自然

多種多様な魚を育む八幡平の名水【八幡平市‖金沢清水】

 突然ですが、皆さんは『日本名水百選』というのをご存知でしょうか?

『日本名水百選』とは環境庁(現在の環境省)が昭和60年に創設したもので、全国規模として飲料のみだけでなく、その地域との関わりや特色などを考慮して選ばれる名水のことです。

 岩手では現在……

・龍泉洞地底湖の水

・金沢清水

・大慈清水の青龍水

・中津川綱取ダム下流

・須川岳秘水ぶなの恵み

などが選ばれ、岩手がいかに自然豊かであることを証明しています。

 今回はそんな名水達の中でも『龍泉洞地底湖の水』とともに真っ先に名水として認定された『金沢清水』をご紹介いたします。

ブナ・ミズナラに守られた伝説の清水

金沢清水とは?

 金沢清水とは八幡平市松尾金沢地区に点在する7つの清水の総称のことで、中でも毎分約20~40トンを噴出する最大の水量を誇るのが『座頭清水』と呼ばれ、今回紹介する代表的な湧き水です。

 水源はブナやミズナラといった山林に守られるように囲まれており、その水はとても透き通っていて水草を揺らしながら湧き出る光景はさながら幻想的です。

 さらにこの湧き水のある周囲の丘からは土器も多数に出土しており、数千年前の縄文人達も活用していたことを物語っています。

名水を彩る数多の伝説

 また、この湧き水にはいくつかの伝説があり、

①その昔、悪さをして座頭(盲目)にされた鬼が神に導かれてこの水で洗い清めたら目が見えるようになった、という『座頭清水伝説』

②7つの頭を持つ蛇龍(岩手山大滝の主である七頭龍)が地表に頭を出したところが現在の7つの清水になった、という『蛇頭清水伝説』

 などが言い伝えとして残されています。

 いずれにしても鬼と龍といった強い力を持つ幻獣が起源となっているので、強力なパワースポットでもあります。

水質

 金沢清水はミネラル成分が豊富に含まれた硬水となっています。

 成分としてはナトリウムやカルシウム、マグネシウム、カリウムのほかバナジウムも含まれている珍しい水です。

 水温は年間を通して10℃前後に保たれており、近くにある岩手県内水面水産試験場ではニジマスやアユ、ヒメマス等の養殖に使用されております。

アクセス

 金沢清水は上記で紹介した『岩手県内水面水産試験場』の敷地内を通り、隣接している山林内にあります

 交通手段としては

電車・バス利用JR東北本線『盛岡駅』を下車⇒岩手県北バス八幡平頂上行・八幡平リゾートホテル行『東八幡平交通センター』下車⇒徒歩約10分ほど
自家用車利用東北自動車道西根IC⇒国道282号線⇒県道23号線八幡平方面へ約30分
東北自動車道松尾八幡平IC⇒県道45号線八幡平方面へ20分

 タクシーを利用する場合は『金沢清水の座頭清水』または『岩手県内水面水産試験場』もしくは『暁ブルワリー八幡平ファクトリー(旧トラウトガーデン)』と伝えればOKです。

 なお、駐車する場合は水産試験場敷地内への侵入は出来ませんので、試験場前にある金沢の桜並木の広い駐車場をご利用ください

探勝レポート

 それではさっそく探勝していきましょう!

 今回は水産試験場前の駐車場から徒歩でのスタートです。

水産試験場前

 岩手県内水面水産試験場前です。

 この通り、正面入口は関係者以外立ち入り禁止のバリケードがあります。

 これだけ見ると敷地内に入ってはいけない気がして臆してしまいますが、金沢清水へは右手の砂利道を進みます。

水産試験場前の入り口

 よく見ると木の看板がありますので、この案内に従いましょう。

 この先をずっと進み、水産試験側へと向かうと……

水産試験場敷地内

 水産試験場敷地内の奥の方から入ることが出来ます。

 養殖における衛生面の関係上、ロープでしっかりと区分けされています。

 間違っても立ち入り禁止とされている場所には絶対に入らないでください。

 それにしても最近、ここで話題となっている八幡平サーモンも育てられているのでしょうか?

水産試験場の水

 いずれにせよ、ここで育てられた魚達ならきっと美味しいことでしょう!

 いつか食してみたいものです。

 ちなみに余談ですが、この近くにある松川は時折ニジマスなどが釣れるのだとか…私自身は釣ったことがないのですが、松川の近くには以前、岩手でも誇る大規模な釣り堀施設『トラウトガーデン』があり、多くのイワナ、ヤマメ、ニジマス、さらに敷地内にはコイやチョウザメなどが飼われていました。

 さらに、釣り堀の上級者コースには1メートル越えのニジマスが泳いでいたのを目にしたこともあります。

 よく養殖場や釣り堀近くの川は大雨による増水でそういった魚が川へ逃げやすいという特徴があります。

 そして、追加で述べるならこの釣り堀内にいた魚達の行方は今も敷地内にいるのか、どこかへ運ばれたのか、川へ逃されたのか……その行方を私は知りません。

 もしかしたら、松川には一種のロマンがあるかも知れませんね。

 釣り人の方は一度、チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

 さて、脱線してしまいましたので本筋に戻りましょう。

水汲み場案内

 少しネタバレになってしまいますが、金沢清水の湧き水は立ち入り禁止となっており、通常は水を飲むことはおろか汲むことすらできません。

 というより金沢清水は飲用に適しておらず、本来は飲めないのだとか……。

 しかし、水産技術センターの玄関脇には平日の8:30~17:00の間だけ水を汲むことが出来るそうです。

 この日は残念ながら土曜日に来てしまったため、私は水を汲むことが出来ませんでしたが、狙うなら平日の昼頃に行ってみたほうがいいでしょう。

 ただし、生水は腹痛の要因となる恐れがあるので、飲む際は念のために煮沸してから飲むことをオススメします。

金沢清水の噴き上げ

 敷地内では金沢清水を噴き上げで汲んでいました。

 何トンもの水が常時噴き上がっている光景は実に圧巻ですね!

金沢清水への入り口の橋

 敷地内をしばらく進んでいくと山林へ至る橋が現れます。

金沢清水への案内

 ここから遊歩道に入り、金沢清水への水源に行くことが出来ます。

春の小川

 この日、訪れた時は春ということもあってか桜と小川が青空によく映えていました。

遊歩道

 遊歩道とはいえ山林を歩くため道はご覧の通り狭く、少し険しさがあります。

遊歩道道中

 しかし、案内板やチェーンの手すりがあるため迷うことはありません。

遊歩道の水辺

 綺麗な水辺がある場所には一足先にと緑が生えてきています。

 道は若干ぬかるんでいる場所もありましたが、山岳シューズのような特別な装備は必要ではありません。

 歩きやすい靴で行きましょう。

遊歩道の景色

 強いて述べるなら階段が意外と急で高さがあるので、下はあまり見ない方がいいかもしれません。

 そんなこんなで遊歩道を進んでいくと……

金沢清水水源

 今回の目的地である金沢清水の水源が見えてきました!

 透き通った水に美しい水草……ところどころ見える青色が一層美しさを引き立てます。

 この泉は地域では『ジャドスズ』とも呼ばれているそうです。

 詳しくは分かりませんがそれぞれの言葉の意味から考えると『ジャド』⇒蛇頭が訛ったもので、『スズ』とは北上の方で清水、湧き水の意味で呼ばれているので直訳すると『蛇頭の清水』……蛇頭清水伝説からつけられたのでしょうか?

金沢清水 看板

 近くには英語と日本語で書かれた説明板と高台があります。

高台

 それでは今度は高台に上がり、上から全体を見てみましょう。

金沢清水水源全体

 豊富な水を支える木々に囲まれ、守られ……まるで女神が出そうな泉です。

 この水源は養殖に利用しているという事情から管理は岩手県内水面水産技術センターが定期的に巡回、清掃を行っており、周囲には事故防止のためフェンスによる囲いがしてあります。

山神の祠

 そして、湧き水近くの茂みの中には何やら怪しい石柱と祠が!

石柱

 石柱には何も刻まれていないので、正体は分からずじまい……

祠

 祠の方もボロボロでお供えはおろか壊れている始末……まさか蛇龍を祀ったものでしょうか?

 調べてみると以前、国有林だったこの地域には大更まで森林軌道が敷かれ、湧き水の近くには沼宮内営林署の国見事業所もあったそうです。

 この祠と石柱はその事業所を建てる際、事業の隆盛と安全を願って営林署が勧請した山の神を祭る祠とのことでした。

 正直言うと何か祟られるんじゃ、と内心ビクビクしていました(^_^;)

おわりに

 今回、金沢清水を訪れたのは春でしたがもっとも綺麗な時期としては夏の深緑の季節と秋の紅葉の季節です。

 ですが、画像からも分かる通りに山林の中にありますので行く際は虫除け対策や熊よけ対策が必須となります。

 もし、行くの不安がある場合は今回の私のように春に訪れるのはいかがでしょうか?

 春は雪が溶け、草木が芽吹く季節のため虫刺されのリスクを減らすことができます。

(クマに関しては湧き水周辺は笹薮に覆われ、接近しても気付きにくいため茂みには無闇に近づかないようにしましょう)

 また、冬の場合は雪が深くなりやすいのである程度山歩きやアウトドアに精通した玄人向けの季節ですので、無理のない範囲で行くようにしましょう。

 危険は対策を施し、注意することで防ぐことが出来ます。

 出来る限りの対策と安全に留意して自然の美しい光景を楽しみましょう!

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