宮沢賢治といえば数々の詩や童話を遺したことで有名ですが、元は農学校の教師として農作物に関し並々ならぬ情熱を燃やしていた人物でもあります。
そんな賢治氏の農業に関する功績は多く、簡潔に述べるだけでは足りません。
作品や建物……色々なものが遺されている賢治氏の遺産ですが、その中でも珍しいものとして『果樹』があります。
今回は今もなお現存している果樹についてご紹介します。
概要
賢治の熱意が実った梨
花巻市若葉町……かつて賢治氏が教鞭を振っていた花巻農学校跡地である『ぎんどろ公園』にほど近い道路沿いにその木は植えられています。
この木があった場所は元々、賢治氏が農学校の教師を務めていた頃に、果樹園の実習が行われていた場所です。
果樹園の前は賢治氏の母方の祖父・善治氏の有する土地で「これからの時代は果樹栽培の技術を向上させるためにもっと果樹園が必要なんです!」という賢治氏の熱意を受け、土地を無償で貸したのが始まりとされています。
現在は果樹園は無くなってしまいましたが、梨の木が一本残り、若葉町の住民有志によるボランティアの手によって守られ、毎年大きな実をつけては近隣の保育園児達が収穫を楽しんでいます。
ちなみに、梨というと賢治氏の童話「やまなし」を連想する方もいるかもしれませんが、こちらの作品に出てくる梨とは別物。
「やまなし」に登場する梨は岩手では『イワテヤマナシ』と称され『ミノクチナシ』といわれる2~3センチほどの小ぶりの梨だそうで、今回紹介している梨は『真鍮』と呼ばれる比較的古い品種のものです。
この『真鍮』は現在の梨の品種の先祖にあたる貴重なものとのことで、果樹栽培の歴史から見ても貴重な資料です。
アクセス
賢治氏ゆかりの梨の木は若葉町3丁目の道路沿いにあります。
近くには『ぎんどろ公園』や隣接する『花巻市文化会館』もあります。
駐車場としては梨の木の裏手に砂利の空き地がありますが、宮沢賢治ゆかりの地を巡るならば少し遠いですが『ぎんどろ公園』近くの駐車場に停めるのがオススメです。
各方面にアクセスしやすいだけでなく、賢治氏の墓所『身照寺』にも寄ることができます。
また『ぎんどろ公園』についてはこちら▼の記事にも詳細を記載しています。
探勝レポート
それではさっそく探勝といきましょう!
今回は梨の木のある近くの空き地に車を停めてスタートです。
こちらが賢治氏ゆかりの梨の木です。
賢治氏が植えた頃から現存していることを考えると相当な樹齢を迎えていることでしょう。
幹は意外と細めですが、何本も木が組み込まれ、広がった枝葉を支えている光景を目の当たりにするとやはり只者でないように感じます。
近くで見てみると青々と生い茂っています。
素人目から見ても木がかなり元気であることが伺えます。
肝心の実はというと……一つも実っておらず。
季節は秋でちょうどいい頃なのですが……もう収穫したのでしょうか?
木の近くには説明書きがありました。
私が概要で記載した内容よりもっと綿密かつ詳細に記載されています。
賢治氏の熱意が時と時代を越えて伝えられている……この立派な看板からも伝わってきます。
最後にぐるりと見渡しましたが、やはり実はついていませんでした。
まぁ、訪れたこの日は10月の下旬……とっくに収穫されてもおかしくはないですね。
梨を見れなかったのが少し残念です。
おわりに
梨は毎年10月頃に収穫祭が行われているとのことなので、実際に実っている姿を見たい場合は9月下旬~10月上旬辺りに行くのが良さそうです。
実際に見ることにより、梨の木が地域の人々の手によって大切に育てられているのをしっかりと感じました。
教育は熱意だけでなく真摯な想い……態度だけでなく実際に動く行動によって後世まで続いていくのですね。
皆さんも賢治氏の想いの結晶を見学しに訪れてみてはいかがでしょうか?