昔も今の変わらない願い…………そのうちの一つに『健康』があります。
特に医療の発達していない昔は神や仏に祈願することが治療の一つとされ、病を治すためには様々な迷信を信じこむことも普通の時代でした。
現代では医療も発達し、人間の寿命もかなり伸びてきてはいますが、生活習慣病やガン、さらには新型の感染症など病との戦いは一進一退となっています。
そのため、病気平癒や不老長寿を御利益とする神社は数多くあります。
今回はその中でも盛岡市にある、健康のプロフェッショナルのような御利益を持つ神社をご紹介します。
蛇神に龍神、医薬神から真田幸村の伯父までいる神社
概要
盛岡市の郊外………綱取ダムの下に位置する地区、浅岸の中津川沿いに『浅岸薬師神社』は鎮座しています。
『おやくしさん』の名で親しまれており、米内山の峯に鎮座していたことから『米内の薬師』『峯の薬師』また不来方城(盛岡城)から見て寅(北東)の方角に建てられていたことから『寅の薬師』とも呼ばれています。
境内には少彦名(スクナヒコ)を祀る『薬師神社』の他、真田幸村の伯父にあたるという説もある真田式部清鏡(さなだしきぶのしょうきよかみ)を祀る『在廳(ざいちょう)神社』、財運に御利益のある『龍神社』、若返りに定評ある『蛇神社』などが祀られています。
由緒
各神社に関する由緒は以下の通りとなります。
薬師神社の由緒
今から千年ほど前、永保四年から応徳元年(1083年)不来方太郎貞頼が前九年の役での戦死者の御霊を慰めようと三河国(愛知県)蓬莱山鳳来寺より、薬師如来像を勧請しお社を建立したのが始まりです。安永七(1779年)年の火事により本殿を焼失したため、山火事を心配し現在の地に遷され今に至っております。
引用元:由緒書き
在廳神社の由来
真田清鏡は羽黒山の修験者で九戸政実の乱での功績により、南部利直より数々の特権を与えられておりました。
ある時、利直の姫が流行り病に罹り、なかなか治らず清鏡に治癒のあかつきには姫を差し上げる約束をし、祈祷をお願いしました。真心込め平癒祈祷を清鏡は行い、その験のおかげで姫はみるみる元気になりました。ところが利直は「嫁にくれる」約束を果たさず、約束を反故にされた清鏡は怒り狂い、不来方城門で切腹をし腸を叩きつけました。その亡骸は上流の中津川に流され、薬師神社の前に流れ着き、それを哀れ悲しんだ人々はお城に背を向けお社を建て、御霊を慰めたといわれています。真田清鏡は真田幸村の伯父に当たるという説もあります。
引用元:由緒書き
龍神社&蛇神社の由来
ここ浅岸の蛇神さまは永き不死の信仰と脱皮して若返りの信仰と霊魂不滅の象徴といふ信仰又銭神様で商売繫昌、家門繁栄、長寿生成と戝宝飲食、衣食住と言う生活の元に障りないよう払い厄災消除、吉祥招福、宝珠の玉よりめでたいことが限りなく与えられ、衣服、戝宝、飲食物など意のままにでてきて施しをすることができる霊験あらたかな神様で皆さんのくらしをおまもりする神さまです。
引用元:由緒書き
こうして見ると薬師神社は元は別の場所(米内山)にあり、焼失したために現在の地に移転しその後に真田清鏡の事件があったようです。
いつの時代も約束を破る者はいるものですね……それにしても姫を嫁にする約束の反故はなんだか昔話の魚神や大蛇の嫁取りの話しに似ていますし、切腹した後に腸を出すのは戦国武将の柴田勝家の最期に酷似しています。
各地で似たような話はありますが、蛇神や大蛇関連は『姫』『嫁』『約束の反故』『怒り』というキーワードが随所で見られるのははたまた偶然か……。
蛇神さまに至っては元から浅岸地区で祀られていたのか、それとも薬師神社が移転された時に勧請されたかは定かでないですが………かなりの御利益と崇拝があることは確かですね。
御祭神・御利益
祀られている神様については以下の表に簡単にまとめてみました。
御祭神 | 御利益 |
少彦名命〔すくなひこのみこと〕 | 医薬の神 対象:病気平癒・商売繫盛 |
真田式部清鏡〔さなだしきぶのしょうきよかね(きよあき)〕 | 達成の神 対象:一願成就 |
龍神・蛇神 | 若返りと霊魂不滅、銭の神 対象:商売繫昌、家門繁栄、長寿生成、戝宝飲食、衣食住、厄災消除、吉祥招福 |
主祭神であるスクナヒコに比べ、末社に祀られている龍神・蛇神のほうが圧倒的に幅広い御利益を有しています。
ただ、全体的に見ると『健康』に関する御利益が多いですね。
スクナヒコは国造りの神である大国主命(オオクニヌシノミコト)のサポートをしていたため、タッグで祀られることが多く、二柱で最強といった感じです。
名前の通りとても小さい小人の神で、医薬やまじない、酒造に通じており、温泉を伝えたのもこの神とされています。
真田清鏡については姫の病気治癒願い続け成就したことから病気を治すことをさらに後押ししてくれるでしょう。
そして、蛇神・龍神で健康をキープし生活を送ることができる。
人間でいえば、スクナヒコという医者が治療し、真田清鏡という看護師がサポートし、蛇神・龍神というリハビリ師が治った後の生活を元に戻し、キープさせるといったところでしょうか?
病気治療のエキスパートの神様がいる神社といえます。
アクセス
『浅岸薬師神社』は綱取ダムの下、浅岸地区の中津川沿いにあります。
目印としては老人ホーム『浅岸静福園』や『水道橋くるみ幼稚園』が近くにあるので、その地点を目指すと良いでしょう。
国道4号線からは『盛岡東警察署加賀野交番』付近にある交差点から市街地方面ではなく山へ向かうようにして入ると分かりやすいです。
道路は広いですが住宅街があり、また高齢者や園児といった子供たちもいますので、交通には十分気を付けてください。
駐車場は神社前にある砂利の敷地に停めることができます。
探勝レポート
それではさっそく探勝といきましょう!
今回は神社前にある駐車場に車を停めてスタートです。
少し駐車場から離れて…………こちらが薬師神社の鳥居。
小さいですが石造りの立派な鳥居です。
神社に入る前に由緒書きを一読。
こちらの内容は先述した通りの内容です。
例祭日はそれぞれ異なっており、薬師神社は5月7日。在廳神社は2月3日となっています。
大きく立派な狛犬がお出迎えしてくれています。
では、階段を上がっていざ社殿へ。
こちらは蛇口式の手水舎。
おや、なんだか見慣れない方がいますね。
こちらは神農神。古代中国の方で名は姜、または炎帝。
体は人間ですが頭は牛で、そこには『知恵のこぶ』という二つのこぶがあります。
百草を服用し、一日に七十ものの毒に遭いながら漢方薬を作り、農耕や市をたて人々に交易を教え、古くから農業や薬、商売の守り神として崇められていたそうです。
まさか他にも神様がいらっしゃったとは…………。
ここではこの像に水を掛け、白い手ぬぐいで神農神の体を撫でた後、その手ぬぐいで自分の体を撫でると罪や穢れが取り除かれるそうです。
悪いところを撫で、取り除く『人形』のようですね。
あいにく手ぬぐいが無かったので、今回は遠慮させていただきました。
それに私の場合、体中を撫でても穢れや罪は落とせそうにないかもしれません(笑)
手水舎の前には真ん中に穴の開いた丸い板が下げられていました。
これは真田に伝わる六文銭でしょうか?
真田清鏡公にまやかり、一願を書き吊るしているのですね。
皆さんの願いが叶い、裏切られませんように………。
そして、横を向くと薬師神社の社殿がすぐ目の前にあります。
階段を上がった境内はかなりこじんまりとしており、画像には映っていませんが社殿に繋がる形で左手に社務所があります。
聞くところによると御朱印はあるそうですが、不在の時が多くなかなか手に入らないのだとか。
訪れたこの日もあいにく社務所は閉まっていました。
御挨拶の参拝のみ行います。
こちらは真田式部清鏡を祀る在廳神社。
薬師神社と繋がるように隣接されています。
狭い境内に凝縮されていますね。
ただ、造りはちゃんとしており丁寧に祀られているのが分かります。
在廳神社のすぐ右手には繋がるようにもう一つ社殿がありました。
こちらは岩手の神社では必ずといっていいほどある『駒形神社』
『馬頭さん』で親しまれている駒形大神を祀っています。
浅岸地区が村だった頃には馬が亡くなると葬る所があり、通称『馬捨て山』と呼ばれており、そこに社を建てて祀っていたそうですが、時代の流れとともに馬を飼う家が少なくなり、昭和二十四年に薬師神社の境内に移ったそうです。
馬とともにある………馬産地岩手ならではですね。
その社の隣にはこれまたお馴染みの石碑や………
立派なイチョウの御神木があります。
今度は秋に訪れてみたいものですね。
さて、階段上の境内はこれで全て………次は階段を降りて周囲を散策しましょう。
駐車場傍にある神楽殿。
かなり立派で大きいですね。
手入れも行き届いています。
神社を正面に左手には龍神と書かれた社が……こちらが龍神社。
この日は閉まっていたため、確認できませんでしたが中には大きな木彫りの龍女が鎮座されています。
龍神に好かれる女性は自然と美女になり、仕事や金銭、美に関して困ることがないとされていますが、逆に龍神が認めた者じゃない限り、結婚や恋愛が難しいともいわれています。
女性の皆さんはどちらを取りますか?
そして、その隣には大きな忠魂碑があります。
忠魂碑の下には見慣れない社が一つ。
忠魂碑に対する社でしょうか?
祀られているものは分かりませんが、こちらもしっかりと参拝。
そんな謎の社の隣には石で出来た蛇神様が鎮座されています。
多大な御利益をお持ちのため、こちらも念入りにお祈り。
それにしても二匹いるところから見るに夫婦でしょうか?
夫婦和合にも御利益がありそうです。
しかし………働き過ぎではないでしょうか?
帰ろうとした矢先、蛇神様の祠のすぐ近くに小さな石碑と賽銭箱を発見。
『大』という字は読めますが、その下がよく見えません。
大小神、大年神でしょうか?
いずれにしても神様に違いないのでこちらもしっかりとお参りし、今回の探勝は終了。
おわりに
健康長寿を御利益とする神社は数多くあれど、ここまで病気や若さ、健康にフォーカスした神社はなかなかないでしょう。
体であれ、心であれ………病はどこからでもやってきます。
双方に対しての守りを強化するには良い神社ですね。
2025年の干支は巳………蛇が主役の年です。
皆さんも浅岸の蛇神さまをお参りし、健康を祈願してみてはいかがでしょうか?