岩手の沿岸の特徴といえば社会の地理の教科書にもよく出てくる『リアス式海岸』でしょう。
ギザギザの凹凸が激しい海岸でその地形もさることながら、打ち寄せる荒波により岩すらもいかつい様相を見せるさまはさながら、岩手の象徴といっても過言ではありません。
ですが、その反面で『世界三大漁場』とも称されるほどに多種多様な海産物が採れる恵みの海としても知られます。
今回はそんなリアス式海岸特有の荒々しさを実際に目にすることができるスポットをご紹介します。
三陸の音と風景を楽しめる国立公園
概要
三陸沿岸南部にある『碁石海岸』は大船渡市の末崎半島東南端約6㎞にも及ぶ海岸線で国の名勝および天然記念物に指定されている国立公園(陸中海岸国立公園)でもあります。
『碁石海岸』の特徴ともいえる黒色泥岩(ホルンフェルス)は約1億3000年前、海の海溝などに堆積したマリンスノーなどの泥が地下深くで固い黒色岩石となって地殻変動で隆起したものです。
そうして、現在の断崖が続く荒々しくも美しい変化の富んだリアス式海岸が生まれました。今日では『三陸ジオパーク』のジオサイト、みちのく潮風トレイルの一部となっておりその起伏あるコースを体で感じることができます。
東日本大震災の後には『三陸復興国立公園』の主要な拠点の一つとして復興事業や防災教育といった後世へ繋ぐ場所としてさらに注目が集まっています。
そんな碁石海岸には多くの名勝があり『日本の白砂青松100選』『日本の渚百選』『日本の音風景100選』『美しい日本の歩きたくなるみち100選』などにも選ばれ、連日観光客で賑わっています。
アクセス
そんな『碁石海岸』は広大な国立公園の中にありますが、拠点として動くならば『碁石海岸インフォメーションセンター』に行くのがオススメです。
観光地としても有名なので大船渡市内から案内板が道中至るところにあり、高速道路である『三陸沿岸道路』から『大船渡碁石IC』を下りてからは県道38号線~県道278号線である『碁石海岸線』を進むことによって到着することができます。
主な交通手段としては自家用車やタクシーなどですが、公共交通機関を利用する場合は……
・電車の『三陸鉄道リアス線・JR大船渡線』を乗り『盛駅』で下車して、『盛駅前』のバス停(岩手県交通バス)からバスで行く方法(約50分ほど)
・電車の『三陸鉄道リアス線・JR大船渡線』を乗り『碁石海岸口駅』で下車してタクシー(約10分ほど)か徒歩(約40分ほど)で行く方法
の2通りがあります。
ただし、碁石海岸口駅で下車した場合……タクシーは待機していないそうなので、タクシーを利用する方は事前予約が必須です。
※碁石海岸口駅には2013年9月28日に東日本旅客鉄道(JR東日本)大船渡線BRT(バス高速輸送システム)の停留所が設置されていますが、このバスは高速バスなので直接『碁石海岸インフォメーションセンター』に行くわけではありません。バスで直接『碁石海岸インフォメーションセンター』に行く際は岩手県交通の路線バスを使用してください。
『碁石海岸インフォメーションセンター』の駐車場は広く、近隣には『大船渡市立博物館』『世界の椿館』『碁石海岸レストハウス』などもあり大変便利となっています。
ちなみに遊歩道の先にある『お食事処 岬』にも駐車場があります。
さらにその隣……『碁石浜』にも駐車場があります。
ただし、こちらの駐車場にはトイレはありませんのでご注意ください。
碁石海岸内は広いのでその時々の状況に合わせて使うことをオススメします。
探勝レポート
それではさっそく探勝といきましょう!
今回は『碁石海岸インフォメーションセンター』の駐車場からスタートです。
碁石海岸レストハウスではお土産の他、食事も楽しむことができます。
営業時間は9時~17時……大船渡の情報も頂けるので迷った際には利用するのがいいでしょう。
向かいには『世界の椿館』があります。
多種多様の椿が栽培されているので、碁石海岸散策のついでに楽しむことができます。
椿のシーズンは冬なので、こちらは冬季に訪れたいですね。
駐車場には『おもいで岬』の歌碑があります。
おもいで岬は大船渡市出身の演歌歌手、新沼謙治さんのデビューシングルです。
やはり観光地と有名出身者の歌碑は切っても切り離せないようですね。
それではいよいよ碁石海岸遊歩道へ足を踏み入れます。
遊歩道は舗装まではいきませんが綺麗に整備されており、とても歩きやすいです。
背の高い草もなく、見通しの良い沿岸特有の松林の中を散策するのは気持ちがいいですね。
『碁石海岸インフォメーションセンター』からは名勝『雷岩』の少し上にある島(海馬島)付近から展望台が設置されており、見て回ることができます。
もちろん、ここはみちのく潮風トレイルの一部なので林道を通ることで『穴通磯』まで行くことができますが、少し距離があるので道や体力に不安がある方は車で行くことをオススメします。
ちなみに『穴通磯』の駐車場とその他詳細についてはこちら▼の記事に記載しています。
こちらの岩礁地帯は『海馬島(とどじま)』……昔、あの岩礁地帯の上でトドが体を休めていたことからその名前がついたのだとか……。
岩手までトドが来ていたことに驚きです。
昔は海産物以外にも海の生態系が豊かだったんですね……さすが、三陸。
漁師の方々や地域に住む方々はこうした岩礁や島に名前を付けて分かりやすくしていたそうですが……数が多くて私は覚えきれませんでした。
海馬島から少し下に見えるのは『雷岩』と『乱曝谷(らんぼうや)』……手前にある岩が『雷岩』でその奥にある岩場との間にある谷が『乱曝谷』となります。
こちらの『雷岩』が下にある海蝕洞に波が当たることで雷鳴のような音を生み出すのが名の由来となっており『日本の音風景100選』に選ばれています。
切り立った30mの断崖絶壁がドドーンという音を共鳴させ、天然の音響システムを作り出す……自然の神秘ですね。
さらに進むと直立した断崖が見えてきます。
こちらは『千代島』……別名『経島』とも呼ばれていて、海で遭難した人を供養するためにお経をあげたことからその名がついたそうです。
千代島はウミネコの営巣地のようで島にはたくさんのウミネコがいました。
少し歩くと拓けた場所に出ました。ここで少し休憩です。
左手に見える東屋は海神様を奉った東屋とのこと……とても立派ですね。
中で休むこともできます。
こちらは『碁石﨑灯台』……昭和33年(1958年)に設置されてから現在も使われている現役バリバリの灯台です。
この光が船乗り達の重要な標となっています。
休憩した後は探勝再開です!
灯台の先にあるのは碁石海岸が属する末崎半島の先端『碁石岬』です。
しかし、見渡す限りの広々とした海! とても清々しいです。
これぞ三陸……岩手の海!
まさにそんな感じの磯ですね!
天気が良ければ宮城県の牡鹿半島まで見えるとのこと、ですが……結構天気が良いはずなのにどれが牡鹿半島なのかが分かりません……。
画像では見えにくいですが、岩場には波に揺らめく海藻がびっしりとひしめきあっています。
三陸のワカメはかなり長く、美味しいことで有名ですが……見ただけで分かるこの豊かな海で採れたものなら、納得の理由です。
さて、どんどん先に進みましょう。
碁石岬の次は『えびす浜』……岬を下りるようにして向かいます。
この松林はシマヘビやSNS上ではカモシカに出会ったと報告があるほど、生き物が豊富です。
この豊かな自然が三陸の海を作り出す礎になっているのですね。
『お食事処 岬』の前にある駐車場へ到着。ここには車で来ることもできます。
トイレもあるので食事休憩に最適です。
そして、そのすぐ近くには……
『えびす浜』があります。この場所は恵比須様を祀った小さな祠があることからその名がついたそうです。
波も穏やかな入り江です。
ただ、砂浜ではなく砂利なので水遊びをするには足のケガに注意しましょう。
碁石海岸の名前の由来にもなった碁石に似た滑らかで美しい玉砂利が散らばっています。
この石がたくさん見られるのはもう少し先に行った『碁石浜』となっていますが、ここでも十分に見ることができます。
かつては囲碁の碁石として伊達藩藩主にも献上されたといわれる一品は素晴らしいといえるでしょう。
現在は国立公園となっているので石の持ち帰りは禁止されています。
港近くにある岩場も普通の岩場とは少し違った顔をしています。
長年にわたって自然が作り上げた造形美……圧巻です。
『えびす浜』から数分歩くと先ほど触れた『碁石浜』へ行くことができます。
こちらの港からは『穴通磯』を通る船に乗ることができます。
ただ、この日は波が高かったため残念ながら乗ることができませんでした。
これだけ天気が良くても乗れないことがあるのですね……注意しましょう。
堤防から降りて『碁石浜』へ到着!
こちらは『えびす浜』と違い、石の数がかなり多いです。
海水浴をするには素足だと少々痛そうですが、全ての石が角が取れた丸石ばかりなので刺さる心配はなさそうです。
よく健康ランドに行くとこのような石が敷き詰められた健康マットがありますよね……『碁石浜』あらため『足つぼ浜』と名付けましょうか。
底の浅いサンダルを履けば効果は絶大ですね。
遠くに波消の堤防が見え、手前は巨大な亀のような岩場があります。
秋田県男鹿市のゴジラ岩に対抗し、こちらは『ガメラ岩』と名付けましょう。
『碁石浜』の堤防は意外と長い造りになっています。
聞くところによるとここはアイナメといった根魚を対象とするロックフィッシュも盛んとのこと……。
確かに浜にも無数の石……近隣の岩礁地帯の多さからいえば好ポイントです。
釣り師の方々は観光も兼ねて狙ってみてはいかがでしょうか?
私は少しの間、竿を出してみましたが……残念ながらボウズでした(´;ω;`)
おわりに
碁石海岸は道中にトイレや休憩場所はありますが、自販機などは無いので飲み物の準備は事前に行ってから行くと憂いなく楽しむことができます。
目で見て、音で聞いて……五感をフル活用して三陸の海を体感してみてはいかがでしょうか?
なお、碁石海岸には設備の整ったキャンプ場もありますので潮風と波音を感じながらゆっくりと三陸の海岸を過ごしていってください!