史跡

大岩に刻まれし龍の姿【遠野市‖巌龍神社】

 皆さん、新年あけましておめでとうございます!

 今年もどうかよろしくお願い致します。

 さて、いきなりですが2024年の今年の干支といえば……そう! 辰年です!

 辰、竜、龍、ドラゴン……アニメや漫画はもちろん、どこの観光地でも必ずといっていいほどキーホルダーもあり、子供から大人まで人気のリュウの年です。

 そして、お正月といえば初詣であり神社!

 さらに神社は龍神と縁もゆかりも深い関係であります。

 昨今、御朱印ブームや神社巡りブームもあり、何かと龍神系パワースポットを巡る方も増えているようで、神社仏閣関係の特集では何かと龍がよく挙げられています。

 岩手では龍といえば……と聞かれたら、皆さんが真っ先に思い浮かぶのは岩泉町にある『龍泉洞』や八幡平市にある『ドラゴンアイ』でしょう。

 確かに地底湖と天空のドラゴンブルーといわれれば、問答無用で納得するしかない美しさではありますが……それだけしか知らないのは実にもったいないです!

 そこで今回は岩手にふさわしく、立身出世が約束されたかのようなパワーが頂ける特別な龍をご紹介します。

お寺と神社……二つの力を宿す奇岩

概要

 遠野市と住田町……その境目にある小友町、その中を流れる小友川沿いに一際目を引くほどの巨岩が有した神社があります。

 名を『巌龍(がんりゅう)神社』といい、巌はいわお……すなわち岩をさしており、岩の龍の神社という意味になります。

 創建の時代は不明とされており、分かっていることとしては常楽寺の開祖、無門和尚が同寺の鎮守として不動明王を勧請して巌龍山大聖寺として祀ったといわれています。

 現在の神社の背後にある奇岩こと『不動岩』をもって神霊とし、羽黒修験源龍院が別当職となりました。

 その後、六代善蔵院が元禄年間拝殿を建立するも大正7年火災により焼失。

 祭典は明暦年代に旧暦9月28日といわれていますが、後に数回変更され現在は8月第4土曜日と日曜日の2日間行われています。

 源龍院8代の本興は、文化6年本殿を建立し不動尊の佛体を安置し、巖龍(いわたき)神社と称し、文化8年には神輿堂を置きその後も巖龍(いわたき)神社として源龍院の子孫が代々別当職を勤めました。

 さらに時は過ぎ、明治5年の神仏分離令により祭神を日本武尊〔やまとたける〕に改め、巖龍神社と称し村社に昇格。

 昭和27年から神社庁発令により宮司制となり現在に至ります。

 長い歴史から見ても修験道という仏教から神社へと転換したという、お寺の事情も神社の事情も知っている神社といえるでしょう。

 ちなみに例祭である裸祭りは遠野市内では類例のない奇祭として貴重な事から昭和59年(1984)に遠野市指定無形民俗文化財に指定されています。

御祭神と御利益

 祀られている神様については以下の表に簡単にまとめてみました。

 詳細に関しては別の機会に記そうと思います。

御祭神御利益
日本武尊命〔やまとたけるのみこと〕戦いや農業の神
対象:厄除け、五穀豊穣、商売繁盛
少彦名尊〔すくなひこのみこと〕医療や温泉の神
対象:農業、医薬、救助
厳嶋姫命〔いちきしまひめのみこと〕芸能や豊漁といった海の神
対象:商売繁盛、芸能、金運、勝負、豊漁、交通安全、五穀豊穣、海運
宇賀之魂命〔うかのたまのみこと〕五穀豊穣を司る神
対象:商売繁盛、家内安全、五穀豊穣

 トータルで見ると農村地域のためか豊作に関する『五穀豊穣』のご利益が強いようですね。

 また、日本武尊や厳嶋姫命の存在から勝負事、ひいては立身出世にもご利益がありそうです。

 余談ではありますが、水神関係である瀬織津姫や弁財天、海の神で特に『宗像三女神』とも呼ばれる市杵島姫命(厳嶋姫命)、田心姫命〔たごりひめのみこと〕、田岐津姫命〔たぎつひめのみこと〕の三柱が関わる神社仏閣はたいてい龍神様を祀っています。

 しかし、いずれも女神様なのは不思議ですね~。

アクセス

 厳龍神社は宮守ICから住田町へ行く道路、国道107号線を住田方面に走り、小友川の近くにあるY字路を小友町方面に進んだ所にあります。

 宮守ICは三陸沿岸の高速道路である釜石自動車道を花巻および東和ICから釜石方面に向かう途中にあります。 

 国道107号線は盛岡・花巻方面から遠野市へ向かう途中の道路、国道283号線を遠野方面に走り、道の駅『みやもり』を過ぎた先にある『鱒沢駅』近くのT字路を住田町方面に走ると合流します。

 小友川近くにあるY字路がよく分からない場合はとりあえず『小友川』『小友郵便局』を目指していくと小友町に入る道を発見できます。

 それでも分からない場合は近くにある『産直ともちゃん』を目指しましょう!

 巌龍神社の特徴である巨大な岩が見えるはずです。

 また、その岩がよく分からなくても近くに案内板や産直の方に尋ねると教えてくださいます。

 ちなみに『産直ともちゃん』には食堂をはじめ自家製の焼きたてパンや野菜の販売、結構珍しい『鹿の角』といった品物まで販売されています。

(鹿の角は3,000円ほどで売っていました)

 寄るだけでも楽しいのでぜひとも行ってみてください!

 駐車場に関しては巌龍神社境内にも停めることができるそうですが、橋の幅があまりないので車で入るにはあまりオススメはできません。

 車を止める際は神社の隣にある消防団の支部の駐車場が広さもありオススメです。

 ですが、神社と消防団の間には施設があり、その敷地内とも隣接していますので、邪魔にならない位置と長時間の駐車はしないよう注意してください。

境内散策レポート

 それではさっそく境内の散策へと行きましょう!

 今回は消防団の駐車場に停めさせていただき、ここからのスタートとなります。

消防団の駐車場

 ここから敷地内を通って直接神社へ行くのもアリ……道路へ出て橋を渡って神社に行くのもアリ……2通りの方法がありますが、今回私は赤い橋を通って正面から行くことにしました。

神社前の赤い橋

 朱塗りの趣ある橋……こうして見ると厳かな感じがしますが、なにぶん神社の背後にある巨石のインパクトが強すぎますね。

 そうして橋を渡り…

巖龍神社 石の鳥居

 巖龍神社へ到着!

 それではさっそくお参りをしましょう!

巖龍神社 拝殿

 巖龍神社の拝殿です。

 普通の神社と違って社殿がなく小さく見えてしまいますが、これは背後にある巨石を御神体としてそのまま祀っているからなんですね。

巖龍神社 拝殿前

 不動明王を祀っていたからなのか明王の剣が飾られていますね。

 左右にいるのは狛犬なのか、はたまた龍なのか……それとも獅子なのか。

 狛犬に近い見た目ですが、異様に首が長いのが気になります。

巖龍神社 装飾

 こちらには鹿の角が飾られています。

 産直といい、この小友町では鹿の角が特産品なのでしょうか?

 しかし、龍の角は鹿の角と瓜二つですから……龍神信仰におけるものとして供えられているといっても納得してしまいます。

 そして、神社の裏手には……

岩を昇る龍
実は後ほど…この岩について、ある衝撃的な事実を知ることとなります

 巌龍神社の御神体である『不動岩』が聳え立っています!

 この不動岩は高さ約54m程ある大岩です。

 さらに岩の下からは清水が湧き出ている事から古くから崇拝の対象になっていたといわれています。

大岩下の清水跡

 今は水が枯れていて清水を見ることはできませんが、この岩の下から湧いていたと思われます。

 不動岩は大正13年(1924)に岩手日報社が主催した岩手県内の三景十勝を募集した際、二戸郡安代町の『不動滝』、岩手郡雫石町の『玄武洞』と共に岩手県三景に……昭和25年(1950)に岩手日報社が主催した日本百景を募集した時にも選定されています。

 岩肌に刻まれた溝がまるで天に昇る龍の姿……そのままですね!

 この龍神様のように運気もどんどん昇らせていきたいです。

不動巌の岩肌

 こちらは『不動岩』の岩肌……鋭く尖っているうえにゴツゴツしている様はまるで龍の鱗のようです。

 もしかしたらこの巨石そのものが龍神様なのかもしれません。

 さて、少し境内へ戻ってみましょう。

境内

 境内は砂利が敷いてあり広々としています。

 車でどうしても境内に入る際は鳥居前の横道から逸れることで入ることはできますが……やはり入りずらい空気を感じます。

八幡社

 巖龍神社拝殿隣にある摂社……私が行った時は『八幡』と書かれていたような気がしましたが、宇賀之魂命を祀っているとのことから稲荷社だったのかもしれません。

忠魂碑

 拝殿と摂社の間にあるのは忠魂碑……

藤澤直蔵光生碑

 こちらにあるのは摂社の隣にある『藤澤直蔵光生碑』……いったい誰? と思って調べてみたところ、小友町が村だった頃の第三代村長さんだということが分かりました。

 その功績を讃え、作られた碑なのかもしれません。

石碑群

 さらにその隣にあるのは金毘羅権現と庚申塔の石碑……どちらも岩手の神社ではよく見られる石碑ですね。

石碑群2

 その後ろには馬魂碑や金毘羅大権現、山神の石碑群があります。

 四方を山に囲まれ、馬産地であった遠野だからこそ石碑には強い意味が込められてそうです。

小友川

 神社の敷地は小友川に隣接されているので、少し歩けばすぐ川辺に到着します。

 川の水がとても綺麗なことはもちろん、岩が織りなす絶景も迫力満点です。

神社裏の水路跡

 神社の裏手には細いながらも小友川に繋がる水路がありました。

 もしかしたら、先ほどの岩下から湧き出る清水を流していたのかもしれません。

池の跡

 清水跡から水路までの間には拓けて窪んだ場所があり、ここに池を作っていたのかもしれません。

 向こうに見えるのは鳥居の上の部分でしょうか?

 水があった頃はここに川魚もいたようですが……冬で雨が少ないためか、今は水がなく拝むことができませんでした。

社務所

 こちらは神社の近くにある社務所……とはいえ、人は全くおらず祭りの時に使用する寄合所みたいな場所なのかもしれません。

 人がいないため、書置きの御朱印等はもちろんのことお守りなども販売されておりません。

 ですが、私は人がいる神社も良いですが人がいない神社の方が余計なプレッシャーを感じることなく、落ち着いてお参りができるので好きです。

 神社前に鎮座している狛犬達も良い顔をしています。

 これは仕事に満足し、誇りを持っている顔ですね。

 私もこんな顔になりたい……。

神社の案内板

 こちらは不動岩についての案内板……由緒と三景に入った時のことが書かれていますね。

裸参りの案内板

 最後にこちらは『小友町裸参り』についての案内板。

 冒頭でも少し紹介しましたが、毎年2月に行われるこの裸参りは遠野市では他に例がなく、貴重な民俗行事とされており遠野市指定民俗文化財となっています。

 ちなみに不動岩と巌龍神社は『遠野遺産第31号』に認定されています。

おわりに

 実はあとで知ったことですが、不動岩は神社の拝後にあるのを『降り龍』西側にある小友川の淵の上にあるのを『昇り龍』としており、二匹の龍が存在しているとのことです。

 つまり私が昇龍と思っていたのは降龍だったわけですね……うーむ、違いが分からない。

 今回は残念ながら本当の昇龍を見逃してしまいましたが、現地へ行った際はぜひとも二匹の龍を探してみましょう!

 龍神様から加護をいただき、天高く躍進できる年にしていきましょう!

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