稲作が盛んな田園地帯……それは美しい光景ですが、その田んぼを作るのは一筋縄ではいかないものです。
特に寒さ厳しい東北地方はその環境だけでなく海から吹く『やませ』による冷夏や病気、そして水不足により開墾に困難を極めました。
岩手から宮城に連なる巨大な河川『北上川』を有していてもその恩恵はは流域に近い地域のみで川から少し離れると、水を獲得するのが難しくなります。
そのため、岩手の中でも北上川から離れた田舎では水不足を補うためにいくつもの溜池が作られました。
今回はその溜池の中でも古くから地元有志達が守り、庭園となっている場所をご紹介します。
概要
江戸時代の頃から守られし溜池
その池は『花巻温泉』からほど近い糖塚地区の田園地帯の中にあります。
名前は『松島園』……この池は三百年以上前の貞享年間(徳川綱吉の江戸時代頃)に作られ、その当時は『浮島堤』という名で記録に残っています。
その頃には浮島堤の上流に三つの堤が隣接して作られており、代々34名の地元共有者の管理下に灌漑(田畑に使う水)用水利として糠塚地区三十数町歩の水田を潤す重要な役割を持っていました。
一町歩は約9900㎡で、例えるならだいたいサッカースタジアム1個分ほど(場所によりますが…)……その×30個ほどの面積の水田に水を与えていたということになります。
現在は近隣住民のほか、団体や企業などが協力して守っているようです。
アクセス
『松島園』は花巻市の糠塚地区にあります。
盛岡、花巻間では『盛岡和賀線(県道13号線)』を車で走っていると道路のすぐそばにあるので分かりやすいと思います。
駐車場は専用の場所があり、そこそこ広くトイレも完備されていますのでドライブなどの小休憩にも便利です。
近くには花巻市では有名な『花巻温泉』があり、さらに盛岡和賀線をもう少し走ることで『花巻市広域公園』に行くこともでき、花巻観光の中継地点としても便利です。
探勝レポート
それではさっそく探勝といきましょう!
今回は『松島園』の駐車場に車を停めてスタートです。
こちらが駐車場となります。
駐車線もちゃんとあり、広さもそこそこあるため大型車でも停めることができます。
近くにはトイレもあるので休憩にはとても便利です。
平日の昼間ともなれば営業マンらしき方々がここに車を停めて休憩されております。
駐車場にある看板を見るとどうやら『松島園』は『アドプト制度』によって管理されているようです。
『アドプト制度』とは公共施設の空間を『養子』とし、住民や団体、企業が『里親』となって保守活動を行う事業、とのこと。
ざっくりいえば、従来では市町村や個人、団体といった一個体が所有していた土地を複数で管理しよう……といったことでしょうか?
確かに名義だけで管理がおろそかになっている場所が多い昨今……責任と役割を分担するというのはとても良いことだと思います。
こうすることにより、保全活動における費用や美化時間などが確保しやすくいつまでも良い状態を維持できるということですね。
デメリットを考えれば利益が発生した場合に独占が出来なかったり、改装や改良を独断で行うことができず、参加している方々に同意を得る手順が増えることでしょうが……利益が発生しない公共の場ともなればほとんど無いに等しいですね。
奪い合えば足りなくなる。けれど、みんなで分け合えば余る……このような場所が増え、みんなで守り、助け合える世の中になると良いですね。
近くには注意書きもありました。
内容はとても基本的なことばかりですが、気になったのは最後の部分……「釣りを行う解きにはマナーを守りましょう」とのこと。
どうやら『松島園』では釣りが許可されているみたいです。
これは釣り人にとってはとても嬉しいことですね!
なんせ、昨今では外来魚の放流や釣り人のマナーの悪さにより釣り禁止の野池が増えているのですから、特に岩手ではその罰則が東北の中でも特に厳しいものとなっています。
庭園を利用する時は必ずマナーを守りましょう。
さっそく庭園内に行きたいところですが、またしても注意書きが……今度は水深のついてですね。
もっとも深いところでは深さは2.4m……岸に近い箇所は約70㎝ほどですか……ぱっと見ると浅そうに見え、中学生どころか小学生でも普通に水遊びを楽しめそうですが、注目するのは底の地形……いきなり急な角度で深くなっています。
まだ緩やかに深くなっているのなら大丈夫かもしれませんが、傾斜があり深くなっている場合だと、いきなり足をとられて溺れる危険性が大です。
そして、コンクリートで傾斜がつけられている場合……こういった池は苔や藻といった水草が生えやすく、ヌルヌルして上がることができません。
私も子供の頃に似たような池で溺れたことがありますが、パニックになると余計に這い上がることができなくなるどころか、口が水の中に入る危険性もあります。
幸い、その時は一緒に来ていた父親に助けられましたが……一人でそのような状況になってしまったことを考えると今でもゾッとします。
安全の確保は臆病になるくらいがちょうど良い……自然を相手にする場合は勇猛果敢よりも小心者でいた方が断然良いです。
さて、今回はちょっと雑談が多いですが気を取り直して……『松島園』のすぐそばには大きな野池があります。
道路を挟んでいるためか、こちらは園内には含まれていないようです。
けれどもとても綺麗に整備されています。
魚影のほうは……残念ながら肉眼では確認できませんでした。
そんな園内の入り口には立派な石碑が建てられています。
この日に訪れたのは春真っ盛り……桜がとても綺麗です。
駐車場からこの階段を下りることで園内に入ることができます。
それでは散策開始です。
橋の隣には水遊びに適した石橋があります。
季節のためか水量がとても少なく、危険性が低いですが意外と大きめな石がゴロゴロ転がっています。
しかもここから池の中心部に行けるような造りになっています。
とはいえ、池の方はなにやら強固な水草セキュリティがあるので心配はないでしょう。
園内は桜が咲き誇っていますね。
中規模の溜池ですが、管理されているためかゴミ一つ落ちていません。
ここまで綺麗だと景色も相まって気分が清々しいものです。
ここから池の中心部を見てみましょう。
目指す場所はあの松の木がある小島です。
なぜ『松島園』という名になったかは分かりませんが、軽く考えるなら松が生えている島のある庭園だから、でしょうか?
単純ですが、こっちの方がしっくり来ます。
一方で『浮嶋堤』については不明……もしかして昔は浮島だったのでしょうか?
まぁ、難しいことは考えず先に進みましょう。
この橋が松島への入り口です。
橋の下には鯉が悠々と泳いでいました。
とりあえず、釣りの対象魚としてマークしておきましょう。
橋は意外と広くて丈夫……複数で行っても問題なさそうです。
しかし、水草の数が凄い……見たところ蓮ですね。
夏になれば鮮やかな蓮花が見られそうです。
そうして眺めている内に松島へ到着。
『松』『島』と主張強めの看板がお出迎えです。
島内散策開始。
始めに見つけたのは完工記念の碑、携わった方々の名前が銘記されています。
松島から盛岡和賀線を見てみましょう。
先ほどまでの水草たちはどこへやら……綺麗な水面です。
ここなら釣りはしやすいですね。
けれども、すぐ隣を見てみるとあら不思議!
水面が水草でびっしりです。
ここまで差があるものなのか……。
松のある島は趣があってとても良いのですが……。
先端部の方に進むと目も当てられないほどの水草だらけ……。
確か、松島の方の水深は2.4mはあった筈……こんなにも生えるものなのでしょうか?
まさか、蓮に似た外来の植物……いえ、蓮と信じましょう。
遠くの方には東屋がありますね。
人が多くいたので撮影はできませんでしたが、園内で休憩するには最適な場所です。
池のほうは少しごちゃごちゃしていましたが、園内は桜花爛漫で桜が満開です。
いや~、春に来て良かった!
おわりに
様々な方々が協力して保全されていただけあって園内はゴミ一つなくとても綺麗でした。
桜の花も満開で東屋もあることから花見スポットとしても最高でしょう。
池には鯉しか見えませんでしたが、他にも魚がいるのでしょうか?
いつかチャレンジしてみたいものです。
心残りは池の中に生えていたあの水草ですが、あれが蓮ならば夏には蓮花のスポットになっていることでしょう。
皆さんもドライブ休憩がてら花巻温泉などに行く際は寄ってみてはいかがでしょうか?