史跡

南部富士を祀る神社の秘水【雫石町‖岩手山神社】

 岩手が誇るお山『岩手山』……岩手県の山の中でも最高峰であり、静岡県側から見た富士山に似ていることや、片側が削げているように見えることから『南部富士』ともよばれてります。

 その山から流れ出る雪解けの伏流水は麓に潤いと恵みをもたらしています。

 特にお膝元である八幡平市、盛岡市、雫石町、滝沢市は至るところに清廉な水が湧きだし、多大な恩恵を受けているといっても過言ではありません。

 今回はそんな岩手山を祀り、その水を直に汲むことができるありがたい場所をご紹介します。

『神山の秘水』とよばれる湧き水がある神社

概要

 その場所は雫石町の『小岩井農場』にほど近い杉林の中にあります。

 名前は『岩手山神社』……近隣にある滝沢市、八幡平市、雫石市にまたがる岩手山の表玄関で参拝登山の正式な登山口の1つである馬返し登山口近くにある神社です。

 由緒としては延暦20年(801年)坂上田村麻呂が岩手山に篭もる賊・赤頭の高丸を討伐のため、御仁小屋を設けたところと伝えられており、江戸時代初期に南部藩について記された『南部叢書(なんぶそうしょ)』にも大同2年(807年)田村麻呂創建と記されています。

 昔から陸奥国総鎮守として旧領主南部公の崇敬が篤く、かつては『お山権現様の遙拝所』で成人男子は精進潔斎して登山し、女子禁山でした。

 境内には岩手山から恵まれる『神山の秘水』と言われる湧水があり、その水を求めて遠方から多くの人が訪れています。

 毎年旧暦5月27日には例祭も行われており、地域にも愛されている神社です。

御祭神・御利益

 祀られている神様については以下の表に簡単にまとめてみました。

御祭神御利益
宇迦御魂神〔うかのみたまのかみ〕衣食住の守り神にして生活全般の守護神
対象:五穀、魚類、鳥獣、蚕糸、草木
大穴牟遅命〔おおなむちのみこと〕国土経営・農業・医療の守護神
対象:五穀豊穣、金運上昇、新しいことへの挑戦
日本武尊〔やまとたける〕勝負事の守護神
対象:勝負運、国土安泰、仕事運向上、出世開運

 五穀豊穣に強い御利益のある宇迦御魂神を中心として、英雄と称される大穴牟遅命と日本武尊を祀っています。

 日本武尊は知っている方もいるかもしれませんが、大穴牟遅命は聞いたことあるでしょうか?

 この実はこの神様は出雲大社で有名な大国主命と同一神です。

 日本全土にいた国津神という神々を統べた時の名が大国主命……その統一を成す前の名が大穴牟遅命というわけです。

 兄弟の嫌がらせにも負けず、苦境を跳ねのけた力強さ……その力強さが雄大で厳つい姿の岩手山にも通ずるところがあったのかもしれません。

 日々の生活の安寧を願いつつ、逆境に負けない力強さを得たい……そんな方に効果がありそうです。

アクセス

 岩手山神社は雫石町『小岩井農場』近くにあります。

 

 場所は分かりづらいですが、小岩井農場から『小岩井の一本桜』を目指し、一本桜を過ぎてから最初に現れる曲がり角を右に曲がって真っ直ぐ進むことで、神社入り口の林道に到着することができます。

 ちなみに『小岩井の一本桜』についてはこちら▼の記事に詳しく記しています。

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 小岩井農場はもちろんのこと、すぐ近くにある『十割そば しんざん』さんは行列ができるほど人気のお蕎麦屋さんです。

 参拝ついでに名水で作られたお蕎麦も一緒にご賞味ください。

 また、この辺りは車の数が少なく広大な土地が広がっているため、見晴らしも良くドライブにも最適です。

 駐車場所としては神社の鳥居付近や鳥居をくぐって境内内にも停めることができます

 連日水を汲む方が訪れ、社務所には人が常駐されていませんので駐車トラブルなどにはご注意ください。

探勝レポート

 それではさっそく、探勝といきましょう!

 今回は道路沿い入り口からのスタートです。

道路沿い入り口

 お蕎麦屋さん『しんざん』さんを過ぎ、先へと進むとこのような看板と林道が現れます。

 ここが岩手山神社への入り口です。

林道

 鳥居まではこのような林道がしばらく続きます。

 一車両分……というほど狭くはないですが、対向車とすれ違う際はいささか注意が必要です。

 大型車でお越しになる際は道に外れて脱輪しないようご注意ください。

 とはいえ、人は訪れますが意外と対向車と対面することは少ないです。

始めの鳥居

 林道を進むとやがて川が流れる拓けた場所と赤い鳥居が見えてきます。

 ここが岩手山神社の入り口……始まりの鳥居です。

 ここは敷地が広く駐車するのに困ることはありませんが、境内までの道が少しばかり遠いです。

 さしずめ第二駐車場といったところでしょうか?

 水汲み場に人が何人かいたため、今回はこちらに駐車します。

 とはいえ、こちらに停めても悪いことはありません。

入り口近くの川

 こちらの駐車場に停めればこのような景色が見られます。

 川に堰堤があると人工感が否めませんが、清廉な川と澄み渡るような青空が逆に良い景色を出しています。

 こういう景色……私は意外と好きです。

香炉と独鈷

 周りを見ながら歩いていると石柱の付近に不思議な物を見つけました。

 見たところ、香炉と独鈷でしょうか?

 誰かの忘れ物か、はたまたわざと置いているのか……どちらにせよ手は触れないほうがいいでしょう。

杉林

 境内とその周辺は杉林に囲まれています。

 花粉症の方は春先に来るのは控えた方が良いかもしれません……。

中間の鳥居

 赤い鳥居の先にもこのように別の鳥居があります。

 ここから二又に道が分かれていますが、どちらを通ってもちゃんと境内に到着するのでご安心ください。

 そんなこんなで、またしばらく歩き……。

境内入り口の鳥居

 ようやく境内入り口の石の鳥居に到着。

 少し振り返って道のりを確認してみましょう。

参道

 ……うむ、やはり遠いです。

 天候や体調によってはここまで車で来た方が良いですね。

 境内には石碑をはじめ、龍神やアマビエの石像などもあります。

 神楽殿は結構大きくて立派です。

 祭りはさぞ賑やかでしょうね。

御神木

 石碑近くには立派な杉の御神木もあります。

 こちらは岩手山神社の夫婦杉。

 夫婦和合にぴったりですね。

神楽殿近くの集会所

 こちらは神楽殿近くにある倉庫のような建物…一見するとなんの変哲もない建物ですが……。

自在鉤

 色々な年代物の物品が置かれています。

 こういう物は博物館や遠野の古民家でしか見たことがなかったのですが、こんな所で見られるとは……民俗的にも歴史を知ることができる貴重な一品ですね。

社殿

 それではさっそくお参りといきましょう!

拝殿

 造りは古いですが、手入れがきちんとされており立派ですね。

 注連縄や紙垂も綺麗に整えられています。

社務所

 右手には社務所があり、この日人はいませんでしたがネット上では御朱印を頂いている方もいるみたいなので、もしかしたらたまに来ているのか、あるいは例祭の時に頂けるかもしれません。

 ちなみにトイレは見つけづらいですが、この社務所入り口にあります。

岩手山遥拝所案内

 拝殿の左手には岩手山を見ることができる『岩手山遥拝所』の案内板があります。

 石碑の碑文を見る限り、多くの方々の協力によってこちらの神社は成り立っているようです。

小社

  遥拝所の途中……拝殿のすぐ隣には鎮守奉献の石碑と『岩鷲山大権現』の小社があります。

 こちらであいさつを済ませ、先へ……。

遥拝所への道

 岩手山遥拝所と聞くとかなり歩かなければならない、のかと思ってしまいますが、実際は拝殿から2、3分で到着することができます。

 こちらの桟橋のような道の先で岩手山を拝むことができます。

遥拝所からの眺め

 こちらが遥拝所からの眺めとなります。

 実際に見ると近隣の雑木林のせいか、岩手山全体をくっきりと見ることはできない状態です。

 こんなことを言ってしまうと反感を買ってしまうかもしれませんが、雄大な岩手山を期待するなら八幡平市方面から見た方が、全体を見ることができます。

 しかし、雫石町方面から見るとこのような姿がベストなのでしょう。

 ましてや、ここは岩手山の登山口です。

 これから登るとなれば、岩手山の姿が少々見づらいのも仕方がないかもしれません。

 岩手山を見るなら八幡平……岩手山を拝むなら雫石、と覚えておきましょう。

遥拝所

 遥拝所には岩手山の写真と賽銭箱、そしてお札を収める納戸がありました。

 写真で見るととてもくっきりとした岩手山ですが、やはり雑木林のせいで一部が隠れているみたいです。

 もしかしたら冬に訪れるとこのような姿を拝めるかもしれません。

 それでは戻りましょう。

水汲み場の立札

 拝殿と社務所の間には皆さんお待ちかね、岩手山の伏流水が汲める水汲み場があります。

 こちらはその水汲み場の隣にある立札……漢字が難しすぎてなんと書いてあるかが読めません……。

 どなたか分かる人はいますでしょうか?

水汲み場

 こちらが水が汲める場所となっています。

 訪れたこの日も多くの方々が訪れていました。

 清廉な水が苔むした石臼に流れ込んでおり、とても綺麗です。

水汲み場の屋根

 屋根には山水令明の文字が掲げられており、傍には水質検査の結果や成分表まであります。

 安心安全の水……さっそく頂いてみましょう!

岩手山の水

『龍泉洞の水』は販売されていますが、『岩手山の水』はこうして自ら手に入れるしかありません。

 この日は天気が良く、気温もそこそこ高かったですが、水はとても冷たくて気持ちがよかったです。

 透明なボトルに入れてみてもこの通り……沈殿物、不純物、濁りがない無色透明。

 飲んでみると滑らかな喉ごしで多くの方が汲みに来るのも頷けるおいしさでした。

注意事項

 最後に注意事項だけお伝えします。

 水を汲む際は最初に神社参拝を済ませてからにしましょう。

 これは御朱印や御守りを頂く時と同じですね。

 神社やお寺の物で何かを頂く際はまずは参拝……マナーを守って楽しく過ごしましょう。

おわりに

 レポート内でもあったようにこの日は気温が高かったのですが、不思議なことにボトルに汲んだ水は2時間かけて家に帰る際も温くなることなく、冷たさを維持していました。

 雪解けの伏流水ならではなのか、はたまたこれが『神山の秘水』によるものなのか……詳細は定かではありませんが、とても美味しいことに変わりはありません。

 皆さんも雫石町、または小岩井農場……あるいは岩手に訪れた際はぜひともこの水を汲んで飲んでみてはいかがでしょうか?

 きっと多大な御利益が得られると思いますよ!

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