岩手の代表的な洞窟といえば岩泉の『龍泉洞』……昨今は恋愛のパワースポットとしても有名で国内外を問わず多くの人が訪れています。
とはいえ、岩手には『龍泉洞』の他にも魅力ある洞窟が多くあります。
その中には『日本最古の鍾乳洞』とも称される洞窟も……。
今回は豊富な化石が多く眠り、魂を癒す泉についてご紹介します。
古代の海底が垣間見える洞穴
概要
一関市にある『幽玄洞』は石灰石で形成された『日本最古の鍾乳洞』であり、約3億5千万年前は水深50メートル前後の海底であった場所で地殻変動で隆起し、出現しました。
古生代中期の地層を持つ洞内の壁にはウミユリ、三葉虫などの生物の化石が見られ……さらには鍾乳石、石柱、つらら石、神秘的な地底湖などもあります。
ここではウミユリの萼(がく)の化石が完全に近い状態で発見されたこともあり、生物学上においても貴重な解明資料が数多く見つかっています。
入場料は大人1,100円、中学生600円、小学生400円。
定休日はなく年中無休。
利用時間は……
期間 | 時間 |
4~9月 | 8:30~18:00 |
10~11月 | 8:30~17:00 |
12~3月 | 9:00~16:00 |
となっています。
アクセス
『幽玄洞』は一関市東山町にあります。
交通手段としては主に車、電車、タクシーなどがあります。
車の場合……
盛岡方面からは一般道の場合は『国道4号線』を使用するルートと高速道路を使用し『水沢IC』で下りて『国道4号線』に合流するルートがあります。
正直、どちらを使用してもあまり変わりはありませんが、時間を優先するか経費を優先するかで使い分けましょう。
『国道4号線』ではそのまま『金ヶ崎バイパス』に入り、しばらく道なりに真っすぐ進み『国道343号線』に入ったらしばらくまた道なりに沿って走ります。
道中、曹洞宗の『遠應寺』付近に交差点がありますのでそこを右に曲がって『県道289号線(柴宿横沢線)』に入ります。
再び道なりに進んで『いわいフード』さん付近にあるT字路を左に曲がり『県道106号線』に合流……そのまま進むと『幽玄洞』が見えてきます。
仙台方面からは同じく『国道4号線』を進み、一関市内に入ってからは『マクドナルド』『松屋』のある十字路を右に曲がって『県道14~19号線』に入り、そのまま道なりに真っすぐ……『磐井川』を過ぎた先にある十字路を左に曲がり『岩手県立岩井病院』方面へ行きます。
カーブなどが多い道をしばらく走るとJR大船渡線『猊鼻渓駅』が見えてきますので最初に現れる交差点を左(東山電気工事株式会社さん)に曲がり『県道106号線(前沢東山線)』をひたすら走ります。
ひたすら走り『猿沢川』を過ぎてすぐに現れる交差点を左に曲がります。
あとは川沿いに並走する形で進んでいくと『幽玄洞』が見えてきます。
電車の場合……
盛岡、仙台方面どちらからでもまずJR東北本線および東北新幹線に乗って『一ノ関駅』を目指します。
『一ノ関駅』に着いたら今度は在来線のJR大船渡線に乗って『猊鼻渓駅』に向かいます。
『猊鼻渓駅』を過ぎた場合はその次の駅である『柴宿駅』に下りても問題ありません。
その両駅からは徒歩またはタクシーを使用して『幽玄洞』を目指します。
なお『一ノ関駅』からはバスも出ており『幽玄洞入口』というバス停で下りれば『幽玄洞』に到着することができます。
ただし、バスの本数には限りがあるそうなのでご注意ください。
なお、近くには名勝『猊鼻渓』などもあり、ついでに観光するならオススメです。
探勝レポート
それではさっそく探勝といきましょう!
今回は幽玄洞の駐車場からのスタートです。
駐車場は大型バスが何台も停められるほどの広さ……かなり余裕があります。
そうして、隣接する形で受付所があります。
受付で入場料を払い、いざ出発です!
受付後にすぐ別の建物が現れたため、もう入るのか⁉ と思いましたが……
どうやら洞穴ではなかったようです。
ここは『幽玄洞展示室』……幽玄洞内で見つかった化石や地図の展示、その歴史や背景を知ることができます。
静かな場所で過ごしやすい空間ですね。
こちらが幽玄洞内の地図……結構見どころが多いですが、少し見落としそうな気もします。
さすがに全部は厳しいので、今回の探勝では私が気になった部分のみご紹介させていただきます。
目標として目指すところは『浄魂の泉』です。
展示室を抜け、林の中を歩くこと数分……再び何かの建物が見えてきました。
なんだかお寺にあるような建物です。
少し中を覗くと真っ暗な空間が続いています。
どうやらここが幽玄洞の入り口のようです。
それでは地底の世界へ行ってみましょう!
最初に現れるは『豊乳浄土』……鍾乳洞ならではの白い岩肌が美しいですね。
これは『浄魂の泉』にも期待できそうです。
上に目を向けると今度は『いのち観音』『座禅小法師』が……入ってすぐに多くの見どころスポットと遭遇しました。
しかし、浄土や観音、法師といった言葉の節々から仏教を連想させますね。
平泉があるためか、私の中で岩手県南の奥州市と一関市は仏教色が強いように感じます。
この先、高所恐怖症の方は少し閲覧注意となります。
しばらくするとジェットコースターのような急勾配が現れました。
『見返りの坂』とのことですが、階段も急で幅も狭いので見返すのはなかなか厳しいように感じます。
この洞窟内の坂は全部こんなに急なのでしょうか?
高所恐怖症の方はまた閲覧注意です。
吸い込まれそうなほどに細い狭い階段が続いています。
岩肌も水滴で濡れており滑りやすく、足元注意ですね。
手すりはありますが、鉄のためとても冷たいです。手袋を持ってくればよかった……。
見返るのが怖いので、試しに見上げてみると地底ならではの空間が広がっています。
落石などの心配はないですが、少し怖いですね。
先を歩くと『水月観音』と遭遇しました。
この洞内にも電気が通っているのですね。
こういう場所で普段馴染みのあるものを見つけるとなんだか安心してしまいます。
とりあえず、道中無事であることを祈って合掌。
祈ってから先を進むと何やら怪しい分岐点が……老齢、高所恐怖症の方は左の明るい方……それ以外で平気な方は右の暗い方、とのこと。
運命の分岐点ですね。
人生とは選択の連続……光の道か闇の道か、皆さんはどちらが見たいでしょうか?
まぁ、左の道はだいたい想像できますかね?
ならば、私とともに怖いものみたさで闇深い道(右)へと進みましょう!
例のごとく高所恐怖症の方は閲覧注意です。
画像では伝わりにくいですが、こちらが右の道……もとい闇の道です。
進むと闇が払われ、明かりがありますが……これまでよりも細く長く、そして狭い!
長生きの秘訣を実際に現したかのような階段ですが、急勾配だけは違います。
行き急ぐな……という意味でしょうか?
そうして恐る恐る進むと……
目的の『浄魂の泉』が見えてきました!
こちらの地底湖は水深が約10メートル。壁にあるつらら石で「J」のように曲がって伸びているものは学術的にも解明されていない珍しいもの、とのことですが……どこにあるのでしょうか?
もう少し下りてみましょう。
……うーむ、やはり分からない。私の目は節穴みたいです。
皆さんは分かりますでしょうか?
もし、分かる方がいましたら教えていただけますとありがたいです。
少し進むと『幽玄観音』と『石筍こま犬』が現れました。
石筍(せきじゅん)とは鍾乳石が水に溶けだし、炭酸カルシウムを含んだ水滴が滴り落ちて、上向きに伸びたもの……まるで石の筍(タケノコ)ですね。
ちなみに水滴が落ちる過程で炭酸カルシウムが垂れ下がって固まったものが『つらら石』……その『つらら石』と『石筍』がくっついて固まったものが『石柱』となるそうです。
しかし、これがすべて自然に出来たものとは……思わず言葉を失ってしまいます。
この鍾乳石も顔がある何かに見えてしまいます。
よくよく見ると笑っているようにも見えますが……心霊写真ではないと信じたいです。
色々と下を見るうちにいつの間にか龍神様と遭遇。
こちらは『吐雲の竜』……雲を吐く竜に見えるとのことですが、私は岩穴から這い出て口を開ける大蛇に見えてしまいます。
映画『アナコンダ』を思い出してしまいました。
かつて龍が棲んでいた……そんな話が伝わっていてもおかしくないですね。
こちらが初めに話題となったウミユリの化石……左が『葉柄』右が『萼』です。
確かに萼はこの鍾乳洞内では珍しく、なんだか存在感があります。
学術的にもとても貴重なものを現地で間近で見られるのはなかなかないチャンスです。
洞内には珍しい化石や鍾乳石が盛りだくさんです。
石マニア、化石マニアの方なら垂涎ものでしょう。
そして、内部はひんやりと涼しいです。
夏の一歩手前……梅雨時の蒸し暑い時などは良い避暑地になりそうです。
ここなら、雨が降っていても楽しめそうですね。
見れば見るほど圧倒されて魅入ってしまいます。
各所には説明書きもあるので勉強にも役立ちますね。
そうして、見ていること数分……
幽玄洞の出口が見えてきました。
洞窟探検も終わりを迎えたようです。
幽玄洞を出るとそばにはなにやら金精様のような岩が……これは『大聖歓喜天』というもので幽玄洞の開発の際に発見されたものだそうで洞窟の奥にあったものとのこと。
そうして『大聖歓喜天』として奉られたとされています。
大聖歓喜天とは聖天ともいい、信仰するものの一切の障害を取り除き、富裕をもたらすうえに夫婦和合、安産、子授けの願いを成就するといわれているそうですが、元が大変な暴れ神であったため、信仰態度によっては願いが叶わないどころかその逆になると言い伝えられているそうです。
つまり祈願の際には覚悟と真剣さが必要とのこと……私はとりあえず願い事はないのでお祈りだけさせていただきました。
出口には売店があり、珍しい鉱石やパワーストーンの数々が販売されていました。
そして、亀らしき岩もあります。
質実剛健ながらも末長く生きる……そんな思いが込められていそうです。
おわりに
幽玄洞は化石が見つかった当時のまま展示されているというだけでなく、洞窟探検を気軽に楽しめるスポットでもあります。
特に最近は熱中症の被害も多くなってきており、外に出るのも不安なことが続いています。
そんな時は山でも海でもなく洞窟を探検するのも良いかもしれません。
皆さんもこの夏は太古の息吹を感じ、足を運んでみてはいかがでしょうか?