神社に行けば必ずといっていいほどあるのが御神体と御神木です。
そして、御神木として祀られている木のほとんどがその神社に祀られている神様に関わりの深いもの……あるいはその地域に古くから根付いている木となります。
だいたい、御神木となる木は一つの神社に対して一本ほどなのですが、中には境内に複数存在する神社もあります。
今回はそんな御神木級の木がいくつも生えている神社をご紹介します。
町指定のケヤキ群が立ち並んだ神社
概要
その神社は紫波町『国道4号線』から少し外れた閑静な地区に鎮座しています。
名を『木宮(きのみや)神社』といい、小さな神社ながらも南部家の家紋『向鶴』がある南部家ゆかりの古社です。
その詳しい由緒は以下の通りとなります。
木宮神社は人皇五十代桓武天皇延暦年中(782~806年)征夷大将軍坂上田村麻呂、蝦夷征伐東奥開拓のため下向され、山地に志和城を築き場内の鎮守として静岡県伊豆国田方郡熱海鎮座の来宮神社を御分霊勧請し斎き祀りし由緒ある古社である。
代々の藩主の尊祟厚くその家紋たる向鶴の紋章を印たる幕、灯篭等の使用を許される。
なお文政年間(1818~1829年)の藩主南部利済公直筆と称する神号額面あり。又火防の神、酒難除けの神として知られている。昭和16年9月12日古舘村社村社に昇格「現在三級社」境内には稲荷社を有する。また、「ケヤキ群」として昭和50年3月25日天第6号で天然記念物として紫波町の指定を受ける。推定樹齢約400年、県内で5指に入る御神木で、近年パワースポットとして女性の方をはじめ訪れる方が年々増えている。
引用元:岩手県神社名鑑
かの征夷大将軍、坂上田村麻呂の時代からあり南部家の殿様にも認められている神社となるとさぞ霊験あらたかなのでしょう。
しかも藩主直筆の神額ともなれば、よほどの願いを叶えたのでしょうね。
御祭神・御利益
祀られている神様については以下の表に簡単にまとめてみました。
御祭神 | 御利益 |
迦具土命〔かぐつちのみこと〕 | 火の神 対象:火防、鍛治、火力、温泉、土地、鉱業 |
現在は火の神『迦具土命』が御祭神となっていますが、勧請当初の御祭神は『八十猛命〔やそたけるのみこと〕』『大国主命〔おおくにぬしのみこと〕』『少彦名命〔すくなのみこと〕』として、御本尊に『勝軍地蔵〔しょうぐんじぞう〕』としていたようです。
八十猛命は日本の記紀神話に登場した神武天皇に抵抗した土豪の一人で名前は「多くの勇者」の意味を持ちます。
大国主命も各地の国津神を平定して長になった神で、少彦名命はそのパートナー……仏教由来の勝軍地蔵は戦勝を祈って作られた地蔵菩薩なので、元来は戦勝祈願の御利益が強かったのかもしれません。
境内には他にも稲荷社が祀られていますが、どんな神様かは不明……恐らくは稲荷となると『宇迦之御魂大神〔うかのみたまのおおかみ〕』の分霊として生活に御利益があるのかもしれません。
ただ、由緒にもあった通り……ここは火防と酒難に御利益があるとのことですので、お酒に関する悩みのある方には効果がありそうです。
アクセス
木宮神社は紫波町の『城山公園』付近に鎮座しています。
『国道4号線』から入る場合は『甘味処 高福餅店』さん前にある信号機のある十字路を北上川方面に曲がり、3番目の曲がり角を右に曲がることで到着します。
決まった駐車場はありませんが、車で境内に入ることができます。
探勝レポート
それではさっそく探勝といきましょう!
今回は神社の鳥居前からのスタートです。
こちらが木宮神社の鳥居となりますが……私はここで一つ違和感を覚えました。
……ケヤキに葉も枝もない⁉
Googleの画像検索では青々と茂ったケヤキの写真があったのですが……。
よく見ると御神木は太くて大きく立派ですが……根本に大きな穴が。
枯れてしまったのか、剪定されて生気がなくなってしまったのか……どちらにせよ少し寂しい気持ちになってしまいます。
とはいえ、幹も根もかなりしっかりしているのでもう少し年月を要すればまた新たな枝葉が出てくるのかもしれません。
残念ですが、近くに民家もあり倒木などの危険も考えれば仕方がないかもしれません。
歴史あるものが消えていく……その前になんとかこうして記録に残していくことこそが私の使命だと勝手に思っています。
それでも流石は御神木……その存在感は圧倒的です。
太い御神木が3本……大きな神社でもなかなか見ない光景でしょう。
木宮神社拝殿に来ました。
社の屋根にある『鰹木(かつおぎ)』と『千木(ちぎ)』が立派です。
鰹木とは横に並んでいるポールのような飾りで、千木とは上に向かってV字になっている飾りのことです。
こちらの千木は鋭さがあるので外削ぎですね。縦に切られた状態のものを『外削ぎ』……横に切られたものを『内削ぎ』といいます。
ちなみに千木が外削ぎで鰹木が奇数なら祀られている神は『男神』……千木が内削ぎで鰹木が偶数なら『女神』とのことですが、木宮神社はどうでしょうか?
……千木は外削ぎ、鰹木は6本。
……んん? 千木が男神で鰹木が女神じゃないですか!
これじゃどっちがどっちだか分かりません……が、実をいうと千木が外削ぎで鰹木が偶数だったり、その逆もあったりするのでこれは参考程度に見た方が良いです。
……もっとも、この知識を知っておくとその神社で本当に祀られているのがどの神様かも分かるようになるので知っておいて損はない筈です。
神額も全部木で出来ていますね。
その下にある南部家の家紋の向鶴が立派です。
隣にある『土山稲荷神社』……稲荷神は生活圏に縁が深く、どこに行っても必ずといっていいほど祀られていますね。
御幣も綺麗でしっかりと管理されているようです。
境内には他にも石碑群が祀られています。
もはや馴染みである『湯殿三山』の文字が……他の地方の神社は分かりませんが、岩手で石碑を見かける際はだいたい『湯殿山』『蒼前』『早池峰山』『岩手山』『庚申』等が書かれています。
こちらもいずれ詳しく調べてみたいですね。
おわりに
ケヤキは残念ながら枝葉がない状態でしたが、根や幹はまだ壮健に感じたのでいずれまた元気な姿を見せてくれると期待したいですね。
小さな神社というのは散歩や気晴らしに最適です。
また、興味がなくても知識が少しでもある際は着目する部分を通して色々と楽しむことができます。
皆さんも人生を楽しむために色々なものに対して臆せず、興味を示していきましょう!