自然

秘湯に流れる噴煙蒸気の瀑布【雫石町‖鳥越の滝】

 秋といえば、紅葉に温泉、キノコなど……山に人々が集まりやすい季節です。

 新緑の時期とは違い紅葉スポットと呼ばれる場所には人がごった返してスマホやカメラを手に景色を収めようと躍起になっています。

 また、涼しくなる季節ということもあって夏にはなかなか楽しめなかった温泉に多くの人々が集まります。

 この時期ばかりは山もかなりの賑わいを見せます。

 岩手の場合、広大な面積を有しそのほとんどが山林ということも相まって様々な場所が人で溢れかえります。

 有名な場所としては八幡平のアスピーテラインでしょう。

 雄大な山々の紅葉を撮影するために道路の各所では車が止まり、山頂にほど近い秘湯『藤七温泉』にも人が集まります。

 人が集まりすぎてゆっくり楽しめない、という方もいるかもしれません。

 そこで今回はあまり知られていない秘湯と紅葉スポットをご紹介しようと思います。

蒸気に包まれる秘湯の滝

 その場所は雫石町の奥深く……秋田との境目の葛根田渓谷にある『滝ノ上温泉』とその下流にある『鳥越の滝』です。

 滝ノ上温泉と鳥越の滝は十和田八幡平国立公園に属しており、その周辺は滝ノ上園地と称されています。

 葛根田川を中心に形成される葛根田渓谷は大きな岩と険しい谷が特徴で、天和3年頃(1683年)には赤土や金の採掘により一部の人達には知られていましたが、険しい谷の奥地にあるため、金山自体は捨て置かれたとされています。

 また、滝ノ上温泉まで行くには崖ぎりぎりの道を行かなくてはなりませんが、2008年頃にその県道で土砂崩れが起こり、温泉近くにある旅館も休業していたことがあります。

 車で行くことは可能ですが、道路幅がそれほど広くなく落石注意の看板や道路の補修工事中なのもあり、八幡平に比べると交通の便が良いとはいえません。

 ただし、訪れる人はそれほど多くなく、また温泉成分が混じった葛根田川が美しいエメラルドグリーンを作り出しているので、紅葉の撮影ポイントとしては非常に美しいです。

 また、滝ノ上温泉まで行かずとも葛根田川周囲には景勝地『玄武洞』や様々な温泉施設、岩手で有名なアイスのお店『松ぼっくり』などもあり、十分楽しむことができます

アクセス

 県道194号線を葛根田川沿いに上流に向かっていくと着くことができます。

 雫石の町からは約40~50分ほどかかります。

 川沿いはほとんど一本道なので迷うようなことはありませんが、道が狭いのと落石などの危険があるので、運転に不安な方は相乗りやタクシーを利用するのがオススメです。

 私が知る限りバスは滝ノ上温泉までは通っておらず、途中の『滝の上温泉分かれ』までしかバス停がないのでご注意ください

 道中へは途中でいくつかの待避所がありますが、待避所自体も狭いため、路上駐車するのはやめましょう。

 駐車できるスペースとしては鳥越の滝手前にあるトンネル前の堰提、そして道路の最奥にある滝ノ上園地の駐車場が広いのでそこに停めましょう。

 また、紹介した駐車場所は映えスポットにもなっているので撮影するのにもオススメです!

探勝レポート

滝ノ上園地

 それでは鳥越の滝の探勝レポートを始めます。

 今回は、鳥越の滝の少し上流の滝ノ上園地駐車場からスタートです。

駐車場

 川沿いの道を奥まで突き進んでいくと途中で目的の鳥越の滝が見えてきますが、道路は幅が狭く路上駐車には適していないうえ、落石の危険があるので停めるのはやめましょう。

 こちらの駐車場には多数の案内板とトイレが完備されており、休憩をするのにもうってつけです。

トイレ前の案内板

 こちらの案内板は登山者向けの案内板となっていますね。

 ここは東北百名山の一つでもある『三ツ石山』への登山口でもあるため、トレッキングにおける周辺情報や標高などが書かれています。

滝ノ上園地周辺の見どころ案内板

 滝ノ上温泉周囲は十和田八幡平国立公園に属しており、鳥越の滝だけでなく、湿原やブナ林などの自然も豊富です。

 いつかこちらもレポートしてみたいものです。

野鳥案内板

 こちらは滝ノ上園地周辺で見られる野鳥の案内板。

 この日は天気がイマイチだったせいか、私は一羽も見ることができませんでした……(泣)

 皆さんはぜひとも全種類を見つけてみてくださいね!

駐車場からの紅葉

 駐車場からは既に鮮やかな紅葉が見えています。

 紅葉だけではなく、その後ろではなにやら白い煙も見えますね。

 あの煙の正体は……

滝ノ上温泉 噴気の説明

 地下で温められた地下水の水蒸気……噴気です!

 この辺り一帯は八幡平の松川に負けず劣らずの地熱地帯であり、葛根田渓谷のいたるところでは温泉が噴き出ています。

 さらにここからさらに上流にも山中温泉が多いといわれております。

 よく、人も入らないような秘境地帯に赴き、手作り露天温泉を楽しむ方がいますが……ああいうことができるということですね。

 ただし、地熱が多いということは火山活動の活発化に伴ってリスクが大きくなるということです。

 一番多い事故としては硫黄で有名な硫化水素のガスによる死亡事故でしょう。

 また、この辺りの谷はとても険しいものとなっており、古の人々が莫大な富の源である金の採掘を諦めるほどの地であります。

 その証拠に言い伝えとして「剣の如く、塩の如く、油の如く種々ありて、山中の形、田名辺ウソリ(恐山)の如し」と称されるほど……。

 あの山大霊場として名高く、地獄ともいわれる恐山と同等とされているのですから、私としては自作温泉を作るために山の中に入ることはオススメしません(また、国立公園内なので生態系を壊すような行為はやめましょう)

 私は探勝家であって、探検家ではないのでそこまでの危険は犯しません(;・∀・)

岩場と紅葉

 しかし、紅葉に岩場だらけの河原もなかなかに趣があります。

 秋の時期の山は冷えやすいので寒くなるイメージがありますが、滝ノ上園地は地熱に包まれているため、とても暖かいです。

 これぞ、まさに自然の恩恵ですね!

滝観荘からの景色

  ちなみにもっと自然の恩恵を感じたい! という方は駐車場近くにある『滝観荘』の温泉に浸かるのがオススメです!

 滝館荘は滝ノ上温泉の元湯100%を使用した天然のかけ流し温泉です。

 日帰り入浴が主ですが、予約による素泊まりも可能らしいです。

 受付時間は10時~17時となっており、料金は大人700円、子供300円と入湯料が上がり始めている現在でも、とてもリーズナブルです。

 今回、館内の撮影はしていませんが私も実際に入り、そのお湯を存分に堪能しました!

 手軽に秘湯を味わうことができるのでとてもオススメですよ!

鳥越の滝 道中

 さて、それでは本題の鳥越の滝に向けていきましょう。

 駐車場から鳥越の滝へは約5分ほど歩くと到着します。

 その道中では、ご覧のとおり蒸気が沸く川を見ることができます。

 そして、そんな景色を見て歩いていくと……

鳥越の滝

 温泉の瀑布……鳥越の滝へ到着しました!

 無骨な岩肌から上がる白煙……それを背景に流れる湯の滝と紅葉がとても綺麗です。

 贅沢をいうと天気が曇りのためかエメラルドグリーンの水面があまり映えないことですが……これでも十分に綺麗です。

鳥越の滝アップ

 古くは鳥声の滝……とも呼ばれた鳥越の滝。

 何の鳥の声としていわれてたのか……私には想像がつきません。

 鳥で関連するなら、見た目としてカワセミのような色をした滝……ですかね?

鳥越の滝 真上

 こちらは鳥越の滝の真上……蛇行による流れの変化から急激な落差、吸い込まれそうです。

 もし、落ちたらひとたまりもないでしょうね。

鳥越の滝 下流

 こちらは鳥越の滝の下流……ここまで来るとエメラルドグリーンというより鮮やかなブルーの色合いが強いですね。

 なんでも以前は20メートルほどの鎖場を使用して斜面を降り、滝口付近までいけたそうで……滝壺周囲の熱くなった石河原を利用した温泉があったそうですが、現在は柵を設置しており、使えないようにしているとのこと。

 少し惜しい気もしますが、安全対策は必須……命の方が大事です。

 とはいえ、私はその名残どころか柵すら見つけることができませんでした(汗)

番外編

トンネル前の紅葉

 さて、ここからはもう一つの駐車場所……トンネル前の堰提の紅葉をご紹介します。

 まずはトンネル前の紅葉……燃え上がるように鮮やかな紅に包まれています。

 岩肌はあまり見えず、紅葉のトンネルとなっています。

堰提の駐車場

 こちらがトンネル前にある堰提の駐車場。

 トイレはありませんが、砂利場で広いスペースとなっており、車を停めるのに最適です。

 多くの人はトンネルを抜けた先に滝ノ上園地があるため、ここには停めずに

ちらまで行きます。

 そのため、この場所は穴場スポットです。

川と紅葉

 こちらも岩は大きいですが、鳥越の滝周辺の鋭利でゴツゴツした感じはなく、白い岩肌で丸みを帯びており、柔和な雰囲気を楽しめます。

 川の水も青みがかっているものの、透き通っており綺麗です。

落ち葉と川

 一見するとすぐに降りられそうな雰囲気ですが、結構な高さがあるので川へ降りることはああまりオススメできません。

 あくまで、紅葉を楽しむことを推奨します。

おわりに

 滝ノ上園地周辺は大地の脈動を感じながら、紅葉と滝を楽しむことができる希少なスポットです。

 しかし、度重なる土砂崩れや落石があり、しばしば通行止めになりやすい場所でもあります。

 また、硫化水素のガスの濃度が高くなった場合……立入禁止になりやすい土地でもあります。

 そのため、いつでも簡単にいける場所というわけではなく、いつ行けなくなってもおかしくない……そういう意味では一度は行ってみることをオススメします。

 なお、滝ノ上園地周辺は紅葉だけではなく新緑の季節もオススメスポットとなっていますので、初夏の時期にも機会がある際はぜひともお越しください!

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