が若干広くまだ浅瀬になっていますが、流れが急に速くなっています。

滝上部流れ込み

 そうして急な落差の滝が現れ、そのまま流れ落ちている状態です。

 浅瀬なため、暑い日などは足を浸して水遊びをしたい気持ちになりますが、かなり流れが速いので川に入ってしまうと激流に足を取られて滝に落ちてしまいます。

 くれぐれも絶対に川には入らないようにしましょう!

 このように安全柵などがない場所では少なくとも水辺から1メートルほど離れて見学すると最低限の安全を確保することができます

 1メートルと聞くと大げさに聞こえるかもしれませんが、水辺は濡れ場や泥濘などによってよろけたり、転倒するリスクがかなり高いです。

 万が一、滑って転んでも転落という二次災害を防ぐことができますので度胸試しのようなことはせず、どんなことを言われても安全対策は確保しましょう。

 一生の命と一時の恥……どちらをとるかは言うまでありませんね?

滝壺

 仮にライフジャケットを付けてここに飛び込んだとしても落下の衝撃でタダでは済まないでしょう。

 ここまで入っている私がいうのもなんですが、小さい子が川遊びで入って水難事故が起きたとしても、これでは防ぎようがないですし、いつ発生してもおかしくはないでしょう。

 もし平泉町の偉い方がこの記事を見て下さっているのであれば、早急に侵入防止柵か立ち入り禁止の看板を設置するのを強く推奨します。

 世界遺産に選ばれたのなら過剰なほどの安全措置は必要だと思います。

 さて、それでは滝の全体を見るために今度は道路側へ移動してみましょう。

石碑群

 道路側の橋近くには大きな石碑群があります。

 一見すると田舎ではよくある石碑のように見えますが……

石仏

 石碑の裏側を見るとこのように精巧な石仏が掘られています。

 道路側よりも橋側の方に文字などが刻まれているので、もしかしたらこちらが表なのかもしれません。

姫待瀧 全体

 こちらは道路側から見た姫待瀧の全貌です。

 季節によっては木が生い茂って見えないこともありますが、この日はなんとか全貌を見ることができました。

 遠目から見ても滝の大きさ、淵の深さがお分かりになるかと思います。

 ちなみにここから川辺に下りるには崖を下らなければ、いけないので滝に落ちた人を救助するといった場合でも困難を極めます。

 あまりメジャーな場所ではありませんが、それゆえに気付く人も少ないのでこのような場所では安全対策をしっかり行いましょう。

おわりに

『悪路王』一派が潜んでいたといわれる滝は滝の大きさと淵の深さにより水難事故の恐怖を感じるような場所でありました。

 もしかすると、昔は今よりも規模が小さかったかっもしれませんし、逆に大きかったかっもしれません。

 いずれにしても本当にナニかが潜んでいてもおかしくはないと感じるような場所でした。

 県内随一のパワースポット『達谷窟毘沙門堂』の近くにあるということからも関係しているかもしれません。

 命の安全と事故に気を付け、歴史あるパワーを頂きに皆さんも訪れてみてはいかがでしょうか?

 ただし、くれぐれも無理はしないようご注意ください。

 

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