皆さんは趣味といえばどんなことを思い浮かぶでしょうか?
スポーツ? 筋トレ? 読書? カラオケ?
色々とあるかもしれませんが、古今東西……思い浮かぶメジャーなものといえば『釣り』ではないでしょうか?
釣り、と聞くと若い方は地味で定年退職したおっちゃん達が暇つぶしにやるもの……ろくに働きもしない道楽者が時間を持て余してやること……といった風にあまり良いイメージが付きません。
私は幼い頃から釣りを趣味とし、腕前としては素人に毛が生えた程度のものですが、このことを人に話すと年上から「若いのに渋い」とか、同年代には「地味」とか、女性からは「ダサい」と散々な評価を受けてきました。
私からすればこんな自然豊かな岩手にいるのに釣りをしないなんてもったいない、と思うんですが……。
まぁ、捉え方は人それぞれでしょう。
というわけで、今回は私も一から釣りというものがどういったものなのかと勉強すると共に同志を増やしつつ、布教していこう思い立ったわけです。
てなわけで、今回の『すゝめシリーズ』のテーマはずばり!
『釣り』です!!
釣りについて
釣りとは?
『釣り』とは……そう改めて聞かれたら皆さんはなんと答えるでしょうか?
「釣り竿を使って、エサを付けて魚を釣ること」
そう答える方が多いと思います。
もちろん正解で他に答えようはないのですが、ではその歴史や経緯といったことを知っている方はいますでしょうか?
とはいえ、私もいまいちな部分があるため、改めて調べてみました。
釣りの歴史としては旧石器時代の頃まで遡り、海外では古代中国、古代ギリシャや古代ローマなどの時代から行われていました。
始まりは食料確保のための漁と同等でしたが、次第に娯楽としての要素が強くなりました。
釣りのことを別名『遊漁(遊びとしての漁)』と称するのもそのためです。
中世ヨーロッパではその色合いが濃くなり始め、1494年のイギリスでは世界で初の釣りの入門書まで出版されました(しかも作者は意外なことに女性です!)
1653年にはイギリスのアイザック・ウォルトンによって釣りの聖書ともされる『釣魚大全』という本が出版されています。
1900年にはパリのオリンピックで釣りが競技種目とされ、釣果を競うスポーツとしても扱われました。
なぜ、今のオリンピックにはないのか……悔やまれます。
日本では平安、奈良時代の貴族達の間で娯楽の釣りが行われ、江戸時代の頃から庶民の娯楽として浸透され始めました。
現代ではルアーフィッシングによるバス釣りやコロナウィルスの蔓延により、数十年に一度の割合で流行する傾向があります。
恐らく、見た目がカッコいい釣りや世情により再び流行する時はくるでしょう。
これは確信をもって言えることです。
釣りの種類
そんな歴史を持つ釣りですが、一体どれほどの種類があるのか……細分化すると膨大な数となってしまいますので、ここではおおまかな部分を紹介しようと思います。
淡水釣り
淡水域全般の釣りを指します。
主な場所としては『渓流(源流)』『本流(中流~下流)』といった水の流れがある河川と『池』『沼』『湖』といった水溜まりの湖沼域が含まれます。
水域ごとに住んでいる魚が違い、多種多様な魚種が狙えるのが特徴ですが、それぞれのフィールドに合わせた仕掛けを使用しないと明確に釣果に差が出る釣りです。
海水釣り
海水域全般の釣りを指します。
主な場所としては川と海の水が交じり合う『河口』や湾岸での『堤防』、荒波が打ち付ける『磯』や船などに乗る『沖合』が対象です。
食用の魚を狙う、釣り初心者が釣りの楽しさを覚えるためにはベストな場所であり、場所によっては淡水よりも大物が掛かるのが特徴ですが、釣りの経験値によって釣果に差が出る釣りです。
釣法
釣法とは釣りをするうえでの方法で剣術でいうところの流派ともいえる部分です。
同じ魚を狙うにしても人によってはこの釣法が合わずに魚が釣れなかったり、その反面よく釣れたりします。
そんな釣法からさらに仕掛けを細かく練ることで釣果が劇的に変化しますが、今回は釣りの触りとしてなので、仕掛けについては説明はしません。
もし、釣りに興味があれば以下で紹介する釣法の中から自身と相性の良いものを選ぶと良いでしょう。
エサ釣り
言わずとしれた釣りの代名詞の釣法。
魚が食べるエサを針に付けて魚を釣る方法です。
一般には竿先に糸を付けて近場の魚を釣る『延べ竿』とリールという竿に付ける糸巻きを利用して深場から中距離の魚を釣る『リール竿』、大型のリールと竿を使って遠方の魚を釣る『投げ竿』が主な使用竿です。
魚が食べるエサを付けるので初心者でも簡単に釣れることができますが、生きたエサである虫や小魚が苦手という理由で女性や子供を始めとする若者に敬遠されがちです。
ですが、粉を練ったものやパンの耳、魚肉ソーセージといった私達が口に入れるものでも釣ることができますので、虫が苦手な方はこちらのエサを使うのが良いでしょう。
ちなみに私はウグイを釣る時は安価で自身のおやつにもなるメロンパンをエサにして釣っています。
なぜかミミズよりもこちらの方が食いつきが良いです。
エサ釣りは淡水・海水とも有効な釣法です。
ルアーフィッシング
バス釣りの代名詞ともいわれる釣りで若者を間にブームとなっている釣りです。
生きたエサである生餌を使用せず、魚やミミズに似せて作った金属の板やゴムといった疑似餌とよばれる『ルアー』や『ワーム』を使用して魚を釣ります。
まるで生きているようにルアーやワームを動かして魚を誘って釣るため、アクションやテクニックといった技術が必要な釣りですが、道具を買ってしまえば、いつでもどこでもすぐに釣りができるほか、生餌が苦手な女性でも扱いやすく、ルアー自体もカッコいいので子供にも人気があります。
魚は掛かりづらいですが、大物を釣ることに特化しており力が強く暴れる魚との戦いに陶酔して一気にハマることが多々あります。
リールに『スピニングリール』と『ベイトリール』があり、それぞれで使う釣り竿は違いますが、ルアーはどちらでも使うことができます。
こちらもエサ釣り同様、淡水・海水に有効な釣法です。
フライフィッシング
こちらもルアー同様、疑似餌を使用して釣る釣法です。
ただ、ルアーと違うのは動物の毛や植物、鳥の羽といった水に浮きやすいものを疑似餌の素材として使い『フライ』を使って釣ることです。
仕掛けを投げる時は鞭のように何度も釣り竿を振りながら、重みのある糸を伸ばしフライをポイントに送り込みます。
エサ釣りやルアーフィッシングと違い、全ての道具がとても軽いので体力の少ない高齢の方が好んで使われます。
水面にフライを浮かせて、それに食いつく魚の姿を見ることができるのも醍醐味です。
ただし、エサ釣りやルアーフィッシングと違い、フィールドは渓流や湖といった淡水域に限られ、狙える魚もイワナやヤマメといった渓流魚となります。
テンカラ釣り
特殊な釣法で玄人向けの釣法です。
概要としてはエサ釣りで使われる延べ竿とフライフィッシングの融合。
延べ竿を使用し『テンカラ』と呼ばれるフライを糸の先に付けて川に流して釣る日本古来に伝わる疑似餌釣りです。
玄人向けの理由として警戒心の強いイワナやヤマメを警戒心が高まる疑似餌で釣るほか、重りをつけないために仕掛けが風や川に流されやすく扱いが難しいことがあげられます。
しかし、極めれば少ない道具と少ない仕掛けで美味しい渓流魚を得る術を獲得できます。
フィールドとしては流れがある渓流に限定され、釣る時間帯は日が昇る前や日が沈む頃の薄暗いマズメ時、天気の悪い曇りなどです。
気配を消して木や石に化ける『木化け・石化け』を習得すれば、大物を釣り上げることもできる修練が必要な釣りです。
通常の釣りが武士や侍と揶揄されるならこちらはさながら忍者、暗殺者の要素が強いといえるでしょう。
釣りを趣味にする数々のメリット
アウトドアの趣味として手軽
釣りはキャンプや登山同様、アウトドアアクティビティの面が強いです。
しかも、他のアウトドアに比べて道具を揃える初期費用が少なく済むというのも魅力でしょう。
ましてや、アウトドアといえそこまで体を酷使するといったことがないので野外の趣味を一つは作りたいと考える人にとってはとても最適です。
手軽に自然と触れることができる
水辺で魚を釣るとはいえ、釣りは簡単に自然と親しむことができる趣味です。
風や水を感じ、野生の生き物に触れる……というのはアウトドアならではでしょう。
風の向くまま、気の向くまま……ふらりと出かけて釣り竿を垂らせば、良い気分転換にもなれるでしょう。
「一生幸せになりたいなら釣りをしなさい」
そんなことわざがあるほど、釣りは精神安定剤としても最適なのです。
命について考えさせられる
生き物関連でいえば『命』について考えることができる、というのも魅力の一つです。
自然の中で食べ物を確保する……サバイバルの入門にしても最適です。
自然の中で食べ物を得る行為としては山菜やキノコ採り、野草採取や狩猟などがありますが、山菜は山の管理上、許可が必要な場所もあれば採取自体が禁止とされているところもあります。
かといって、キノコや野草となれば毒があるものに注意しなければならず経験と知識が必要でしょう。
さらに狩猟ともなれば逆に襲われたり、命の危険があるため素人がおいそれと手を出すことはできません。
その点、魚ともなれば淡水では毒を持つものはほとんどおらず、海の場合でもベテランの漁師の方々が身近な港にいるため、すぐに聞くことができます。
まして、自身で採ったものを下処理し、食べるという命を頂く行為は現代では貴重な食育の良い勉強となるでしょう。
環境のことや命のことについて身をもって知ることができる……これが一番のメリットだと思います。
魚や自然、サバイバルの知識が身につく
釣りをある程度やっていくとターゲットである魚の習性などが気になり、それを通して天候や気温、雲の動きなども自然と勉強するようになります。
さらには違和感を感じる能力も高まり、感覚も鋭くなります。
また、実生活でも糸を結ぶ際の特殊な結び方で強固にロープを結んだり、天気予報を見ずとも天気の急変を察知することができます。
私も釣りを通して、ある程度の天気の移り変わりや紐を素早く結ぶといった技能を身に付けており、中でも気配を消して足音を立てずに素早く移動するといった動きもできるようになりました。
そのため、親しい人からはいきなり背後に現れるものですから「暗殺者か忍者⁉」と大抵いつも驚かれています。
釣りにおける注意事項
そんな釣りですが、いくつかの注意事項もあります。
とはいえ、そんなに難しいことではありません。
人として最低限の振る舞いをすれば、簡単に解決するものばかりです。
マナーを守る
自然の中で遊べる釣りですが、人がいないからといって好き勝手して良いというわけではありません。
どんな世界にもマナーが存在しており、それが秩序を守り楽しめる大きな要因となっているのです。
では、いったい釣りの世界にはどんなマナーがあるのか?
釣り場(海や川)にごみを捨ててはいけない
ごみを捨てることにより、釣り場が汚れたり鳥や動物といった生き物がケガや命を落とす原因になります。
また、むやみな寄せエサは水を汚す原因となり、魚が住めなくなる原因となりますのでやめましょう。
これらが守られないだけで貴重な釣り場が無くなったり、魚が釣れなくなったり、最悪の場合は釣り禁止となってしまう恐れがあります。
自分で持ち込んだものは自然に残さず、持ち帰りましょう。
もし、できれば落ちているごみを拾って帰るとあなたは聖人君子となれるでしょう。
大物を釣ったり、魚をたくさん釣ってもごみの残して去る人より、たとえ一匹も釣れなくても自然や釣り場に感謝し、ごみを拾って帰ることができる人の方が釣り人としては圧倒的にカッコいいです。
規則を守る
自然の中で遊ぶのならば、ごみさえも出さなければいいでしょう? と思っている方は要注意です。
自然の中にある川や海……一見すると何もないように見えますが、実際にはちゃんとした規則があります。
例を挙げるならば河川での遊漁券の購入や海での採捕制限などです。
漁協の管轄している河川では魚を釣る際には遊漁券というものがなくてはいけません。
もし、それを所持していない状態で釣りをした場合……密漁とみなされ、監視員から通常の倍の金額で券を購入したり、罰則を受けることになります。
さらにブラックバスをはじめとした外来魚は駆除の対象なので釣った後に逃がすということもできません。
海の場合は漁師さん達の収入源であるホタテやカキ、アワビといった貝類……さらには鮭やサイズの小さいカレイなどは採捕が禁止となっています。
釣り場に行く時は事前に規則を調べ、守るようにしましょう。
ちなみに岩手の遊漁券と漁協管轄河川についてはこちら▼の記事に詳しく記載しています。
周りの人に迷惑をかけない
釣り場では常に自分だけとは限りません。
特に有名な釣り場や人気のポイントには必ずといっていいほど人がいます。
その場合は騒いだり、嫌がらせをしたりせずに静かに釣りをしましょう。
情報交換や雑談などは構いませんが、釣果をバカにしたり、水の中に石を投げるといった行為は大きなトラブルに発展しやすいです。
また、港では停泊している船に勝手に乗ったり、堤防に物を置いたまま離れるといった行為も多々確認されています。
港は漁師さん達の仕事場……本来は私達のほうが部外者ですから、その部分を意識した行動をしましょう。
リスクを回避する
釣りにのめり込むと次第に魚の釣れる状況というのが分かってきます。
それは人気の少ない場所であったり、天候が悪い時だったりです。
人気の少ない磯や誰もいない漁港のテトラポッドというのは他に人が入っていないため、魚が豊富で釣れやすく……天候が悪い曇りや雨の日なんかは人間の影が水面に映りにくかったり、雨音で人の足音がかき消されて魚の警戒心が薄れて釣れやすかったりします。
しかし、それは同時にハイリスクな時であったりします。
荒波で濡れている磯やテトラポッドはとても滑りやすく、転倒による頭部へのケガや転落による水難事故が度々起こります。
天候が悪い場合も同様で波が高くなったり、増水による濁流に呑まれて流されることがあります。
そうして水に落ちた場合、一人ではまず助かりません。
仮にもう一人仲間がいたとしても救助が間に合わないケースがあります。
ベテランでもそういったことはよくあるため、初心者の内は天気予報を入念にチェックし、なるべく誰かといきましょう。
もし、一人で行くような場合は誰かに釣りに行くことを話したり……近くに民家や人がいる場所で釣りをする、自身の身分とどこに行くかが書かれた紙を車や家に置いておくと何かがあった時にすぐに気づいてもらえることが多いです。
私の場合、一人で山奥の渓流に行く際は家の中に行き先と遺書を記してから行くようにしています。
何事にもリスクヘッジは必要です。
おわりに
釣りは古来より伝わる立派な趣味であり、自然の中に身を浸すことにより人間本来の本能を呼び起こしたり、精神を安定させたりする効果があります。
しかし、薬も度が過ぎれば毒になる……というように釣りにのめり込み過ぎるとギャンブルにハマるのと同じ作用があるといわれています。
とはいえ、これはどのような娯楽にも当てはまることでどんなことでもやり過ぎは悪影響になりかねません。
節度とマナーを守り、適度に楽しむことが人生において幸せになる鉄則です。
皆さんも無理はしない程度に釣りを通して自然と触れ合ってみてはいかがでしょうか?