名物

冬に美味しくなる三陸の旬【宮古市‖三陸毛ガニ】

 日本三大カニといえば、ズワイガニ、タラバガニ、毛ガニの三種が真っ先に頭に思い浮かぶでしょう。

 これらのカニの特徴といえば、どれもが冬によく食べられるもの……食べ放題や鍋といったホテルの企画でも頻繁に取り上げられるほどです。

 日本海側ではズワイガニ、北海道ではタラバガニと毛ガニのイメージが強いこの三大カニですが、意外なことに毛ガニに至っては岩手も北海道に負けない味を出しています。

 今回はそんな北海道の毛ガニに負けない、岩手の『三陸毛ガニ』についてご紹介します。

三大漁場が育んだ栄養豊富なカニ

 世界三大漁場の一角である三陸の海は寒流の親潮(千島海流)と暖流の黒潮(日本海流)がぶつかる場所で栄養豊富な海として有名です。

 そんな海では牡蠣やワカメの養殖が盛んに行われ、その冷たさも相まって引き締まった身と旨味がどの幸にも詰まっています。

 そんな豊富な海藻茂る海の森で育った毛ガニは『三陸毛ガニ』と呼ばれ、11~3月に旬を迎えて、ぎっしりの身と素材本来の甘味で私達の舌を楽しませてくれます。

 三陸毛ガニというだけあって、三陸沿岸地域で広く食べられていますが、特に宮古市に至っては毎年『毛ガニまつり』を市全体で開催するほどの一大イベントと化しており、力の入れようが半端ではありません。

 また、三陸の春の旬『早採りワカメ』同様……このカニも新鮮さがウリ。

『活毛ガニ』として各店舗や市場で販売されており、沿岸の冬は寒さとは裏腹におおいに盛り上がっています。

レポート

見た目

 それではさっそく見ていきましょう。

 今回は宮古市にある魚菜市場で入念に時間をかけて吟味し仕入れてきました。

魚菜市場
毛ガニを購入した魚菜市場。季節ごとに三陸の幸を取り扱っている

 毛ガニの値段は安いものは一匹2000円ほどから高いものは一匹あたり5000~6000円ほど。

 主に既に茹でた状態や生きていない状態、サイズが小ぶりのものが安価傾向にあり、大きくて活きが良いものが高価傾向になります。

 私が買ったのはこのサイズ。

活き毛ガニ

 画像では分かりづらいですが、だいたい鶏もも肉300gサイズのトレーの大きさで一匹3000円ほど。店頭では中サイズです。

 とても活きの良いものをお店の方が選んでくれました。

 店によっては一匹あたりの値段ではなく、gあたりの値段で表示するところもあります

 特に大きい生け簀に入れられている場合で100gあたり900~1100円と表示されるケースが多いです。

 そうすると初見さんの場合……「毛ガニが一匹あたり1100円⁉ 安い!」と即買いしてしまうパターンが多いですが、私が購入した毛ガニのおおよそのg数から見るにそんなに大差が無かったり、ものによっては割高となる場合もあります。

 しかもそうやって即買いする方はほとんどが目利きに慣れていない方が多く、店側も店員さんが生け簀からカニを適当に選んで取るので、必然的に小ぶりでそこそこ活きがあるものが優先され、実際の市場よりも高く買ってしまうケースが多いです。

 これは悪徳というよりは店側にとっても、活きが良く大きいカニの方が見栄えも良いですし客寄せにもなりますから、商売上手といえるでしょう。

 大きい生け簀でgで売られている場合は、自身で気に入ったカニを選んで購入する際に店員さんにそのカニのことを伝えれば、お得に活きの良い大きいカニを安く購入することができます。

 コミュニケーションや目利き、値切りに自信がある人は生け簀購入……目利きがよく分からない人は市場でお店の人に聞きながらサイズ別で購入する方がお得です。

 私は目利きに自信がないので、店の人に選んでもらいました。

 ちなみに購入した際、調理法が書かれた紙も一緒にもらいました。

調理法

 調理法といっても茹で方ですが、簡単に説明すると……

1,カニの脚と甲羅を輪ゴムでたすき掛けに縛る(カニが暴れて鍋から逃げないようにするため)

2,鍋に水を張り、そこに塩(海水に近い多めの量)を入れて沸騰させる。

3,甲羅を下にしてカニを鍋に入れる。

4,落し蓋をしてそのまま10~15分茹でる

5,茹で上がったら3~5時間ほど冷まし、完成(冷ますとカニの旨味が増すとのこと)

 とはいえ、このカニはかなり活きが良すぎたのでそのまま縛って、沸騰した湯に入れるのは少々……というよりかなり可哀想な気がしたので、カニ好きで毎年調理している父のやり方を教えてもらいました。

1,底の深い鍋を用意し、カニが少し浸かるくらいの水を入れて塩を目分量で多めに入れる。

2,カニの甲羅を下にして入れてから火にかける。

3,蓋をして沸騰し始めてから10~15分茹でる

4,茹で上がったら粗熱を取り、完成

 輪ゴムで縛らなかったり、沸騰してから入れたり、冷まさなかったり……と多少の工程は省きましたが、これならカニも徐々にお湯が熱くなっていくのでなるべく暴れずに済むかと思いました。

 その証拠に茹で上がるまでカニは観念したのか、とても大人しかったです。

 とても潔いカニでした。

 そうしてできたカニがこちら……

茹でカニ

 若干、甲羅が白く薄くなりましたがほとんどポーズは変わらずです。

匂い

 活毛ガニ自体はそれほど匂いというものがありません。

 海の香りというのはわずかにしますが、これは生きている状態なら魚も貝もします。

 一方、茹でた後はほのかに潮の香りが強くなったような気がしますが、これは塩を多めに入れたためかもしれないので、正直なところよく分からなかったです。

 それでは命に感謝し、実食です。

 毛ガニはズワイガニやタラバガニに比べると小柄ですが、身はぎっしりと詰まっています。

 確かに甘味もありましたが、塩水によるものか……はたまた活けならではのものなのか、塩味が利いていてとても美味しかったです。

 また、甲羅を開くとカニみそがぎっしりとあり、それを身に付けて食べると一層甘味が増して、手が止まらなくなりました。

 昔は祝い事や正月などはタラバガニやズワイガニを食べていましたが、冷凍購入したものは水っぽくて、身が細いものばかり……旨味も薄く、食べる気がしなくて久しく遠のいていましたが、この毛ガニははるかに違います。

 正直、現在流通している他2種の冷凍カニよりも美味しいし、肉感があり「カニといえばこれ!」という感動を思い出させてくれました。

 ありがとう! そして、ごちそうさまでした。

用途&感想

 素材本来を味わうなら、やはり茹でカニが一番ですが………毛ガニには他にも『カニしゃぶ』『カニ汁』といった調理法があります。

 また、季節が移り変わる頃には同じ宮古で『生ワカメ』も採れる時期なので、ワカメを入れ、カニみそで出汁をとったカニ汁はまさに絶品といえるでしょう。

 ワカメもカニも旨味が凝縮されているので、両方購入出来た方はぜひともお試しください。

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商品アフィリ

『活毛ガニ』は岩手県内でも流通が限られており、主に入手できる場所としては三陸沿岸の市場や道の駅が主となります。

 内陸方面でもカニは売られていますが、サイズや数に限りがあり、また値段も高めとなっているので、やはり本場の三陸で購入するのが一番といえます。

 また、Amazonや楽天、Yahoo!ショッピングでも『三陸毛ガニ』が販売されており、旬の頃になれば一部で『活毛ガニ』も販売されているようです。

 遠方で興味のある方は購入してみてください。

おわりに

 三陸の冬の名物『三陸毛ガニ』……豊富な漁場かつ厳しい環境で育ったカニは中身も旨味も最高でした。

 見た目は小さくとも中身が詰まっていれば、大きいものにも負けない……そんな人生訓を教えられた気がします。

 食べることは生きること……生きることは学ぶこと……色々と大切なことを知ることができ、思い出すことができた食事でした。

 カニを食べることから遠のいている方はぜひとも、一度『三陸活毛ガニ』を味わってみてはいかがでしょうか?

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